世界遺産
   ーブルゴーニュ地方、またまた珍道中ー

日程こうだった。
 成田→Paris→Monbart→Dijion→Beaune→Macon→lyon→Paris→成田
         ↓            ↓     ↓
        Vezelay          ワイン畑    Cluny
          Avallon          Autun
          フォントネー修道院
          スミュール・アン・オーソワ





第九章 マコン(MACON)観光

(23)マコン(Macon)観光<その2>


「ツーリストインフォメーションないかしらあ。」確かに。ホテルで貰った地図は
あるものの、どうも見所がどこだか分からない。そもそもマコンと言うのは観光地なん
ですか? どーなんです?リーダー。ここを選んだのはリーダーなんですからリーダー
案内して下さいよ。「あわわ、ツーリストインフォ、ないかし....。」あっ、あそこに。
嘘みたい、天の恵みか、お情けか交差点のあそこにOffice de Tourisme
の矢印がある。あ〜、あったじゃないですか。幸先(さいさき)いいですね。じゃ、矢印が
差している方向へ行って見ましょう、よかったよかった。ホッ、これで何とか。ホテル前の、
トラックがビュンビュン通るこの大通り、真中に誰それかの像が立っている。市長?
なのかな。法衣を着ている様にも見えるが。歴史上の領主か誰かの像なのかな。
細川たかしの像みたいなモンですね、この街に貢献したご褒美の。気を付けて、信号は
青だけど車がジャンジャン来ますよ。あ、河だ。え、煙。う、車だあ。行き止まって
しまった。目の前は河だ、それも可也な大河だゾォ。ぶっとい灰色の河の二時の方向に
モクモクと白い煙を出し続ける長い煙突。火事?ではないよな。工場地帯なのかな、
ここって。所でツーリストインフォは? 変ですねえ、矢印の方向に来たのに、河。
これ以上進んだら水の中ですね、どーします? 濡れて見ますか? お〜さむ。まさかと
思うけど、道なりに続いている11時の方向のあの橋の向こう、にあるんでしょうかねえ。
まさかね。あっちは建物がなさそうだし、街の中心はこっちだし、橋の向こうへ行くなんて
考えられないですよね。それ以外の選択肢は1つ。河へドブンでなければ、右に行くしか
ない。道は左の橋へか、右に、しかない。でもなあ、右って河沿いでビルの裏手なんだよな。
こんな裏通りにツーリストインフォなんて、あるのかなあ。


まるでイタリアの裏通りだ。赤みがかった壁、黄土色の雨戸、路地かと思うと庭。
サンレモにこんな感じの一角があった様な気がする。サンレモより、もちょっと綺麗か。
さっきクリュニーで見た黄土色の壁に緑の木戸、なあ〜んだ、ここにもある。と言う事は
マコンとクリュニーにイタリア人がいた、って証拠だな。メモっとこ。イタリア人が
いたりや、っと。何だ、河際は駐車、駐車、駐車の山だ。一転、遥か向こうに目を
転じると、モクモクと工場地帯の白い煙、さっきも言ったけど。煉瓦っぽい家や鉄の門
の大きな家も有るものの、もう少し綺麗だったら、あの叶姉妹も訪れたニースの姉妹都市よ、
と言っても通用するのに、惜しいネ、やっぱり裏通りだ。こんな人通りのない裏通りに
ツーリストインフォがある筈はない。う〜ん、十字路迄戻ろう。ん、BELLEVUE
ホテルが見える。へえ、意外とど派手だな、真っ赤な壁だ。中はそんなにカラフルでなく、
むしろ伝統的な重厚な造りなのに、赤い壁に白い窓の一際目を引く4階建ての建物なんだ。
こっちから見ると泊まる気、ちとしない。おまけに隣りは真黄色。ど〜なってんの、
この街って。ガーガー、ガーガー、さっきから大きな車体のトラックがジージー、
ガーガー音を立てながら目の前を通り過ぎて行く。うるさいな。うむ、第三京浜だ。
トラックの四角い車体に、エアラインの様な線やらマークやら奇怪な文字やらが、
赤・黄・黒で書いてある。まるでフェデラルエクスプレスだ。横を見れば、このトラック
に負けない様相の壁。壁一面に絵が描いてあるんだ。何だろうな、この顔。スターリン
みたいなおっちゃんを中心に、背後に子分の男達が黒い背広を着て8人立っている。
飾りに赤や青の形の定まらないモチーフが花を添えて、無茶苦茶目立つビルだな、こりゃ。
スターリン? いや、このビルの持ち主の肖像? うん、名刺代わりに自分の顔、な〜んて、
かもな。クリュニーで神聖な魂になったのに、一瞬の内に俗人に引き戻されてしまったなあ。
これは現代の都会そのものだ。空気も悪い。人も多い、騒音もする。


