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ディープ・エコロジー


毎年、多くの仕事を広く浅く(?)していますが、2002年で一番満足した仕事は月刊誌「エスクァイア/日本版」から頼まれコーディネイターとしてアーネ・ネス氏にインタヴューしたことでです。
貴重な経験でした。

それをここで紹介します。
アーネ・ネス氏はノルウェー人であれば知らない人がいないほどの有名人です。
有名人に会い、インタヴューするのは大変なことです。
まず、コンタクトの方法が分かりません。
駄目とは知りつつ電話帳で調べましたが、同姓同名の人が幾人かいるだけで、本人は記載されていません。
仕事の以来があってから数日後、新聞にかなり大きなネス氏の記事が掲載されたので、新聞社にFAXで手紙を送信して、その手紙を本人に転送してくれるように頼みました。
同時に、ノルウェーの文部省、オスロ大学にも同じようにFAXで手紙の転送を頼みました。

数日後、インタヴュー快諾の電話がネス氏の奥さんからかかってきました。
毎度のことですが、有名人、忙しい人のアポ取りはジグソーパズルをやるようなものです。

アーネ・ネス氏
1912年生まれ、パリ、ウイン、バークリーに留学。
27歳で最年少のオスロ大学の哲学科の教授。
ノルウェー語は母国語だから当然話します。
それ以外に講義、執筆ができるほど英語、フランス語、ドイツ語が堪能です。

1973年の論文で「ディープ・エコロジー」を提唱して世界的な反響を呼びました。
現在はオスロ大学名誉教授です。
また登山家でもあり、ピアノはプロをめざしたほどです。

時々、彫刻公園で若者と一緒にスケートをやっているようです。
といっても、刃のついたスケートではなくローラブレードです。
大学教授という職、多くの趣味もプロも顔負けで、さらに全く自分を飾らず、子供のような好奇心を持つネス氏のような人はノルウェー人に多く見るタイプです。

初めて仕事の依頼があったときに、「アーネ・ネス」?どこかで聞いた事がある名前と思いました。
有名な登山家でアメリカの歌手ダイアナ・ロスと結婚した人。。。
後から、知ったのでですがネス氏の同姓同名の養子の息子なのです。(登山中落下死亡)
エコロジーとあまり結びつかなかっただけに、なぞが解けてホットしました。

インタヴュー
6月29日(土)にネス氏にインタヴューをすることが決まりました。
場所はネス氏宅です。
まさかプライベートの家でインタヴューができるとは思はなかったので、驚きました。

インタヴューは私がノルウェー語で何度話しかけても答えは英語で返ってきました。
もう慣れましたが、よくあることです。
結局最後までノルウェー語の返事はありませんでした。
日本人がノルウェー語を話すはずがないと思っているのかもしれません。
ネス氏は無意識のうちに英語で答えていました。
日本にいる外人に日本語で話しかけても、外人は日本語が話せないと思っているのと同じでしょう。

話し好きな人で一つ質問すると長々と話てくれます。無口の人も困りますが、なかなか話が終わらないのも困ります。
また冗談が好きとみえて、話しの間に、「私は90歳だから、何を言っても許される」と何度か真面目な顔をして言いました。
「自分は後、3年は生きられない」とも冗談か真面目なのか分かりませんが、 何度かいいました。
「どうして3年ですか」と聞くと、「自分の親族で93歳以上生きた人はいないから」ということでした。
当然、ネス氏に不幸があれば、ノルウェーのマスコミは大騒ぎするはずです。
しかし、まだそのようなニユースには接していないので、きっと元気なのでしょう。

日課として、森の中の散歩、ボクシングをするそうです。
話の前後は忘れましたが、突然、私相手にボクシングの真似を始めました。
90歳といえども、打たれれば痛いものです。
横に座っている記者の方が、私より若かったので、ネス氏に「私ではなく、横の若い男を相手にして欲しい」と矛先を変えてもらいました。
「記者には気の毒なことをした」と言っても亡くなったわけではありませんが。
念のため。

