オルフ作曲  世俗カンタータ《カルミナ・ブラーナ》 (1935〜1936年)

カルル・オルフ(1895〜1982)は、現代ドイツの作曲家。また音楽教育の分野でも広く知られている。

5歳の頃から、ピアノ、オルガン、チェロを習う。
ミュンヘン音楽院を卒業したのは1914年であるが、世界大戦勃発の年であった。戦後、カミンスキーにルネサンス・バロック音楽の権威に師事、古楽への関心を深めた。

また、1924年にはドロテー・ギュンターと組んで<ギュンター・シューレー>という体育・舞踊・音楽の総合教育に関わった。そこで、戦後の日本にももたらされた<オルフ・システム>として教則本などを編集したり、<オルフ楽器>といった学校での音楽教育用楽器を創り出したりしたのであった。

このようにオルフは、古楽への関心と演劇、舞踊と音楽との総合を目指し、作品は劇場音楽がほとんどである。

また、オルフ自身が求めたものは原始主義であるが、技法的には単純なところからスタートしているが、機能和声法は無視しているという。また旋律素材としてはグレゴリア聖歌風、東洋風、バイエルン地方民謡などに求めている。

20世紀にあって現代音楽に傾倒しない、独自の音楽感による世界を展開している。


この《カルミナ・ブラーナ》は、《アトゥーリ・カルミーナ》(1930)、《アフロディーテの勝利》(1950〜51)とともに、<トリオンフィ(勝利3部作)>と呼ばれた作品群の最初の作品。
「カルミナ・ブラーナ」とは、元々中世の詩歌集でバヴァリア地方のベネディクト・ボイレン修道院に所蔵されているもの。250篇以上の詩歌があり、世俗的な内容からなっているという。オルフはこれを知ると、24曲を選び、自作の歌詞を含めたカンタータとして作曲したのである。

曲は3部、25曲から構成され、編成は、ソプラノ、テノール、バリトン独唱、大合唱、小合唱、児童合唱と管弦楽である。

●オルフ
  世俗カンタータ「カルミナ・ブラーナ」


リン・ドーソン(S)、ジョン・ダニエッキ(T)、ケヴィン・マクミラン(Br)
サンフランシスコ少女合唱団
サンフランシスコ少年合唱団
サンフランシスコ交響合唱団
サンフランシスコ交響楽団
ヘルベルト・ブロムシュテット指揮


ポリドール(LONDPN) POCL-5100



 第1曲:おお、運命の女神よ
 第2曲:運命の女神の傷手を

第1部
○初春に

 第3曲:春の愉しい面ざしが
 第4曲:万物を太陽は整えおさめる
 第5曲:見よ、今や楽しい
○芝生の上で
 第6曲:踊り
 第7曲:森は花咲き繁る
 第8曲:小間物屋さん、色紅を下さい
 第9曲:円舞曲
 第10曲:たとえこの世界がみな

第2部
○酒場で
 第11曲:胸のうちは抑えようもない
 第12曲:昔は湖に住まっていた
 第13曲:わしは僧院長様だぞ
 第14曲:酒場に私がいる時にゃ

第3部

○愛の誘い
 第15曲:愛神はどこもかしこも飛び回る
 第16曲:昼間も夜も、何もかもが
 第17曲:少女が立っていた
 第18曲:私の胸をめぐっては
 第19曲:もし若者が乙女と一緒に
 第20曲:おいで、おいで、さあ来ておくれ
 第21曲:天秤棒に心をかけて
 第22曲:今こそ愉悦の季節
 第23曲:とても、いとしいお方
白い花とヘレナ
 第24曲:アヴェ、この上なく姿美しい女
○全世界の支配者なる運命の女神

 第25曲:おお、運命の女神よ


序の第1曲「全世界の支配者なる運命の女神」は、絶叫するような合唱で印象的。終曲にも登場し、有機的な構成になっている。第2曲も嘆くような雰囲気の合唱曲。
そして第1部。<初春に>の部分では、第3曲で小合唱、第4曲ではバリトン独唱、第5曲では大合唱となって、春へのあこがれを歌う。
<芝生の上で>では、第6曲の「踊り」が管弦楽のみで奏され、第7曲は小合唱と大合唱、第8曲はソプラノ独唱と合唱、第9曲は前半は管弦楽、後半に合唱が登場する。そして第10曲の短いコーラスで第1部が終わる。

続いて第2部。<酒場で>の部分であるが、元の「カルミナ・ブラーナ」には「酒の歌」が多かったといい、オルフもそんな歌を選んでいる。第11曲はバリトン独唱、第12曲はテノール独唱と男声合唱、第13曲はバリトン独唱と男声合唱、第14曲は男声合唱。この<酒場で>の部分は酒を讃え、酒と賭け事に身を落とすなど、酒場に集う男達の場面で、女声は出てこない。

続く第3部はまず<愛の誘い>。第15曲はソプラノ独唱と児童合唱が愛の神=キューピットを歌う。そして第16曲のバリトン独唱では失恋男の歌。第17曲ではソプラノ独唱が「少女が立っていた」を歌うと、第18曲でバリトン独唱と合唱で、失恋男がその乙女に心惹かれることを歌う。そして第19曲では、6人の男声(3人のテノール、1人のバリトン、2人のバス)が「若者が乙女と一緒にいれば…」と歌う。そして第20曲で「おいで、おいで」と小合唱が乙女を誘うことを歌い、第21曲ではソプラノ独唱が決心のさまを歌う。第22曲でソプラノ独唱とバリトン独唱、大人と児童の合唱も加わって恋の成就、短い第23曲ではソプラノ独唱が「いとしいお方…」と歌う。

第24曲では、合唱が<ブランツィフロールとヘレナ>を歌い、終曲の第25曲は冒頭の「全世界の支配者なる運命の女神を再現、合唱で締めくくられる。

25曲からなるが、独唱曲あり合唱曲あり、管弦楽管弦楽のみがあり…。長さも3〜4分のものから1分に満たないものなど様々である。


オルフというと、やはり「カルミナ・ブラーナ」の作曲者ということと<オルフ・システム>を思い浮かべます。
「カルミナ・ブラーナ」とは、元々中世の詩歌集で、その中のいくつかはネウマ譜もついているといいます。内容は自然讃美、愛の歌などもあるようですが、酒や賭け事といったもの、諷刺ミサまであるといい、反道徳的な詩歌のイメージがなくはないです。

このオルフの作品は、筋が通るように歌を選んでいるのですが、原曲は特には筋もないのだそうです。

最近ではコマーシャルを初めとしてテレビ番組で耳にするようになりました。それまで決然とした場面では、お決まりのようにベートーヴェンの「運命」が「ジャジャジャジャーン」と流れていたのですが、最近は「カルミナ・ブラーナ」の第1曲目「おお、運命の女神よ」が絶叫のように、BGMとして聴かれるようになってきました。

あのティンパニの「ドン!」に続いて、「オー!フォールトゥナ!ヴェールトゥナ!スタートゥ ヴァリアビリース!」という強烈なコーラスを聴くと、ぞぞっとします。
また全体に打楽器も活躍します。なかなか聴きやすいですが、テキストと照らし合わせて流れの中で聴きたいです。
<2003.2.21>