あっちの方に国旗が立った建物あるじゃないですか、あれじゃないの? だが、その
建物のある方向をあざ笑うかの様に、矢印は逆方向を差している。無視しましょう、
この方向指示。 思うに、これは事務所であって、差している方向のどこかのビルの3階か
どこかの、事務専門オフィス。私達が探しているツーリストインフォとは似ても似つかない
会社組織の旅行会社。探している地図が貰えるインフォでない。きっとそうだ。さ、
行きましょ、行きましょ。一先ず、あの国旗の建物目指してホテル前を通過して行きま
しょう。困った時の消去法で行くと、そっち以外、進むべき道はない。あっちは河だし、
こっちは駅だし、ブツブツブツ....。しゃあないじゃないの。ブツブツブツ。ほ、ロココ風
装飾の古い建物だ。屋上のキューピットや丸窓の間の月桂樹の葉、アイアンレースの
バルコニー、赤い小花がたわわに飾られている。が、分からない、一体何の建物か。
扉が開いていればホテルかも知れないが、それらしきホテル名も表示されていない。
もそっと先に行って見るか。ん、んん、んん、んん。当りぃ〜。この角から左に、
急激に雑踏がある。匂う、匂うぞ。怪し〜い。只事ではない〜。こっちがマコン銀座
ですね。細い道なりに、店や人が倍になって賑わってきた。やったあ。へえ、珍しく
新しい建物もある。石組でない新素材のブティック風な白いヤツ。楽器店、なのかな。
嘘、あった。ツーリストインフォだ。我等の探している正真正銘のツーリストインフォ。
地図を呉れ、説明をして呉れ、ニコッと係員がお愛想笑いをして呉れる、我等の味方、
ツーリストインフォ。リーダーの好きなツーリストインフォ。あ、あ、ありましたね。
「.........。」ショック状態か。しっかりして呉れい。こう言うのを怪我の功名
って言うんでしょうね。犬も歩けば棒に当る、の方ですかね? 当るも八卦、当らぬも八卦?
ま、いい、結果良ければ全て良しだ。「ちわ〜。」調子が戻って来たゾ」


込んでますね、流石、繁華街。外の賑わいに比例してもう先客がいる。お年寄りだから
ちょっとばかし時間掛かるかも知れないですね。根気良く待ちますか。こうして見ると
マコン銀座と言っても道が狭い。洗練された通りと言うよりは、小さい店がゴチャゴチャ
とある盛り場風だ。やっぱり都会だな、日本で言ったら池袋ってトコかな。あ〜
イカンイカン。日本に例えるなんて不遜の致す所、卑(いや)しくもおフランスだゾ。
歴史が違う。いや待てよ、そうなのかな。フランスの宮殿、ヴァーサス(VS)江戸城、
フランスの騎士と剣(VS)武士と刀、フランスの貴婦人(VS)紫式部、フランスの貴腐ワイン
(VS)吟醸酒、フランスのリモージュ(VS)柿右衛門、フランスの香水(VS)お香、
フランスのベルサイユ宮殿(VS)日光東照宮、フランスのエルメススカーフ(VS)佐賀錦、
フランスの、「あ、空いた。」プチン。いて。いい所だったのにぃ。「ボンジュール、
マップ。地図、大きいのちょうだいナ。」「ボンジュール、ハロー。」やったぁ〜、
久し振りに聞く英語だあ。いいですリーダー、私聞きますから。in英語→あのですねえ、
1時間位でマコンを少しだけ観光しようとしている日本人なんですけど、いえね、
この後リヨンに行くので、余り長居は出来ないんですぅ〜。そしたらどこでしょう、
見るのって。「オー、それはそれは。ほら、地図の中に大きなイラストが見所となって
いますが、もう少し行った所に市役所がありますし、博物館もありますよ。」
in日本語→「博物館見る時間はないわよ。」


