相栗峠にて 貞光町・美馬温泉


 GWにわずか4日間の帰省。これでは正味2日しか遊ぶ暇がないではないか。前後は移動で潰れ
てしまうからね。まったくシケた会社だと思う。多くの取引先は軒並み9連休というゴージャスな
GWを謳歌しているというのに。それがフツーなんだよ。ヘッポコ社長殿。
 でもまあ、自転車には週に1日乗れれば十分だと小生、つね日頃から思っとるのでありまして、
一泊する場合はともかく、連チャンで出かける甲斐性はワシには無かったりする。

 今回は去年同様、ワンパターンだが四国に渡ることにした。瀬戸大橋線の茶屋町駅から輪行して
坂出へ30分。いつも感じることだが、四国は近くて本当にいい。
 コースとしては、坂出をスタートして阿讃山脈を越え、汚職県徳島との国境を跨ぐ。ツーリング
マップルを眺めていたら【車の通った形跡なし。超静寂】とか書いてあって、その道に興味を引か
れたのだ。剣山の北麓側に位置する。

 坂出を出発してしばらく行くと酷道193号で、塩江(しおのえ)温泉まで走る。走っていて楽
しい道ではないが、この酷道しかないのだ。道幅狭く大型車バンバン。時々悲鳴を上げる。次回は
何としてでも抜け道を探しとかにゃアカンなぁ〜。とか考え事をしながら走っていたら行き過ぎて
しまい20キロの骨折り損と相成った。
 塩江温泉から県道に分岐し、570mの相栗(あいくり)峠越えだ。この峠道は行き交う車が多
少あるけれどストレスになる程ではない。細くて静かで傾斜も許せるレベル。★★★を差し上げち
ゃいましょうかね。(ちなみに最高は★★★★★。つまり、まあまあの道)
 そんなに標高差が無いから簡単に峠に着いた。ここから竜王山(1060m)への登山道が伸び
ていて、駐車場やトイレが置かれている。
 相栗峠から汚職県側に降りる。この道が細々として、これまたエエ感触だった。美馬温泉では多
数のコイノボリが風に靡いてたりね。汚職県側からアプローチするのも一興だろう。
 四国の東の名峰剣山へは貞光町から酷道438号に入って一
本道だ。幅員狭し。マイカー多し。大型車多し。どひゃあ〜。
まさに悲鳴もの。剣山に行くのは大変やでぇ〜。たぶん行かん
と思うが・・・。
 せっかくの機会なので、地図に載っていた東福寺という小寺
に寄って一息入れさせてもらうことにした。
 酷道から外れて山に分け入った高所に小寺が佇んでいた。も
とは麓にあって、何かの理由でここに移転したらしい。カエデ
の新緑が白壁に眩しく映える。この季節のお寺って素敵だな。
 お参りしようとしたら和尚がセッセと掃除しているのが目に
入り、山門の外で合掌して下山したのだが、雰囲気のいい寺だ
った。その山門は明治時代の建立で比較的新しいが、どっしり
とした和様の造りだった。
東福寺仁王像
 端山というところが「超静寂」なる山道への分岐点だ。この辺には似つかわしくないコンビニが
あるのですぐに分かる。道はだんだん細くなっていく。細い道が益々細くなる。ワクワクものだ。
 そのうちT字路が出てきて、まっすぐ行くべきや、それとも地図の方角通り行くべきや? 地図
の指し示す方角には、朽ちかけた小さな橋が架かっている。その先は薄暗い道が森の中に続いてい
るのだが・・・。せっかくやってきたのに、ここで挫けるわけにはいかないと思って危なげな橋を
渡った。
 すぐに激坂となり、汗がポタポタ落ち始めた。この道がとても心細い。唯一の救いは賑やかな小
鳥のさえずり。これが冬とかだったら、まさに【超静寂】なる奥の細道だな。なんて独り言を呟き
ながらヘコヘコ上っていくと、あまりにも唐突に集落が開けるのだった。今まで民家を一軒も見な
かったのに、これは一体ヘンタイ!?
山の斜面にへばりつく民家
平地の少ない四国山間部には、こんな
景色が普通に見られる。
 山の急斜面にへばりつく民家。家賀(けか)という地名だ。
 これって、どう見たって平家の落人部落だよね。大きな集落
でありながら店らしき構えの家も無し。たぶん自給自足を営ん
でいるのだろう。人っ子ひとり見かけないというのも怪しさ満