ディープ・エコロジー
ディープ・エコロジーという言葉はありません。
言葉は一人歩きをして有名になりましたが、ネス氏の造成言だそうです。
その意味は、一般的にエコロジー、環境問題というと自然の汚染、資源の枯渇に対する問題、またリサイクル等があげられます。

しかし、デイープ・エコロジーは自然、生命との共存です。
例として説明してくれたのは、もし部屋の隅にへびがいると、それだけで大騒ぎして殺そうとします。
何も悪ことはしていないのだから「Let it be」そのままにしておきなさいという説明でした。

今回のインタヴューで私にとって一番感銘を受けた言葉でした。
少し、その感銘の余韻に浸っていたかったのですが、次から次へと冗談か真面目か分からない話が続きました。
目をパチクリしながら通訳をしていました。

私もネス氏のようなジョークが好きなのですが、ネス氏の相手になる人の困惑がよく分かりました。
それ以外にも幾つかディープ・エコロジーの説明をしてくれました。
先ほどのへびのような動物、生物が何に価値をみいだしているか、人間には分かりません。
分からない人間がそれを独断するべきではないのです。

インタヴューの後、ネス氏と近くの 森を散歩しました。
子供の頃から慣れ親しんでいる森らしく、早朝の散歩は朝食前の日課ということでした。
ネス氏が言うのには、「森の中で自然に接していると「生命の大切が理解できるはず」です。
また「生態系の破壊は憎むべきことです」と力説されました。

子供のころ親しんできた山河、森が破壊されると言いようのない悲しみと失望を感じます。
しかし、だからといって現在の文明を否定してるわけではありません。
今は、奥さんが車で大学まで送り迎えしてくれますが、車がないと大変に不便だ」という説明をしてくれました。
「自然と上手に共存していくには」という質問に、「美しいと感じたものに手を加えずにそのままにしておくことです。
女性と同じです」と答えてくれました。

横道にそれますが、ネス氏は3度結婚して、現在の奥さんは香港からきた中国人だです。
奥さんはネス氏が有名人でしかも教授という割りには全く自分を飾らない姿に驚いたそうです。
それで結婚をしたそうです(詳しいことはよく分からない)が、父親と孫とほどの年齢差があります。
普通は家の中での撮影は許可してくれないそうですが、今回は例外ということでした。
接していて恐妻家の印象がありましたが、どこからどこまで本当かよく分かりません。
離婚の都度、住まいが小さくなっていったそうですが、本人はまるで気にしていないようでした。
インタヴューをしていて、3度も結婚したという理由がよく分かりました。
女性は魅力ある男をほっておくはずがありません。

私たちは記者、女性のフトグラフアーそして私の3人でした。
インタビューの間にネス氏は時々フォトグラフアーの女性にちょっかいをだしていました。
これもどこまで本当か冗談かわかりませんが。
奥さんは「私ではなく、他の女性を見つけなさい」と嫉妬とも冗談ともつかない「別離宣言」をしていました。
その時に、ネス氏はボソっと1人事のように「彼女が最後」つまり、今の奥さんが最後で、もう結婚はしないそうです。
私の勝手な想像ですが、もう面倒なのでしょうね。

フォトグラフアーの女性はネス氏は「女好き」という印象を持ったようです。
90歳も過ぎると中年男のギラギラしたいやらしさがなく、「自分も90歳になった時に同じような人間になれるのかナー」と一瞬考えたものです。

重複しますが、ネス氏のディープ・エコロジーをまとめてみます。
万物の生命、生態系の尊重と保護、人間と動物を含む自然との共存、消費社会に対する疑問、反対運動に対して非暴力主義です。(ネス氏はガンジーを大変尊敬している)
ネス氏の本が何冊か、日本でも訳されていますので、興味のある人は是非、一読して下さい。

1912年1月27日〜2009年1月12日、享年96歳