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 1993年の南アフリカ 

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No.8 1993年12月

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 《今月の主な掲載内容》

 来年4月27日実施の全人種参加による新憲法制定会議選挙に向けて、「暫定執行評議会(TEC)」が発足しました。マンデラ議長の率いる黒人開放勢力「アフリカ民族会議(ANC)」と、デクラーク大統領の国民党にとっては、これら反対勢力の取り込みが、今後の南アフリカの安定化には欠かせない要素で、主流派と反対派の駆け引きが展開されました。

1.「暫定執行評議会(TEC)」が7日に発足
 来年4月実施の全人種参加による新憲法制定会議選挙まで、国内主要政治勢力が集まり、デクラーク現政権を監視するもので、多数派の黒人が史上初めて国政に参加、340年間にわたった南アの少数白人支配に事実上、終止符が打たれた。
 評議会の目的は、黒人が初めて参加する来年4月の選挙で、各党が平等に選挙戦を展開できることが重要な前提となる。
 非常事態宣言に対して、評議会の8割が反対すれば、政府処置に対する拒否権を持つことが可能で、現時点で参政権が認められていない多数派の黒人を含めた「国会」のように機能する。

2.一部右派白人グループが反対の意思表示のため実力行使
 ライフル銃などで武装した白人過激派約30人が同日、アフリカーナー(オランダ系白人)の中心地、プレトリア郊外にある、かっては黒人との戦争の砦(とりで)だった軍事博物館を占拠。これは白人保守派の反抗を示す「象徴的行動」で大きな混乱はなかったが、軍隊も動員され、南ア国防軍の黒人兵が博物館を包囲するなど、南アの一部白人にとっては、まさに“今後”を象徴する日となった。
 一方、黒人右派IFPなど5団体の保守連合組織「自由同盟」は、ANCと国民党に「内戦も辞さない」強硬姿勢を示してきた。

3.デクラーク大統領がANCを非難
 ノーベル平和賞受賞などの欧州訪問から帰国後、黒人開放勢力「アフリカ民族会議(ANC)」を「無神経で、恥をかかされた」と強く非難した。これは、授賞式会場で、ANC支持者がスローガンを連呼。さらに、インタビューでマンデラ議長自身までが、大統領を「政治犯」と表現したことに対するもの。

4.「白人ホームランド」設立の必要性があることに原則合意
 黒人解放組織「アフリカ民族会議(ANC)」と南ア政府は、ケープタウンで、白人右派団体「アフリカーナー人民戦線(AVF)」との最終交渉を行い、来年4月に予定される新憲法制定議会選挙で新政権が誕生した後、欧州系白人のアフリカーナーが強力な自治権を持つ「白人ホームランド」設立の必要性があることに原則合意した。この結果、これまで内戦すら辞さない姿勢で自治権拡大を要求してきたAVFは、来年4月の制憲議会選挙に参加することになった。

5.IFPは、クワズールの強力な自治権を要求
 ANCに対抗してきた、黒人右派のマンゴスツ・ブテレジ議長が率いるインカタ自由党(IFP)は、南ア政府がアパルトヘイト(人種隔離政策)の一環として黒人を一定の地域に封じ込めるために作った「ホームランド(部族別黒人居住地域)」の一つクワズールを、これまでに得た権益を保持するため、強力な自治権を要求している。
 暫定執行評議会(TEC)は、IFPの拠点であるクワズールへの軍隊、警察の派遣方針を打ち出した。派遣されれば、ANCがその主力部隊の一つになる。IFPはたちまち反発し、選挙ボイコットどころか「内戦」のカードさえちらつかせ、ANCをけん制し始めた。

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ヨハネスブルグ郊外で熱烈な支持者に
囲まれるマンデラANC議長
(雑誌から:11/27AP)

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《南アフリカのニュース》
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南ア保守派 暫定政府発足を発表「来春までに独立国家」

【ヨハネスブルグ】93.12.1共同

 南アフリカ白人保守派の連合組織アフリカーナー人民戦線(AVF)と右翼野党・保守党は29日「アフリカーナー(オランダ系白人)の利益を守るためにAVF指導部による暫定政府を発足させた」と声明を発表した。
 声明は、来年3月までに白人ホームランド(独立国家)を一方的に樹立し、独自の選挙を実施すると述べている。
 AVFも所属する保守派連合組織、自由同盟は来年4月末全人種選挙への参加をめぐって政府と交渉の真っ最中。自由同盟事務局は「暫定政府樹立について何の連絡も受けていない」としており、交渉に大きな波紋を及ぼすとみられる。

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白人支配に事実上終止符 南ア暫定執行評議会あす発足
広い権限 ANCの影響力増加

