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横浜国際帆船まつり(2002年6月)

ぷかり桟橋から見た6隻の船
横浜港に勢ぞろいした帆船&汽船 2002.6.29

手前左……ぷかり桟橋の「海星」「あこがれ」(日本)
中央………新港埠頭の「ハンナラ」(韓国)、「ヨーロッパ」(オランダ)
一番奥右…大桟橋の「ナジェジュダ」(ロシア)、「海王丸」(日本)
*ベイブリッジ(中央)、赤レンガ倉庫(右)、マリンタワー(右端)もかすかに見えます。

2002年6月26日〜30日に、横浜で国際帆船まつりが開催されました。
29日と30日は、6隻の帆船、汽船が一般公開され、
29日は帆船が一斉にセイルドリル(展帆)を行いました。
新しくなった大桟橋や赤レンガパークには、見学者が何千人も訪れていました。

これらの帆船は、横浜のために集まったというよりも、先に韓国で開催された"Sail Korea 2002"の最終目的地が横浜なのでやってきたという感じでした。それでも来てくれて嬉しいです。レースは沖縄〜仁川(韓国)〜木浦(韓国)〜釜山(韓国)〜横浜のコースで行われたそうです。どの船も、今までに日本各地に寄った経験があるようでした。
 国ごとに船も違えば乗組員も船上の雰囲気も随分違いました。予想以上に人なつこいクルーが多く、ただ船を見るというだけでなく小さな国際交流の場にもなったのではないかと思います。

 一般公開されたのは28日(金)の13:00-15:00と29日(土)の9:00-11:00。私は平日の方が空いているかと初日の28日に大桟橋に行ったのですが、13:00より15分前に着いたところ、既に待ち行列が50mほどになっていました。私が並んだ後も列は伸び、海岸教会のある交差点あたりまで達していました。さらに、ロシア船のナジェジュダは、乗船口と下船口が一箇所のため交通整理が必要で、乗船するまでに50mほどの列ができて20分ほど待ちました。2隻見るだけで1時間かかってしまいましたが、新港埠頭の方は比較的空いていて、ゆっくり船を見ることができました。やはりリニューアルされたばかりの大桟橋に停まった大型帆船ということで人気が出たのでしょうか。
 ぷかり桟橋の2隻の公開は29日だけだったので、こちらも早めに行ったところ、船が小さいせいか30分ほどで見学が終わってしまいました。ぷかり桟橋からは、向かいの新港埠頭の2隻が見え、さらに大桟橋の2隻のマストが見え、どこを見ても港じゅう船だらけで、幸せな気分に浸ることができました。

 29日の午後に行われたセイルドリルもまた凄い人出でした。13:00からなので12時半頃に大桟橋へ行ってみると、見晴らしのいい場所には既に二重三重の人垣が。大桟橋をあきらめて、向かいの赤レンガパークの公園に行きましたが、ここも何百メートルという岸沿いに人垣ができていました。なんとか前から2番目で見ることができましたが、こんなに多くの人が集まるとは思わずにびっくり。人々の港への関心が高いのは嬉しい限りなのですが…。大桟橋の展望デッキは何百人という人がびっしりと埋めて米粒のように見えました。できたばかりの大桟橋が重みで崩れるんじゃないかと思ったほどです。

 28日の夜に、サッカーW杯決勝戦前夜祭のイベントで使われたメガフロートも見てきました。長さ200m幅100mの巨大なもので、広いグランドつきの小学校が作れるくらいでした。既に建造物の取り壊し作業が行われており、大桟橋から見る人たちは皆さん口を揃えて「一晩だけのために使うなんて勿体ない…」と言っていました。

 同じ大桟橋のターミナル入口寄りには、レストラン船「ロイヤルウイング」が停泊し、船上結婚式が行われていました。大桟橋の展望ターミナルからは、デッキ上での式が手に取るようによく見え、ここにも興味津々の見物人が鈴なりになっていました。皆さん口を揃えて「雨が降らなくてよかったわねぇ」と言っていました。 

 それでは、以下にそれぞれの船の様子をご報告したいと思います。

海王丸(日本) 2,556トン 長さ110m 1989年建造
  「日本丸」と並び、日本が世界に誇る大型帆船

海王丸  帆を広げた海王丸

姉妹船の「日本丸」と同型で、共に商船大学や商船高校などの訓練航海のために作られた4本マストの帆船。世界最大規模の大きさで、所属は独立行政法人「航海訓練所」。
 桜木町に係留されている初代「日本丸」に比べて船体に継ぎ目があまりなく、白地にブルーのラインがお洒落。、マストとヤードの色はグレーがかったベージュでした。
 船内のあちこちに、白いシャツに紺のズボン(またはスカート)の学生が立ち、やってくる見学者に元気よく「こんにちは!」と声をかけていました。その姿がとても爽やか。質問すればてきぱきと返事をしてくれます。一般公開慣れしているのか、順路もきちんと矢印とロープでできていて、舵輪やコンパスなどポイントとなるものには表示板もかかっていて至れり尽くせりでした。
 女子学生に「女性は何人乗っているの」と聞いたところ16人だそうです。昔、女性が商船大に入ったというだけでもニュースになりましたが、随分女性も増えたものだと思いました。「体力的に大変なことはないですか?」と聞くと「辛いときもありますが、好きで乗っているので大丈夫です!」と頼もしい答えが返ってきました。