この辺りが一番賑やかな界隈なんじゃないですかねえ。外へ出ると、1階が小さい店舗に
なっている店の前を若者が歩いて、あ、あれ何でしょう。人が沢山いる。沢山なんて
もんじゃない。大勢の人々が山の様に集まっている、と言った光景だ。怒声も聞こえま
せんか?リーダー。「ホントね。」やっぱり? 学校なんですかね、鉄の高い柵があるけど。
間口は狭そうだが鉄柵の向こうに、周りの店舗とは明らかに違うアカデミックな重厚な
石の建物が控えている。紛れもなく学校だ。高校か、大学か、う〜ん、鉄柵にへばり付いて
いる学生を見ると、お肌すべすべの若者もいるが、よれたヤッケのむさ苦しいヤツも
いるし、取り敢えず大学と言う事にして置きますか。高校生がこんな大それた事、
しないだろう。「ウワォ〜〜、ウワォ〜〜。」としか聞こえないのだが、どうやら
何がしかのシュプレヒコールを叫んでいるらしい、「授業料返せ〜〜、単位よこせ〜〜。」
そんな単純な叫びではない様な、尋常でない喧騒だ。何だろな。何の紛争なのかな。
工事中のこの黒黄の縞々通行止めがあるが、これもこの騒ぎに関係があるのだろうかな?
この騒ぎの中、少しでも人通りを止め様とか? 「あそこに教会があるから見ましょうよ。」
お〜い、よくそんな気になれますねえ。この群集を前にして。見ましょう、時間が、ない。
小さな教会が、よりにもよってこの学校の向いにあるんだあな。丁度、学校と教会の間が
狭い広場になっている。あれい〜、POLICEだ。教会の前にPOLICEと書かれた
バンが止まって、ドアを開け放っていつでも飛び出せる様に待機している。へえ、こりゃあ、
只事ではないな〜ぁ。


あ、門が開けられた。う〜む、状況がイマイチ、掴めない。どいつが団交係りなんだろ。
半分、鉄柵門を開けて学生に何やら話している四角顔の大人がいるが、こいつは単に
門開け係りの様だな。別段、学生達が食い掛かって行く様子もない。何だろな、
バッグパック野郎が4人、通り過ぎて行く。これは単なる物見高い通行人、当の学生達も
皆、よれたバッグパックが多いし、服装もセーターを長くダラ〜っと着たり、ジーンズや
ミモレ丈のスカートだ。あれえ、校舎前に座り込んでる。やっぱり大学生だ。長い髪の
女学生が座り込み、コンパクトで化粧直ししている。余裕だなあ。冗談じゃない、何やって
けつかるねん。真面目にやれ〜ぃ。整理してみよう。もしかするとこうなのかも知れない。
元々、学生達は狭い校庭に座り込んで、今朝からかあるいは昨夜からストライキをしていた。
要求は何であるかは不明だ。だが、長時間座り込んでいるからには、それに値する、
交渉を要する重大な、大学への要求がある筈である。そして、この鉄柵にへばり付いて
ベターっと中を覗きこんでいるのは、案外、通行人。もしくは同じ大学生ではあるが、
処罰を恐れて静観しているズルイ奴等。成り行きを見守って、どうなるのか結果が気に
なっている奴等だ。そしてこの大学の前は、3〜4日前から工事中。地中のガス管を
交換している所なのだ。学生達は座り込みのストなので、大学側も取り敢えず、警察に
警護の依頼をしたもののパトカーは1台、万が一、紛争に突入した場合は、応援1個団体を
要請する為、ポリスはパトカーのドアを半開きにして片足を出し、様子を伺っているが
余りに長い膠着(こうちゃく)状態なので、ま、ラジオで音楽でも聞くか、とチューナー
を回している。うん、完璧な実況中継だな、こりゃ。そしてその前を、何も知らないアジア系
旅行者2人が通り掛り、無謀にも、群集を尻目に紛争中の大学前の名もないちっぽけな教会
を観光しようとPOLOCEカー脇をスタスタと通り過ぎて行く、何ともアンバランスな
光景なのであった。ま、紛争の原因だけが分からないっちゅうのが、玉に傷、ではある、がな、
ま、完璧だろう、こんなモンで。


ちなみに、成り行きを見守って処罰を恐れて静観しているズルイ奴、これは大学時代の
自分そっくり、だ。反省。



    


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