少しでも計画の参考になれば…と思い、いくつか情報を書いておきます。本文と合わせて参考にして下さい。
メールでの質問にも分かる範囲で必ずお答えします。
<情報源>
@日本語で書かれたガイドブック(紀行文)
- ・『ジョン・ミューア・トレイルを行く』
加藤則芳著(平凡社)
- 僕が準備・計画していた時には日本語で書かれたガイドブックの類は皆無だったが、ちょうどトレイルを歩いていた7月に加藤則芳さんによるトレイル踏破の紀行文及びガイドが出版されていた。この本が2ヶ月早く出ていれば僕は情報集めにあんなに苦労もすることもなかったし、不安になることもなかっただろうに…。まったくトホホである。
(この本に書かれているテレビ番組というのが、僕にチャレンジしようと思わせた例の番組なのです。)
とにかく、この本が出版された今、日本人にとってジョン・ミューア・トレイルがグッと身近になったはず。興味を持った方は迷わず手に入れよう。
必要と思われる事は網羅されているが、最新の情報は個別にチェックしないといけない。僕が行った時点で既に変更になっている点もあった。
巻末には情報源のリストも載っているので便利。(しかしこれは英語)
Aガイドブック
- ・ 『Guide to the John Muir Trail』
by Thomas Winnett(Wilderness Press)
- 地図が見やすく文章も短いうえに、軽量なので僕はこれを持ち歩いた。北上コースで書いているので南下コースで行こうと思っている人には少し読みにくいのが難点。
- ・ 『Starr's Guide to the John Muir Trail and the High Sierra Region』
by Walter A. Starr,Jr.(Sierra Club Books)
- 伝統と信頼性ではピカイチの小型ガイドだが、文字だけで使いづらい。これだけで済ますのは危険だろう。しかしアプローチルートの記述が充実している点が他のガイドブックと違うし、それは極めて重要な内容なので入手しておいた方が良い。
- ・ 『the John Muir Trail』
by Don and Roberta Lowe(Caxton)
- 地図とエレベーション図が見やすく便利。南下コースで書いているので僕には便利だった。が、写真が多すぎるのが僕にとっては欠点。というのも、事前に写真を見過ぎるとイメージが固定化されてしまって、現場に行ってもそのイメージと同じ風景をカメラに収めて納得、というパターンに陥りやすくなるからだ。また写真の為にページ数が増えて重くなってしまっているのも、僕がこれを持ち運ばなかった理由。
と、ちょっとケチをつけたけれど、実際にはこの本が一番役に立ったと思う。特に地図が使える。地図上にキャンプしやすい場所を示しているのと、ルート上にヨセミテからの積算距離が入っているのが便利。僕はそれらを別の地図に書き写して持って行ったが、実際の場でも有用な情報になった。
その他にもジョン・ミューア・トレイルの本を数冊入手したがちっとも役に立たなかった。
「ビデオガイド」なるものも買ったが、早口英語で何言ってるのか分からなかった。「何言ってんの?」という感じで眺めているだけで終わってしまった。
ジョン・ミューア・トレイルと重複している部分が多いパシフィック・クレスト・トレイルというトレイルのガイドブックも、部分的に参考になるだろうと思って買ったのだが、やはりちゃんとジョン・ミューア・トレイルの本を使うべきだ。(経験から。)
また、エスケープ先の町やゴール後に行く麓の町のことを調べるためにLonely Planetの 『California & Nevada』を買ったけれど、対象となる町が小さ過ぎるのか、あまり参考にならなかった。もっといい本があればいいけれど、小さな町なので、「臨機応変」と腹をくくれば予備知識なしでもなんとかなるだろう。そのへんは別のテクニックの話になります。
ヨセミテに関しての記述のあるガイドブックは日本のものでもいくつかある。『地球の歩き方』の「アメリカの国立公園」あたりが入手しやすいでしょう。
B地図
ガイドブックにある地図でも使えるが、やはり可能な限り「良い地図」は不可欠だ。
僕はTom Harrison氏による『MAP PACK OF THE JOHN MUIR TRAIL』をインターネットで見つけて購入した。カラーで、全行程をA4サイズ13枚に分割してあるので便利。しかし距離はマイル、標高はフィートで表示している上に、1インチが1マイルになるように縮尺を操作してあるので、日本人にとってはこの1:63360というスケールが気持ち悪いかも…。しかも等高線が80フィート間隔で引かれているとは…。
しかし実際に歩く上では、少なくともマイル感覚に切り換えておく必要がある。地図も指導標も人と話す時にも、距離をあらわすのはマイルだ。歩いているうちに慣れてくるだろう。計算機を持ち歩くほど厳密になることもないが、マイル、フィート、ポンドがそれぞれ何km、何m、何kgぐらいなのかは覚えておいた方がいいと思う。
持ち歩く地図はガイドブックと併せて早めに入手して、必要と思われる情報をあらかじめ書き込みしておくといいでしょう。
Cウェブ・サイト
僕の場合には予想以上に大活躍した。最新の情報が得られるのが良い。
また、トレイルの情報に限らず、道具探しなど広範囲に渡って役に立った。
インターネット万歳!
