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 1993年の南アフリカ 

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No.5 1993年9月

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 《今月の主な掲載内容》

1.「暫定執行評議会(TEC)」設置草案に合意
 この時期に、南アフリカのニュースは、先月と同様あまり日本で報道されていません。
 来年4月27日に初めて全人種が参加して行われる選挙の現政権と黒人組織などの共同統治機関となる「暫定執行評議会(TEC)」設置草案に合意し、一歩前進しました。
 この草案は、実質的には、現白人政府のデクラーク政権と南ア最大の黒人解放組織、アフリカ民族会議(ANC)が主導して作った妥協案に他の組織が信任を与えたもので、合意は多党間会議参加政党・団体23のうち19が賛成しました。インカタ自由党(IFP)は、こうした交渉の進め方が将来の新南ア政権でANCの権限を強化するものとして強く反発していました。
 ボイコットしている南ア最大の黒人部族、ズールー人を基盤にしたインカタ自由党(IFP)がどう出るかに関心が集まっていました。

2.無差別テロ続発
 黒人右派勢力インカタ自由党(IFP)、白人保守派など、民族の住み分けによる独立国家を目指す勢力が、民主化プロセスが進展するたびにテロ事件を展開し、1か月間の死者が約600人に上る「内戦」規模の闘争が続いている、と報じられています。

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 《独立国家について》

インカタ自由党が目指す独立国家とは、ナタール州にあるズールー王国に国家なみの自治権を与えるというもので、完全な独立国家を目指すものではありませんでした。ある意味において、アパルトヘイト時代にあったホームランドに自治権を強くしたようなものです。

以前にも書いたかもしれませんが、インカタ自由党は選挙の直前に選挙参加を表明しました。投票用紙にはインカタ自由党の党名が入っていませんでしたので、投票用紙にインカタ自由党のシールが貼られました。

このインカタ自由党の参加は、デクラーク大統領(選挙前)とズールー王国設立の密約があったと選挙後に報道されました。
デクラーク大統領の国民党とインカタ自由党の両党とも、ANCの単独政権化を阻止しようという試みがあったというのです。

内閣は得票率によって各党から選出され、連立内閣になるのが決まっていました。
第1党にはANCが予想され、大統領にはANC議長のマンデラ氏の就任がほぼ確定していました。
副大統領2名については得票率によって決まることになっていました。
副大統領の1名は、ANCが第1党になりANCから選ばれることがほぼ確定されていました。
2人目の副大統領は、第1党が3分の2以上の得票を得れば第1党から、もし3分の2以下の場合は、第2党から選ばれることになっていたのです。

インカタ自由党が選挙に参加、不参加にかかわらず、第2党はデクラーク氏の国民党が予想されていました。もしインカタ自由党が選挙に参加した場合は、インカ自由党は、第3党が予想されていました。

国民党としては、インカタ自由党を選挙に参加させることによって、ANCの3分の2以上の得票率を阻止したかったのです。
一方、インカタ自由党にしても独立国家を目指し、ANCの単独政権化を阻止するためにはデクラークの国民党と組まざるを得なかった背景があります。
選挙結果は、ANCの3分の2以上の得票率を阻止して、国民党のデクラーク氏が第2副大統領に就任しました。

選挙後、ズールー王国設立の話はしだいに消えて行きました。
その後、デクラーク副大統領は辞任しました。
その背景には、選挙後の南アフリカが大きな乱れもなかったかも知れませんが、副大統領から辞任したほうが、国民党の意見が国会で発言しやすいと判断したのかもしれません。

ともあれ、他のアフリカ諸国とは異なり、全人種平等の路線を貫いた、「マンデラ大統領は偉大だった」との一言かもしれません。
私の南アフリカ滞在時、あまりにも黒人を優遇する法案ばかりが作られるとの批判はありましたが、マンデラ大統領を悪く言う白人は、私のまわりにはいませんでした。

選挙後、独立国家の話しで話題をふりまいたのは白人右派の方であったかも知れません。プレトリアから少し東に行った地帯にホームランドを作るという話題が頻繁に新聞に報じられました。

このような独立国家(ホームランド)の話しを書いていますが、私の読んでいた南アフリカの新聞は白人向けの新聞でした。黒人向けの新聞には、ズールー王国設立の話題がたくさんあったのかもしれません。

(この内容は、私の記憶だけで書いていますので、理解不足等による大きな間違いがあるかもしれません)

アパルトヘイト時代のホームランド
白い部分がホームランド
LESOTHOとSWAZILANDは南アではありません

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《南アフリカのニュース》
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南ア「民主化」前途なお険しく
「暫定評」合意  黒人間の衝撃激化  保守派も闘争強化