 セイルドリルでは他の帆船が一部の帆しか揚げなかったのに対し、一番帆の数の多い海王丸は、すべての帆を開く総帆展帆を見せてくれました。いつもボランティアによる旧日本丸の総帆展帆を見ていたので、こちらはプロだからもっと凄いのだろうと期待していたら……「わっしょい!わっしょい!」という掛け声は元気なのですが、なかなか作業が進みません。きっと乗ったばかりで慣れない学生さんたちなんだろう、と思うことにしました。もう一つ残念なのは、帆が汚れて真っ黒なこと。帆が開くたびに見物人から「帆が汚いわねぇ」のため息が漏れました。あちこちに継ぎはぎした跡も目立ちます。旧日本丸がW杯にあわせて真っ白な帆を新調したのと対照的でした。それだけ、荒波を越えてきた、ということですね。
 

ロープで作られた表示板 仕官のベッドに飾られた花毛布 仕官用の食堂


ナジェジュダ(ロシア)  2,297トン 長さ109m 1991年建造
  セーラー服の制服も凛々しいロシアの青年たちが大人気

帆船ナジェジュダ 帆を広げたナジェジュダ 大桟橋から見たナジェジュダ 

ロシア極東海洋アカデミー所属の帆船。船名は「希望」という意味。日本に何度も訪れているようです。3本マストで、海王丸や日本丸のジガーマスト(船尾のマスト)が1本ない形です。横帆もマスト1本につき1枚ずつ少ないので、海王丸の小型版という感じ。
 まず目についたのが学生たちの制服。紺地に水色のセーラーカラー。夏服は上着が白地になります。これに白いセーラーハットをかぶった青年達が凛々しく見えます。私の大好きなウィーン少年合唱団もこのような制服を着ているので余計に気になってしまいました。私ばかりではなく、周りのおばさまたちもロシア青年たちがお気に召したようで、彼らと写真を撮ってもらっては大喜びしていました。制服を着ているのは船の外に出ていく人だけで、船内ではカーキ色のシャツに半ズボンなどラフな格好で過ごしていました。彼らは意外と人なつこくて笑顔いっぱい、英語での会話も慣れているようでした。
 船自体は1991年製と比較的新しいと思うのですが、手入れがあまりされていないのか痛みが目立ち、20年くらいたったように見えました。木の手すりはもう部分的に腐りかけてボロボロ(ビレーピンは金属製でした)。船内は海王丸に比べて狭く、暗く、日本人より大きいロシア人が乗ると狭所恐怖症になるんじゃないかと心配になるほど。特に見学通路など設けられていないので、見学者はどんどん好きなところに歩いていって、最後は急なハシゴを降りないとならない羽目になったりしていました。それも見学時間が予想以上にかかってしまった原因だと思います。

 ヤードを船の方向に対して直角のままにしていた海王丸に対し、この船はヤードの向きを進行方向に対して並行に近い角度まで回していました。セイルドリルのときは、一度ヤードを直角の位置に戻さなければならないのですが、これが非常に手早く行われてびっくり。3本のマストにそれぞれ5つあるヤードを一斉にクイックイッと数秒間で回しておしまい。かなり重いはずなのに軽々とやってのけていました。ただ、どこかがきしむのか、動くたびにギーギーとものすごい音が響き渡っていました。
 驚いたのはこれだけではなく、帆を揚げるのも早いこと早いこと!海王丸よりマストが1本少ないといっても、マストごとの作業人員が同じなら条件は同じはず。人はそれほど多くないように見えましたが、するするとマストに登り、帆を止めているロープを解き、下りてきて帆を開くのに15分で終わってしまいました。同時に始めた海王丸は55分かかっていました。これは体力の差なのでしょうか、それとも慣れなのでしょうか。いずれにしても、あまりにも素早い作業に驚きました。その代わりなのか、畳帆時間の15時を待たずに、14時過ぎに帆を降ろしてしまいましたが。

 ナジェジュダのブリッジ ロシア文字の船名 乗船している青年たち


ヨーロッパ(オランダ) 303トン 長さ55m 1911年建造
  90歳という年齢を感じさせない元・灯台船

 帆船ヨーロッパ 帆を広げたヨーロッパ(正面) 帆を広げたヨーロッパ(右舷側から)