(お役立ちサイト リンク集)
<事前の準備>
- ・いつ行くか決める
- 雪や雨の量など年によってトレイルのコンディションが違うが、7,8,9月が歩きやすくていいだろう。
時期が早いと残雪や水量が多く危険な雪渓や徒渉が増える。(6月まで雪が降る年もあるらしい)
9月も後半になると朝晩の冷え込みが一層厳しくなる。(その方が蚊が減っていいという人もいたが)
全踏破ではなくて途中から入ったり途中で出たりという場合には、そこまでのアプローチなども調べておく必要がある。
アメリカの国立公園は、どこかの国のように観光客の為と言ってやたらと便利にしちゃったりはしない。宿泊場所や交通手段などで思わぬ苦労をすることもある。
- ・許可証を予約する
- 原則的に許可証が無い人はトレイル上でキャンプすることができない。マウント・ホイットニーのエリアに至っては日帰りトレッキングにも許可証が要る。環境を守るために人数を制限しているのだ。
1日分の許可人数が決められているので、おおまかな日程が決まったら早目に予約しておく方がいい。現地で直接取得することも可能だけれど、あまり期待はできないので、必ず予約すること。予約受付の期間も決められているからあらかじめ確認しておいた方がいい。僕は4月末頃に手紙を書いて予約した。
トレイルは国立公園局管轄エリアと森林局管轄エリアにまたがっていてそれぞれ許可証が必要なのだが、ジョン・ミューア・トレイルを歩く場合はとにかくスタートするところで許可証を取得すればその1枚で済むということになる。
ヨセミテからスタートする場合には、ヨセミテ渓谷のウィルダネスセンターで許可証を取得する。
ホイットニーからスタートする場合には、ホイットニーエリアの制限が厳しいため許可証取得が難しいらしいので注意。
取得する時にはスタート日、終了日、コース、人数などを知らせなければならないので、予約の手紙を送るまでに大まかな日程は決めておかなければならない。また、予約料金(3ドル)や返信用郵送料金などもかかるので、手紙にはクレジットカードの番号なども書いておけば後は向こうが勝手に請求してくれるので楽。
- ・航空券等を手配する
- 計画に合わせて早目にチケットを確保すること。出発日は事前に決めることができるけれど、帰国日が確定できない場合にはオープンチケットにするといいでしょう。状況が状況なだけに変更の電話連絡もいつ出来るか分からないので、帰国便の仮予約は十分先にしておいた方がいい。しかしあまり先にしてしまうと保険料が嵩むので注意。
保険に関しては、「アイゼン・ピッケルを使用する危険な登山」と見なされると保険料が高くなるということにも注意が必要。
万一の場合の救助・捜索にかかる費用にも適用されるかどうかも確認した方がいい。怪我してリタイアしてその上全額負担、では泣くに泣けないもんね。
- ・食料の補給方法を決める
- 本文にも書いたけれど、これだけのロング・トレッキングになると食料補給の方法が最も大きな問題になる。
自分がどんなペースで歩けるか、何日分の食料を運べるかなどを考慮に入れて、慎重かつ柔軟に計画する。また不測の事態に備えて常に2日分位のエクストラ・フードも確保しておかなければならない。
町まで下りて店で買って補給する場合なら問題ないけれど、どこかにあらかじめ送っておく場合にはその時期や方法などをちゃんと確認すること。調達の頓挫は踏破の頓挫になり兼ねない。
本文の「計画」の項も参考になるだろう。僕が計画した補給方法のほかにもいくつも手段はあるし、それによって補給場所も変わってくる。ガイドブック等で十分に検討すること。
許可証予約などの際には既におおまかな計画は立てておかなければならないが、食料調達の方法によって計画が大きく左右されるのが実際のところだ。ということはそれまでに調達方法も含めてある程度の方針が決められていないとならないということになる。そのためにもガイドブックや地図などはできるだけ早目に入手して計画を立て始めなければならない。
<道具>
バックパッキングでは「何を持っていくか」ではなくて「何を持っていかないか」がポイント。持ち運べる荷物の重さには限度があるから、必要最小限のものにとどめるべきだ。「これは要るかな?要らないかな?」と思ったものは持っていかない方がいいだろう。そのあたりはある程度経験しないと分からないから自分のやりかたで決めること。