【ヨハネスブルグ9月8日】1993.09.09読売

 南アフリカの多党間会議(23政党・団体)が7日、来年4月27日に初めて全人種が参加して行われる制憲会議選挙までの現政権と黒人組織などの共同統治機関となる「暫定執行評議会(TEC)」設置草案に合意し、南アはアパルトヘイト(人種隔離政策)後に向け、また一歩を踏み出した。だが、「新生南ア」への枠組み作りが進む一方で、黒人間の衝突は激化、また現交渉反対派が反対闘争強化を宣言するなど南ア情勢は不安定化しており、TECが安定した移行体制作りに寄与できるか、まだ保証はない。
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TEC設置を具体化した南アでは今、南ア最大の黒人部族、ズールー人を基盤にし、交渉をボイコットしているインカタ自由党(IFP)がどう出るかに関心が集まっている。今回の合意は多党間会議参加政党・団体23のうち19が賛成したが、実質的には、現白人政府のデクラーク政権と南ア最大の黒人解放組織、アフリカ民族会議(ANC)が主導して作った妥協案に他の組織が信任を与えたもので、IFPはこうした交渉の進め方が将来の新南ア政権でANCの権限を強化するものとして強く反発しているからだ。
 南アで続く黒人間の衝突も、主としてANCとIFP支持者間で起きている。2日には南ア各地で、こうした抗争事件に反対、平和を願う数10万人規模の集会、デモが開かれたが、警察当局などによると、2日から7日までに少なくとも83人が抗争で殺された。合意を急ぐANCにIFPが反対闘争を強化した結果と見られる。
 一方、白人保守派で、やはり交渉をボイコットしている保守党も、すでにTEC合意前の3日、「TEC設置は宣戦布告である。内戦を引き起こすだろう」とこれまでになく強い警告を出していた。こうした中で、なんとかまとめられた今回の合意は、南アが抱える課題を放置したままでの「形作り」に過ぎないとの厳しい見方も。とくに、IFPはズールー人の居住地域にほぼ独立国家なみの自治権を与えることを要求しており、この先の交渉で妥協点が見つからないまま追い詰められれば、強引に独立を宣言し、南ア情勢をさらに混乱させる可能性もある。
 デクラーク政権がTEC合意作りを急いだ背景には、この設置が対南ア経済制裁解除の条件とされ、失業率46%に達した南ア経済の苦境の突破口を開こうとの意思が強く働いたとみられるが、これが現在の交渉をめぐって進む黒人、白人内の両極化を一層先鋭化させる恐れがある。

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南アで無差別テロ
銃乱射など3件連続  黒人住民31人死亡

【ナイロビ9月22日】1993.09.23読売

 南アフリカ共和国からの報道によると、ヨハネスブルグ南部の旧黒人居住区で21日夕(日本時間22日未明)、マイクロバスに乗った武装集団が大通りで通行人、運転中の市民などを無差別に銃撃し、18人が死亡、25人が負傷した。同地区の他2か所でも、同様の無差別テロ事件が相次ぎ、同日夕までの死者は少なくとも31人に上り、犠牲者はすべて黒人住民だった。
南アでは現在、国会が、来年4月の全人種参加制憲議会選挙まで少数白人政権を監視する暫定執行評議会(TEC)の設置の法案を審議している。
南アでは、TEC設置に反発する黒人右派勢力インカタ自由党(IFP)、白人保守派など、民族の住み分けによる事実上の独立国家を目指す勢力が、南ア全体の民主化プロセスが進展するたびにテロ事件が展開。1か月間の死者が約600人に上る「内戦」規模の闘争が続いている。TEC法案は、今月末に国会を通過する予定だが、テロの一層の激化が懸念されている。
TEC法案の国会通過を目指す最大の黒人解放勢力「アフリカ民族会議(ANC)」幹部は、IFPの犯行とみて非難している。

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南ア暫定執行評設置法案を可決  臨時国会

【ナイロビ9月23日】1993.09.25読売

 南アフリカからの報道によると、ケープタウンで開会中の同国臨時国会は23日、先に多党間会議(23政党・団体参加)で合意した「暫定執行評議会(TEC)」設置法案を賛成多数可決した。TECは、南ア史上初めて全人種が参加した来年4月末に行われる予定の制憲議会選挙までの間、現政権と黒人組織などの共同統治機関として、自由、公正な政治環境をつくる母体となるもので、年末にも正式設置される。

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1994年選挙前の写真

選挙直前の写真かもしれない
国旗は現在の南ア国旗に似ているが...