この船ができたのはなんと1911年。50年以上働いた旧・日本丸でも1930年生まれですから、さらに上がいたことにびっくりしました。そしてこの船は元々帆船だったわけではなく、灯台船としてエルベ川河口で働いていたそうです。そんな船を何年もかけて帆船に改造したそうで、一隻の船もここまで使ってもらえたら本望だろうなぁと思いました。
 マストは3本。海王丸のミズンマスト(前から3番目のマスト)がなくなった感じです。マスト1本に対しての横帆は6枚。マストの高さも海王丸より低いので、帆も小さめなのかな。最高速度は14ノット出るそうで、古いといってもなかなか元気な船のようです。

 さすがに外から見るとちょっとくたびれた感じはありますが、船内は木がふんだんに使われてクラシックな雰囲気が漂っています。ロシア船と対照的に、木の手すりもベンチもつるつるでピカピカに光っています。船首デッキに行く途中に、ウイングのようにちょっとだけ横に張り出している箇所があり、面白いなぁと思いました。ここもちゃんと板張りになっていました。

 これは「海星」や「あこがれ」と同じく、一般人向けの訓練帆船のようで、乗っている人たちには制服はなく、ラフな格好で船内でくつろいでいました。真ん中のデッキではテントで日よけを作った下で、船の絵葉書や帽子を売っているお姉さんがいました。絵葉書を買い求めましたが1枚150円。ちょっと高めですが、きっと運営も大変なのだろうと思います。
 残念ながら船室など船内には入れませんでした。どこか異国風の匂いがしてきたのは、厨房でオランダ料理が作られていたせいでしょうか。

ヨーロッパ船尾にある舵輪 ヨーロッパのブリッジ


ハンナラ(韓国) 3,640トン  長さ102m 
  美しい船体と韓国の学生たちの礼儀正しさに感動

汽船ハンナラ 

韓国海洋大学校の練習船。"ハンナラ"とは「一つの国」「偉大な国」を意味するようです。今回の帆船の中で一隻だけ汽船ですが、"Sail Korea 2002"の本部船として、一緒に沖縄〜韓国〜横浜と旅してきたようです。

 最初は帆船じゃないから、とあまり期待していなかったのですが、乗ってみてびっくり。船体は綺麗だし、学生さんたちが親切だし、船のあちこちへ行かせてもらい、驚きと感動の連続。
 海王丸の学生が略式(?)の制服だったのに対し、こちらの学生さんは正装の制服。つまり上下が白いスーツなのです。この暑いのにご苦労様。船内のあちこちに立っていて「こんにちは」と日本語で声をかけてくれますし、さらに「まっすぐお進みください」「足元にご注意ください」と綺麗な日本語で言ってくれるのです。それもにこやかに丁寧に、まさにジェントルマン!という感じ。こちらまで正装しているような気分になりました。こうして、何よりも彼らの見事な対応ぶりが印象に残りました。

 ブリッジでは、ただ写真を撮っていただけなのに「こいつはマニアかも」と思われたのか、担当の学生さんがいきなり話しかけてきました。その内容というのが「これがバウスラスターの装置で、バウスラスターというのは…」というマニアックなもの(^^;)。英語での説明が大変そうだったので、「バウスラスターは知っている」と言ったら、次には船のスピードだとか、積んでいる水の量やタンクの位置だとか、喫水船が船首と船尾で違う理由だとか、英語で会話するにはめちゃめちゃ難しい内容に発展してしまったのでした。でも、彼の方は諦めずに一所懸命考えながら説明してくれるので、私の方も必死で聞いておりました。
 ブリッジの後ろには広い海図室がありました。海図を載せる机が3つもあり、その3つの間には4,5人がラジオ体操できるくらいの広いスペースがあるのです。とても居心地よさそうな場所です。

 珍しいものも見学できました。まずは船首。映画「タイタニック」で主人公達が手を広げて立ったあの場所です。普通の船は船首まで一般人に行かせることはまずありませんが、この船は簡単に行けてしまいました。
 さらに凄いことに、なんと救命艇の中まで入れてしまいました。ここでも説明の学生さんが一所懸命説明してくれて、36人乗りで、エンジンはどこで、飲料水はどこにあるかまでわかってしまいました。本物の救命艇に乗るのは初めてで興奮していたら、同じことを思ったのか後から3,4人のおじさんたちもやってきて大喜びで乗船していました。中は、ベンチ兼収納庫になっている長い箱があるだけで居住性は非常に低いです。日本の客船に積んでいる救命艇とそう変わらない感じがしました。

