アーミッシュという生き方

 みなさんはアメリカに住むアーミッシュという人々のことをご存知だろうか。ご存知なくても無理はない。アメリカ人でも知らない人が多いのだから。彼らはキリスト教の一派で、近代的なアメリカにあって、17、8世紀の伝統を守りながら、独自の規律を持ち、彼らしか通じないペンシルバニア・ダッチ語を話し、コミュニティを作って生活している。

 伝統を守るといっても半端ではない。電気、ガス、水道は禁止されている。車を所有することも禁止されているので、今でもバギーと呼ばれる馬車を使っている。服装も特異である。女性はボンネットを被り、ワンピースにエプロン姿。一切の装飾は禁止なので、無地の地味な色で、ボタンもない。男性は幅広の帽子を被り、髭を生やし、吊ズボンをはく。あまり行くことはないが、町に出ると、かなり目立つらしい。

 彼らは主に農業で生計を立てている。子沢山の大家族の家庭が多く、農業においてもほとんど機械の力に頼らないので、仕事は大変だ。家族が力を合わせて働く。家庭でも機械を使わないので、主婦の仕事は並大抵ではない。手洗いでする洗濯だけでも一日仕事になりそうだ。朝昼晩と家族が揃っているので、食事の支度にも手がかかる。

 そんな生活を送る彼らでも、その人口は増え続けていて、アメリカ全土に13万5千人を超えるらしい。大家族といっても、自動的に皆が信者に数えられるのではない。彼らはキリスト教の中でも、プロテスタントの再洗礼派に属する。

 カトリックでは、幼児洗礼によって、赤ちゃんに洗礼を受けさせ、入信することになる。しかしアーミッシュではそれを否定し、大人になって自分の意思で入信するべきと説いた。元々ヨーロッパにいた彼らが、カトリックと対立し、信教の自由を求めてアメリカにやって来た理由のひとつである。とにかく、自由意志で入信した人の数が、現代でも増え続けているということだ。

プレーン&シンプル

 私がアーミッシュの人々のことに興味を持ったのは、料理本からである。お菓子作りの本をいろいろと読むうち、アーミッシュのことを知った。電気を使わないので、インターネットをするはずもないし、伝道しないので、書物も少ない。少ない情報から、私の知ったことを書いている。

 彼らは装飾が禁止なので、服装にも部屋にも一切の飾り気はないが、食事だけはとてもリッチである。農業や酪農を営んで、家族が共に働く。子供も独自の教育を行う学校で8年間、基本的なことだけを学び、主な教育は家庭でなされる。家業を手伝いながら、従順で穏やかな子供になるように育てられる。家族がほぼ一日中一緒に、肉体労働をするので、食事はとても重要だ。

 一家の主婦が家事をこなす。冷蔵庫も電子レンジもないので、新鮮な本物の材料を使い、たっぷりの豊かな食卓が整えられる。その評判の良さから、主婦の中には、たくさんのお菓子や瓶詰めの保存食を作って販売する人もいる。一日3度の食事には必ず家族が揃い、祈りの後、食卓を囲む。

 私の見たアーミッシュの家の雰囲気は、すべて整然と、正にプレーン&シンプルだった。カーテンや壁掛けといった全ての装飾が排除されて、孫の世代まで持ちそうな、どっしりとした家具だけが置いてある。物を持たない豊かさがわかったような気がした。整然とした空間をうらやましいと思う。

 彼らの生き方を知るにつれ、これが人間的な、本来の生き方ではないかと考える。ネットでコラムを書く私が言うのも変だけど、電話もない彼らは、直接会うことを大事にする。土を耕して、神からの農産物を得る。家族一緒に、豊かな食卓を囲む。

 全てを見習えないけど、物のごちゃごちゃ詰まった我が家を、少しづつすっきりさせていこう。家族にちゃんとした食事を摂らせよう。だらだらせずに、あらゆる労働を大切にしよう。

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