税金なし天国!の海賊たちの巻


これは1/22 朝日新聞朝刊東日本版「二都物語」向けに書いたコラムをリメイクしたものです。
そりゃ天下の朝日にこのまんまは載せられんわな〜。


「It's grog time!」(grog=アルコール度のむちゃ強い酒。イッキ!イッキ!に近い)はカリブの海賊の合い言葉だ。マストに登った見張り兵が気勢を上げると男も女もストレートのラムを飲み干した島の民族は万国共通酒に強い。10月末、ハリケーンの合間をぬって行われるケイマン諸島のパイレーツウィーク。普段はスーツ姿の銀行員や、デューティーフリーブテイック勤務のきれいどころ、礼儀正しいホテルマンもディズニーランドの「カリブの海賊」そのまんまの扮装に身を包み、思い切りはめをはずす「海賊祭り」が始まる。


この島では海賊は極悪非道の賊ではない。普段は百姓して畑を耕し、漁師として暮らしながら、中南米の先住民から搾取を行っていたスペイン軍の侵略があった時のみパートタイムで戦う、誇り高い祖先たちなのだ。歴史のない島だが、ジャングルには海賊が財宝を隠したとわれる洞窟がいくつもあり、海賊の墓、海賊の要塞、砲台の跡なんかもあちらこちらに残っている。スチーブンソンの「宝島」のモデルになった島というからホンマもんなのだ。カリブ海ではどの島でもたいてい海賊遺跡があり、マジで「先祖は海賊」と自慢しているから驚く。

62'年に隣島であるジャマイカが独立し、島国によくある他国に支配はされていないがビンボーだという現状に対し、ケイマン諸島は英国王室領としてとどまることを選んだ。本土から数時間で行ける「アメリカの沖縄」として安定した観光業と、英国から授かったタックスヘブンの利点を生かした銀行業で、カリブ海一の生活水準と治安の良さを保っている。タックス天国=税金がない!4年間マジで所得税も住民税もなかった。額面=手取り。うらやまし〜い!!でしょ?そのかわりどさくさにまぎれて観光客にがんがん税金かけてそれで食ってる。自治権はあんまりないけど特に不満もないし、そこそこもうかっており「独立」の二文字はこの 先100年は出そうにない日和見〜な島。一方では、カリブ海のオフショアバンキングの拠点として500以上の銀行がペーパーカンパニーを置き、かの○○証券の「飛ばし」をやっていた島として最近日本の新聞も賑わせた。しくみはよく知らないが、ケイマンに支店の住所を置くだけでうさんくさい金が法律上,、表沙汰にならないというもの。都銀はもちろん全銀行、○○証券もありました。社員もいなけりゃオフィスも電話もないけど。トム・クルーズ主演の映画「法律事務所」の舞台として描かれたように、中南米マフィアのマネーロンダリングが行われているというのも、あながちフィクションではないかもしれない。ホンマもんのうさんくささ。こうして「隠されたお宝伝説」はちゃんと現在も息づいている。

祭りの話に戻ろう。パイレーツウィークは伝統的な祭りではなく、観光促進の目的でここ10年くらい前に始められた「村おこし」の祭りだ。そこまでやるか....と思うほど、大人も子供も祭りが近づくと衣装作りに熱中する。男は色とりどりの羽かざりのついたつば広帽にアンティークの剣やオモチャの拳銃を腰にさしている。酔っぱらって路上で剣を振り回してたり日光江戸村に来たみたいで笑える。女はボロボロにわざと破った網タイツ、ロングドレスの裾をワイルドに半分たくしあげ、えっちにキメるものらしい。そして敵から奪い取った財宝のネックレスを山程かけるのが海賊スタイル。極彩色の生きたオウムを肩に乗せている片目義足のキャプテン「黒ヒゲ」もいる。ツーリストが仮装に参加したければ、当日現地でも売っている。
どさくさにまぎれてakubiにさわるこのオジは
お祭り実行委員会会長さん


祭りは仮装でキメた「お祭り実行委員会」の面々が乗り込んだ2艇の観光用海賊船がジョージタウン港に入港するところから始まる。港を埋め尽くした2万人の観衆に向かって、ホンマもんの大砲をとどろかせながら海賊船が接岸すると、迎え撃つのはイングランド提督軍だ。チャンチャンバラバラなバトルの後、毎年お決まりのストーリーで、政府提督が負けて海賊に縄でぐるぐる巻きにされると、歓声がいっそう高くなる。この提督、本国から派遣されている提督本人が仮装しているというから驚く。ケイマンでは「海賊の勝利」が島民の勝利なのだ。いつだが沖縄の祭りの衣装を見たケイマニアンの友人が「あれは日本の海賊だねぇ」と言っていたが、沖縄でもぜひこのテの祭りを開いて、太田知事あたりに橋龍をぐるぐる巻きにしてもらいたいものだ

その頃、私は沖に停泊した会社のボートに立ち、ポンプ式水鉄砲をかまえていた。島中の約50艇のダイブボートやクルーザーが海賊の扮装をしたスタッフを乗せて、恒例の大バトルを繰り広げていたからだ。この戦争もけっこうマジだ。武器は水鉄砲、放水ホース、卵、水の入った風船など。見事相手のボートを乗っ取って、よその会社を捕虜にした方が勝ち、だ。戦いが終わった後、全員で海面に散らばった風船やゴミを網ですくい上げるのも恒例行事。本当のカリブの宝は美しいサンゴ礁と、子供のように陽気なハートだということを、現代の海賊たちも知っている。




地球の反対側ケイマンから帰ってきてはや2年になろうとします。
「ご近所カリブ」を開設してから様々な方から、あたたかい感想や励ましのメイルをいただきました。
この巻はいちおう「ご近所」の最終章。
akubiも無事日本に社会復帰したということで、カリブ育ちの看板を忘れずのほほ〜んと
またどっかでお会いしたいです。ほんっとに 心から ありがとう〜