【ナイロビ=5日】93.12.6読売

 南アフリカ共和国で、現在の白人政府と共同統治機関となる「暫定執行評議会(TEC)が7日、発足する。来年4月27日実施の全人種参加による新憲法制定会議選挙まで、国内主要政治勢力が集まり、デクラーク現政権を監視するもので、多数派の黒人が史上初めて国政に参加、340年間にわたった南アの少数白人支配に事実上、終止符が打たれる。

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 評議会は、行政の中心地プレトリアに常設されるが、7日の第1回会合は、臨時国会が現在開会中のケープタウンで開かれる。
 評議会の最大の目的は、制憲議会選を公正に実できる政治環境をつくりあげること。これまで南アでは、白人支配層が警察、メディアなど社会全般を掌握してきたが、黒人が初めて参加する来年4月の選挙では、各党が平等に選挙戦を展開できることが重要な前提となる。
 具体的には、例えば政府の非常事態宣言に対して、評議会の8割が反対すれば、政府処置に対する拒否権を持つことが可能で、現時点で参政権が認められていない多数派の黒人を含めた「国会」のように機能する。権限は、治安維持、外交から選挙法の具体的運用までと広範囲な領域に及び、最大の黒人解放勢力「アフリカ民族会議(ANC)」の影響力は非常に強いものとなる。
 これまで与党国民党、ANCを中心に21政党・団体が参加、暫定憲法案を起草した多党間会議の機能も、これからは同評議会に移される。
 南アでは現在、暫定憲法案の修正も含め、ANC、政府と、これと対立する勢力の協議が連日、水面下で行われている。3日には、ANCの権限強化、集中化に反発する黒人右派勢力「インカタ自由党(IFP)」、白人保守派など5団体が組織する保守連合体「自由同盟」が政府と協議した。この結果、民族自決権や、州政府権限強化、各州憲法制定など14の問題点に関して、両者の溝は埋まってきた模様だ。
 評議会設置、ANCの影響力の増大により、評議会に参加しなかれば、選挙戦も不利になるのは確実で、反対派を主流派に取り込む「評議会設置効果」も期待されている。

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南ア 共同統治へ多難な船出
反対派が実力行使 
黒人右派も反発強化

【ナイロビ=7日】93.12.8読売

 南アフリカ共和国で、白人政府との共同統治機関「暫定執行評議会(TEC)」が7日、正式に発足した。しかし、一部右派白人グループが反対の意思表示のため実力行使に出たほか、黒人右派「インカタ自由党」(IFP)も依然厳しい姿勢を崩しておらず、同評議会にとって多難な出だしとなった。

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 南アからの報道によると、ライフル銃などで武装した白人過激派約30人が同日、アフリカーナー(オランダ系白人)の中心地、プレトリア郊外にある、かっては黒人との戦争の砦(とりで)だった軍事博物館を占拠。これは白人保守派の反抗を示す「象徴的行動」で大きな混乱はなかったが、軍隊も動員され、南ア国防軍の黒人兵が博物館を包囲するなど、南アの一部白人にとっては、まさに“今後”を象徴する日となった。
 「アフリカーナー人民戦線(AWF)」、黒人右派IFPなど5団体の保守連合組織「自由同盟」は6日、ケープタウンで、暫定憲法案の修正を審議、国民党、アフリカ民族会議(ANC)は各州ごとの民族自決権を認める譲渡を示したが、結局この日は決裂、審議は7日に持ち越された。
 反発は白人からだけではない。部族別黒人自治地域の創設に固執するIFPのスポークスマンは同日、「(今後の交渉にとって)評議会発足は絶望的な事態」と表現、ANC主導の民主化プロセスに対して反発を強めていく危険を示唆した。
 これら「自由同盟」参加団体は、これまで再三、ANCと国民党に「内戦も辞さない」強硬姿勢を示してきた。
 ANC、国民党にとっては、評議会発足後も、これら反対勢力の取り込みが、南アの安定化には欠かせない要素で、暫定憲法案を採択する今国会開会も、主流派と反対派の駆け引きが続くことになりそうだ。

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対南ア石油禁輸解除

【ニューヨーク=9日】93.12.11ロイター

サミュエル・インサナリー国連総会議長(ガイアナ国連大使)は9日、南アフリカ共和国に対する国連の石油禁輸処置が解除されたことを明らかにした。

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南ア選管委長の黒人女性

【ケープタウン=9日】93.12.11共同

 南アフリカの暫定執行評議会は9日、来年4月末の全人種選挙を運営する選挙管理委員会の委員長に、黒人女性で南ア開発銀行幹部職員のレノシ・モカテさんを指名した。
 男女を問わず黒人が南ア政府機関の代表となるのは史上初。7日の評議会発足で350年にわたる白人支配に終止符を打った南アの新時代を象徴し、黒人の政治参加を加速させる人選になった。