重い荷物を背負っての長期のトレッキング、過不足無く慎重に選んでおきたいところだ。
ここではテントやシュラフなどの基本的な装備については触れない。
- ・ベア・コンテナ
- もうこれは必携。物によっては「ベア・キャニスター」とか「フード・キャニスター」とか呼ばれていて素材や大きさもいろいろあるが、持っていくことを強くお薦めします。日本ではお目にかかることはないが、向こうのアウトドアショップに行けば大抵売られているし、ヨセミテなどではレンタルもされている。僕はインターネットで買ったものと、現地で買ったものを使った。
- ・ウォーターフィルター
- 日本でも売られているが、外国にはもっとたくさんの良質なものが売られている。物によっては少し重いかもしれないが必携だ。
- ・靴、ザック
- トレイルで初めて使う道具というのがあってはマズイだろう。基本的には使い慣れたもの、新しいものでも何回か使ってクセ等を把握しておかなければならない。僕が今回に向けて新しく買った道具は、靴とザック。
靴は、植村直己も御用達の「ゴロー」という店で驚くほど軽い軽登山靴を買った。重い靴だとそれが負担になるのではないか、とできるだけ軽くて丈夫なものを探したのだ。しかし「軽登山靴」といわれるだけあって、本格的な重い「登山靴」と比べると強度等で劣る。多少重くてももう少し丈夫な靴の方が足への負担が少なかっただろうというのが反省点だ。
ザックはエクスターナル・フレーム・ザック、いわゆる背負子式のヤツ。単純にバックパッカーのイメージからこれにしたが、日本で一般的なインターナル・フレーム・ザックで歩いている人もたくさんいた。大体半々といったところだろうか。どちらにしても一長一短なので、十分な容量で自分の身体に合ったものならどちらでもいいだろう。
ほぼ確実に何らかの「外付け」の必要が出てくるので、そのための準備、工夫もしておくと現場で困らない。
- ・スパッツ、サンダル、アイゼンなどの足回り
- その年の雪の状態や行く時期によってトレイルの状態が大きく変わるので、それに合わせて足回りの道具も抜かり無く準備しておくことは大事なこと。
残雪が多い時にはアイゼン、ピッケルなどの道具が必要になる。
どんなに状態がいい時でも徒渉は必ずあると思っていいので、丈夫なサンダルは必携だ。(トレッキング時以外にはこれに履き替えてしまうと足が楽。)
スパッツは雪中で使用のロングに限らず、状態のいい時でもショートがあるといいな、と思った。というのも、渇いた気候なので場所によっては砂が多くて、靴や靴下の中が砂だらけになるからだ。
ストックはあった方がいい。ザックの重さで上体が不安定になりがちなので、下りの時などには大いに助けになるだろう。特に徒渉の時には有るのと無いのとでは大違いである。あまり使い慣れていないと、特に1本使いの場合には頼り過ぎてかえって不安定になるので注意。
その他、クツズレ処置の道具など…。
- ・僕が失敗したこと
- ロウソクは使わなかった。暗くなったらすぐ寝たし、ロウが残るのであまり環境にもよくないと思う。しかも結構重い。
最初の数日のヘッドランプの使用時間が結構長かったので、途中で予備電池を買い足したが、クマさえ出なければあまり使わないので結局無駄になった。結果論だけど。
衣類というのは意外に重たい。食料や基本の道具が減らせないのでどうしても衣類から軽くしようとしてしまいがちだが、少し減らし過ぎたようだ。汚れたパンツはあまりはきたくない。
昼間は薄着で十分だが、朝方の冷え込みをあまり軽視しないほうがいい。クソ暑いときに準備するから実感が湧かないかもしれないけど…。
荷物を軽くするためにはある程度のストイックさは必要だけれど、あまりストイックになり過ぎてあれもこれもと制限してしまうと、トレイル歩きが味気ないものになってしまう。
僕はコーヒー、タバコの嗜好品は持って行った。釣り道具やハープまで持って行ってしまった。酒だけはちょっと重たいので断念したが、酔っ払っていると高山病にかかりやすくなってしまうらしいので持って行かなくて正解だった。
長期間にわたる山歩きなのだから、ガチガチに予定を立てても丸っきりその通りになるはずがない。ある程度の柔軟さも必要だ。細かいことはその時に歩きながらでも考えればいい。バッチリ計画しても結局はそうなるだろうから。
そんな時に臨機応変に対応できるようにするための、情報・計画・準備なのだ。