 船尾に行きますと、ちょっと広いデッキがありました。80人ほどの乗組員がここに集まれるようにできているようです。ミニ運動会くらいできるかも。ここにいた女性の学生さんとまたしてもたどたどしい英語で船のことや日本のことなど話し込んでしまいました。とても落ち着いた丁寧な感じの方で、韓国の人はうるさく話すというイメージを持っていた私はびっくり。彼女のおかげで、韓国に対するイメージが随分変わりました。彼女だけでなく、先に説明してくれた学生さんや案内してくれた学生さん、すべてがとても親切でいい方たちだったので、今まで見学してきた中でこの船が一番気に入ってしまいました。おそらく他の見学者にとっても、この船はお気に入りになったのではないかと思います。

 船の建造はいつだかわかりませんが、まだとても新しくて綺麗で、満船飾の旗も新品でした(布ではなくナイロン製のような)。客船なみに広々したスペースがあり、居住性もよさそう。私もちょっと乗ってみたくなりました。韓国の皆さん、丁寧な案内をどうもありがとうございました。

 船首から見たハンナラ ハンナラのブリッジ後ろにある海図室 救命艇の中

海星(日本) 180トン  長さ46m 1990年建造
  小さいながらも世界の海を回ってきたタフな船

帆走中の海星 ぷかり桟橋に並んだ「海星」と「あこがれ」

一般人でもセイルトレーニングができるようにと作られた小さな帆船。日本セイルトレーニング協会の所属です。実は私はこの船が日本にやってくる前、1991年暮れにスペインで一週間ほど乗船していましたので、久々の対面です。
 乗ってみるとやはりデッキが狭い…。水がこぼれるようにでしょうか、左右のデッキが海側に落ちるように傾斜しているので、こんな場所でロープを引く作業をするのは辛いなぁと思い出します。船室への階段も、船室もギリギリまで節約されたかのように狭いものでした。私は自分が使っていたベッドを見つけて懐かしく思いましたが(住めば都でよく眠れました)、見学者は口々に「こんな狭いところじゃ眠れないよ」と驚きの声をあげていました。
 メスルーム(食堂)では、Tシャツや絵葉書などが販売されていました。
11年前に撮られた写真がまだポストカードになっているのを見つけ、思わず2セット買ってしまいました。正面から撮った写真で、各ヤードに乗組員が立って挨拶しているところです。私も写っているので(足だけ^^;)、スペインでの航海の思い出として大事に取っておこうと思います。

 そういえば、この船はポーランドで作られて世界中の人が乗ったためでしょうか、帆を張る作業のときの掛け声が英語なんです。日本丸や海王丸の「わっしょい」に慣れた耳には、ちょっぴりお洒落に聞こえます。

あこがれ(日本) 362トン  長さ52m 1992年建造
  初心者に優しく居住性の良い練習帆船

帆船あこがれ 帆を広げたあこがれ

大阪市が所有する、一般人向けのセイルトレーニング用訓練帆船。ただし、大阪市民や小中学校向けのプログラムが多く、海星に比べると大阪以外に住む一般人(特に25歳以上)にはなかなか乗れない船です。横浜に来たのも9年ぶりということで、私は今回初めて乗船することができました。
 海星がマスト登りやセイルドリル、掃除や食事作りといった肉体労働が中心になるのに対し、こちらは訓練生が自分たちで船位を計算して出したり、最良のコースを考えたりと、頭脳労働も入ってくるようです。
 
 船に乗って驚くのはその広さと居住性。海星より長さでは5mほど長いだけなのに、デッキの広さが全然違います。作業するのに人とぶつからない程度の広さがあるほか、真ん中には何十人もが集まれる広場もあります。さらに、ビレーピン(金属製)に巻かれているロープには、それぞれの名前がシールで張られています。これならロープの名前を覚えていない人も助かります。そういう意味では海星よりも初心者用かもしれないなぁと思いました。ただ、唯一横帆を持つメインマストの一番下のヤードまでの高さがかなりあり、恐怖を覚える人もいるかもしれないと思いました。

 船内は、海星と比べたら月とすっぽん。綺麗だし、広いし、これならすぐにでも乗りたくなってしまいます。ほんの少しゆとりがあるだけで、こんなにも雰囲気が違うものかと、とにかく驚きます。ブリッジも比較的広く、ゆっくり海図を見られるスペースがありました。

 機会があれば是非乗りたい船ですが、前述のようになかなか関東に住む25歳以上の一般人が乗れる機会がないので、しばらくお預けになりそうです。

大桟橋の風景から。サッカーW杯決勝戦前夜祭に使われたメガフロートが残っていました。
その手前の「ロイヤルウイング」では、船上結婚式が行われていました。ファンネルの上にUW旗が翻っているのが船らしくて素敵です。

大桟橋のメガフロート ロイヤルウイング船上での結婚式



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