6. トリポリ、ブシャーレ、レバノン杉の森(アルゼラブ)

 

4月2日

これまでのところ、ベイルートの汚い安宿ペンションバレリーに拠点を置いてレバノン南部の見所を回ったのだが、今日は北部の都市トリポリに移動することにした。レバノン杉の森があるブシャーレなどを探訪する拠点として便利なのだ。いつものように乗合タクシーに乗って1時間半ほどで到着。アッタル広場のパレスホテルにチェックインした。ペンションバレリーほど汚くはないが、これも安宿。1泊15000ポンド(約10ドル)もしたので、今日は久しぶりにたっぷり暑いシャワーを浴びられるぞと期待していたら、何の事はない、ここも冷たい水しか出なかった。例によって宿の人に頼んでバケツにお湯をもらい、行水する。

4月3日

今日はいよいよレバノン杉の森を訪れる日だ。乗合タクシーに乗ってブシャーレの町に向かう。この辺はカディシャ渓谷といい、車窓からの眺めもすばらしい。ブシャーレは雪山を間近に望む、すばらしい眺望の町だ。この町の一番の見所はジブラン博物館。ブシャーレ出身でレバノンが誇る詩人であり、作家でもあるカーリル・ジブラン(1883−1931)の墓所兼博物館だ。ジブランは米国に移住したが、その死後遺言によりブシャーレを見下ろす岩山の中腹にある修道院に葬られたという。今ここはジブランの作品や絵画、遺品などを展示する博物館になっており、そこが同時に彼の墓所となっている。この博物館兼墓所は自然の岩山をくりぬいたようなユニークな造りになっており、中に入ると洞窟のあちこちに彼の作品や遺品が展示され、何ともいえない、不思議な雰囲気を醸し出している。このようなユニークな博物館がこんな小さな町にあるとは、驚きだった。

ジブラン博物館前にて。

 

 

ブシャーレ周辺の村。マロン派キリスト教会が見える。

 

ブシャーレの町をぶらぶらした後、いよいよレバノン杉の森に向かう。ここから先は乗合タクシーもないので、ヒッチを試みる。スキーに行く人が親切に乗せてくれた。

このレバノン杉の森は『アルゼラブ』(神之杉)と呼ばれ、地域の住民が代々守ってきたのだという。森というよりは林といった大きさだが、樹齢1500年を超える大木がいくつかある。道路の真中にも大きい木が一本あった。まだ雪が積もっていたので、林の中を歩くことが出来なかったのは残念だが、レバノンに来て1週間、やっとこの国の象徴であるレバノン杉を目の当たりにすることが出来て、感無量だった。それにしても、1本の木自体は巨大だが、林はとても小さくてちょっとかわいそうだ。太古の昔、レバノン杉は山々を一面に覆い、その風景は現在の北欧のようなものであったという。ふと、そんな大昔のレバノンの森を歩いてみたい欲求に駆られた。

 

 

 

ところで、このレバノン杉の森の上部が実はスキー場になっている。せっかくだから、ひと滑りしていくことにした。レバノン杉の森からさらに車道を歩いて上ること40分、レバノン杉スキー場に到着。雪はたくさんあるのだが、平日で人が少ないためか、リフトは一つしか動いていない。1日券30000ポンド(2100円)、半日券20000ポンド(1400円)と高かったので、リフト係のおじさんと交渉して5000ポンドで数回滑らせてもらった。上からの眺めはすばらしい。レバノン杉の森もよく見える。貸しスキーは5ドルという話だったが、貸しスキー係りの親切なお兄さんと仲良く話をするうちにタダでいいよということになり、結局お金を受け取ってくれないばかりか、スキー場が閉まった後彼の車でブシャーレまで送ってくれた。何と親切な人の多い国かと思う。

スキー場への道から見るレバノン杉の森。

 

レバノン杉スキー場 (The Cedars)

 

次へ

目次へ