点。ちなみにワシは源氏の末裔と自称しており、平家とはソリ
が合わない。家系を遡れば、八幡太郎義家どころか、卑弥呼に
までたどり着くというウワサ。
 落人部落を過ぎるとコンクリート舗装となった。更に道は細
く細く・・・す、すごいゼ平家の隠れ里!!【車の通った形跡
なし】というのは本当だ。
 その先も上りは続き、ついに舗装は途絶え砂利道になった。
通常、こういう状況の先にあるものと言ったら、経験法則とし
て道が途絶えて藪に突入するか民家の庭に突入するかのどっち
かである。
 だが違った。崖じゃー!!! アブネー。もしこれが下り坂
なんかだったら、勢い余って崖から転落していたところだ。さ
すがは平家の落人部落。どんな仕掛けが待ち構えているか分か
らない。むぅ〜。ここは退散つかまつろう。
 再び朽ちかけた橋のたもとに戻る。とんだ道草を食ってしまった。今度は橋を渡らず真っ直ぐに
行ってみる。が、やっぱり別の落人部落に抜けてしまうのだった。しかも今度は枝道がやたらと多
い。地図には、そんな道など一切記されていない。なむさん。一番平坦そうな道をセレクト。する
と、すぐに上り始めて激坂となった。きゅい〜〜ん!
 しかし男が一旦選んだ道。是が非でも切り抜けてみせるゾ。てなことでヘコヘコ上っていると、
前方から、腰が曲がって杖をついた白髪三千丈のオニババが、猛犬多数を従えてこっちに向かって
きた。きゅい〜〜ん。しかし男が一旦選んだ道。是が非でも切り抜けてみせるゾ。ぶるるるるう。
 猛犬に吠え立てられる中、激坂をツールドフランス並みの猛スピードで駆け抜けた。もう後戻り
はできまっしぇ〜ん。
 更に上りは続き、舗装は途絶えて砂利道になる。通常、こういう状況の先は、経験法則として道
が途絶えて藪になるかガケから転落しそうになるかのどちらかである。だが違った。民家の庭先に
突入したのだった。がー。もう、いななく気力も無し。足も死にかけている。
 オニババと数十匹もの猛犬への恐怖心を抑えながら、来た道を下っていくと、さっき見たばっか
のオニババも猛犬も、影も形も無く消え失せていたのだった。さすが平家の落人部落のフシギ。
 すごすごと再び貞光の町中に降りる。この吉野川中流域では
「ウダツの町並み」が有名で、近年は、ちょっした観光地とし
て売り出している。ウダツの上がらないワシへの当てつけとし
か言いようがない町並みと言える。有名な脇町のそれと違って
貞光のウダツは二重ウダツが特徴とされている。格別の財力を
誇示しているわけだな。
 ちなみにウダツというのは、火事に際して延焼を防ぐための
いわば防火壁のようなもので、ビンボー人には造ることが出来
ない。「ウダツが上がらない」という表現をよく使うが、その
語源とされる。
 まあワシの場合、そんな町並みよりも、貞光映画劇場のポス
ターの方に目が行った。男なら誰しも目が行くことだろう。今
や、こんな素敵なモッコリポスター、神楽坂でも見れない。昔
は、どこの田舎に行っても大抵貼ってあった。モッコリポスタ
ーの衰退と相まって少子化が進行していく。困った世の中だ。
貞光町にて
 予定ではこの先、大滝寺(標高は千メートルある)で厄落としをして帰ることにしていた。正直
言ってワシは本厄である。でも、もうそんな足も時間もねーだよ。とは言え、どっちにしたって阿
讃山脈を越えなきゃ帰ることが出来ない。自暴自棄で登ってやったわ。ぐわっはっはー。おかげで
足は完全に死んだ。
 お寺はパスし尾根道伝いに再び相栗峠に出た。そして塩江温泉に下って坂出まで。この死んだ足
でよーも走れたものだと、我ながら感心した。
 厄落としは失敗に終わったが、また夏休みにでも再トライしてみようか。今回諦めた【超静寂】
なる道。今度は逆から攻めればエエのじゃ。

【走行年月日】2002年 4月27日(日曜日)
【 ルート 】坂出→塩江温泉→相栗峠→貞光→脇町暮畑→相栗峠→塩江温泉→坂出
【 走行距離 】180キロ
【 車 種 】ロード
【 同行者 】単独

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