BANGKOK >>> 15 / AUG *SAT*



昼前まで部屋でのんびり過ごす休みの日の午前中というのは幸せな時間ですね。
ホテルをチェックアウトして貴志くんに荷物を預かっててもらう。
「日本に帰るの? 荷物は何時に取りにくる?」
「8時頃」
「朝の?」
「まさか、夜のだよ。」
帰国便は23:59発と真夜中、丸1日バンコクをぶらぶらできるわけだ。

海外では必ずといっていいほどCDショップを覗く私、今回も例によってタワー・レコードへ。CDは日本と同じくらいの値段だが、日本ではもう買えない‘カセットテープ’が買える。CDほどの種類はないが、それでもマライア・キャリーやセリーヌ・ディオン、スパイスガールズ(これも古くなっちゃいましたね)等ヒットものはたくさんあって、1本99B(360円)だから下手するとレンタルより安い。


ふと映画館の前で足が止まる。‘リーサル・ウェポン4’のポスターが目に入り、映画でも見ちゃえ、と窓口で値段を聞いてみると90B(320円)! 
安い!!
 ビデオ借りるより安いじゃん。
「チケット1枚くださーい」
「これの?」
窓口のおばさんは後ろに貼ってあるリーサル・ウェポンのポスターを指す。

「次の4時の? なら隣の窓口よ。」
この窓口は予約専用で、次の上映は別に専用の窓口がある。指定席でチケットに座席番号を書き込んでくれる。そして館内では(すでに真っ暗)係員に懐中電灯を照らして教えてもらう。土曜というのに席の指定なんて何の意味もないじゃん、ってくらいガラガラ。予告を見ているとまた周りで
がさっと音がし、周辺の人達が起立した様子。私も慌てて席を立つ。するとやはり国歌と国王の映像・・・もう、映画の前にまで起立して国王に敬意を示さなきゃいけないわけ??
ところで映画は当然タイ語字幕だが、まあまあ面白かった。

映画館を出ると日は暮れていて、ホテルに戻るとちょうど8時。貴志くんはいないが、荷物を受け取り、中身をまとめながら他のポーターと話をする。
「日本に帰るの? 日本のどこ?トウキョー?オオサカ? 空港へはタクシー?」
「エアポートバス」
「すぐそこの通りで拾えるよ。僕の友達、今日本で働いてるんだ、彼はえーっと・・・ナゴヤにいるんだ。」
東京、大阪以外に名古屋という地名を出してきたのはヴァサナに続いて彼が2人目。
「君は・・・○○っていうんだね?」
荷物預け人のリストを見ながら言う。タイの人はすぐに相手の名前を聞き、覚えてくれ、そして名前で読んでくれる。一方の私はなかなか名前が覚えられず、こうして勝手にニックネームをつけたりなんかしている(日本人の名前もなかなか覚えられないんです)。
「タイは今景気が悪い、日本はどう?」
「日本もどん底」
「気をつけて」
「コープ・クーン・カッ」(これもやっと抵抗なく言えるようになりました)。

インドラ・リージェントというホテル前のバス停でエアポートリムジンを待つ。しかし日が暮れているのでバスが近くに来るまで番号が見えないし、相変わらずバスは何台も連なってきたりするしで、本当にここで待っててバスをつかまえられるのかという気もしてくる。15分に1本あるはずだが30分待ってもこない。が、ここまで待ったら
タクシーなんかに乗ってたまるか、という意地で待ってしまう。車の流れを見ながら奮闘していると、またどこから現われたか、
「イクスキューズ・ミー、キャナイ・ヘルプ・ユー?」
と助っ人登場。
「イエス・プリーズ、エアポートバスに乗りたいんだけど、あまりよく見えないのよね〜。」
「オーケー、アイ・キャン・ヘルプ・ユー、僕はよく目が見える、バスが来たら教えてあげるよ。」
B級香港映画にでも出てきそうな兄ちゃん。でも彼は私が懸命にバスを探しているのも気にしない様子でいろいろ話し掛けてくる。車の騒音がすごいので、こちらも振り返って話さなければならず、これではバスを探してる場合じゃない。
「どこに住んでるの?」
「日本」
「東京に帰るの? カンサイ?」
「カンサイ、だけど私が住んでる街はもっと小さいところ。」
「僕は名古屋に行ったことがあるよ、日本人はみんな親切でいい人だね、でも日本語は難しい、僕は全然話せないな。」
彼が‘名古屋’を口にしたタイ人・その3。
「大学生?」
「ううん、働いてる。」
「名前はなんて言うの? 僕は○☆◇@って言うんだ」
「○☆◇@?」(繰り返してみたがやっぱり覚えてない・・・何やら難しい名前でした。)
「そう、昔のインドの王の名前からとったんだよ」と説明もしてくれたけど。
「君は若く見えるから、僕はてっきり大学生かと思ったよ(笑)」
そりゃどうも
「日本では何の仕事してるの?」
「歯医者でぇす」
彼は‘Dentist’という単語を理解する初めてのタイ人!
「歯医者かぁ、僕はパイロットだ。」
ホント?!
疑ってみるが、そう言った彼の口調は穏やかながらもどこか誇らしげでした。そしてこのインドラ・リージェント・ホテルは航空会社のクルーがよく利用するとガイドブックにもありました。
「本当だよ。バンコクにも歯医者は多いなぁ、僕も半年に1回は歯を含めて全身の健康診断を受けなきゃいけないんだ、フライト中に体にトラブルあったらとんでもないからね。」
なるほど、英語が達者なわけだ。で、しばらく兄ちゃんはペラペラとその流暢な英語をふんだんに操り話をする。
「何時の飛行機?」
「12時」
「それなら十分間に合うよ。ジャパン・エアライン?」
「ノー、タイ・エアウェイズ」
「そうか、タイ航空はいいよね、カンサイまで6時間くらい? オーケー、バスが来たよ。」
彼は自分のペースで喋りたいだけ喋っていたが、肝心のバスもちゃんと見逃さなかった。指してる方向を見るとバスが近づいてきてはいるが、私にはまだそれがエアポートリムジンだとは区別できない。確かに「目がいい」よなぁと感心する。そしてさっと私の荷物を持ちバスに合図し、止めてくれる。
どうもありがとう!!
「ユア・ウェルカム、テイク・ケアー!」

最後までいろんな人に親切にしてもらった今回の旅。結局バスが来るまで1時間くらい待ったのかな。

旅に出ると一期一会を実感しますね。人を信じてばかりでも危ないし疑ってばかりでも面白くない、その境目って難しいなぁとつくづく思う。でも、タイでは、少なくとも私が出会った人たちは、ホテルでもレストランでも、屋台、ショップ、道端、乗り物の中、どこでもみんな人懐っこくて親切でした。旅行していて嫌な気持ちになるようなことは一度もありませんでした。

ドン・ムアン空港は24時間空港。深夜でも全ての店が営業している。まさか帰りの便まで遅れないだろうなぁ・・・と出発便の時刻をモニターで確認。大丈夫、23:59発になっている。こんな時間なのにモニター画面は数分単位で離陸する便でいっぱい、ロビーもチェックインする人たちで大行列、真夜中だろうが関係なくどんどん飛行機が飛びたっていく。
空港内のハロッズで紅茶を購入。ここに‘1998・アジア大会・バンコク’というゼッケンを付けた象のぬいぐるみが置いてあって、初めてアジア大会のことを知った。

23:59発タイ航空622便はちょうど日付が変わるころ、関西へと出発。
初めてのアジア1人旅、得たものは多うございました。
                                                              
nd


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