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受賞後も不協和音
ANC議長の「政治犯」発言 南ア大統領、非難

【ヨハネスブルグ=15日】93.12.16読売

 南アフリカ共和国のデクラーク大統領は14日夜、ノーベル平和賞受賞などの欧州訪問から帰国後、黒人開放勢力「アフリカ民族会議(ANC)」を「無神経で、恥をかかされた」と強く非難した。
 これは、授賞式会場で、ANC支持者がスローガンを連呼。さらに、インタビューでマンデラ議長自身までが、大統領を「政治犯」と表現したことに対するもの。

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南ア 「白人ホームランド」認める
ANCと政府 白人右派と原則合意

【ケープタウン=20日】93.12.21読売

 南アフリカ共和国の黒人解放組織「アフリカ民族会議(ANC)」と南ア政府は20日、ケープタウンで、白人右派団体「アフリカーナー人民戦線(AVF)」との最終交渉を行い、来年4月に予定される新憲法制定議会選挙で新政権が誕生した後、欧州系白人のアフリカーナーが強力な自治権を持つ「白人ホームランド」設立の必要性があることに原則合意した。この結果、これまで内戦すら辞さない姿勢で自治権拡大を要求してきたAVFは、来年4月の制憲議会選挙に参加することになった。
 ANC,AVFの共同声明によると、両者は、アフリカーナーの民族自決権を尊重することで合意した。アフリカーナーの「ホームランド(民族別居住地域)」については、これまで秘密交渉などで、行政首都プレトリアを中心としたトランスバール州東部周辺地域とする方向となっているが、具体的な州境界線設定は「今後の協議事項」となっている。
 南アでは、全人口の1割強に当たる約350万人がアフリカーナーで、これらは、多数派黒人に参政権が認められても、白人居住地域設立、中央政府の介入に対する州政府の強大な権限などを求めてきた。

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暫定憲法採択後の南ア
反対派の選挙参加焦点 政府、ANCギリギリの交渉

【ケープタウン=23日】93.12.24読売

 南アフリカ共和国の3人種別会議は22日、来年4月27日実施の全人種参加による憲法制定議会選挙の前提となる暫定憲法案を賛成237、反対45で採択した。
 デクラーク南ア大統領は閉会演説で、89年の就任直後から進めてきたアパルトヘイト(人種隔離政策)改革について、「正しい選択だったと一層強く確信した」と自賛。さらに「われわれは、すべての国民が平和に暮らす新生南アを目指す」と締めくくった。
 最大の黒人開放組織「アフリカ民族会議(ANC)」主導での暫定憲法採択に対し、白人、黒人双方の反対派は反発しているが、来年1月上旬から、「白人ホームランド(白人自治地域)」や、地方州権限問題などについて、ANC、政府との交渉が再開される予定で、今後は、両者がこれらの問題で合意、憲法修正を加えた上で、来年4月27日の新憲法制定議会選挙に参加するかが焦点になる。
 南ア経済紙「ビジネス・デー」は23日付社説で、反対派の一部から出ている内戦開始警告は「からいばり」とし、今後の交渉の最終合意期限(1月24日)を守らなければ、反対派が全勢力参加の選挙に「おいていかれるだけだ」と警告した。政府、ANCは、混乱回避、完全な全勢力参加での選挙実施を目指し、ぎりぎりまで妥協の余地を探る方針だという。

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対保守派交渉暗礁に ANC 攻防長期化の公算

【ケープタウン=21日】93.12.22読売

 南アフリカ共和国政府と黒人開放組織「アフリカ民族会議(ANC)」は21日、ケープタウンで、来年4月実施予定の全人種参加による新憲法制定議会選挙のため、現在の民主化プロセスと同選挙参加に反対してきた白人・黒人の保守派連合組織と、作業部会での本格交渉を行った。しかし、保守派は、アフリカーナー(欧州系白人)の民族別居住地域に関する諸権利が、今国会で22日採択予定の暫定憲法案に明記されない点などに反発。交渉は一転して暗礁に乗り上げ、「アフリカーナー民族自治権」をめぐる両勢力の攻防は長期化しそうだ。
 ANCは21日、国会開催地ケープタウンで行われた、南ア政府を交えての保守派連合組織「自由同盟(FA)」代表との作業部会の進展踏まえ、ヨハネスブルグで同日、FAの主要参加勢力である白人右派団体「アフリカーナー人民戦線(AVF)」と、前日の「白人ホームランド(民族別居住地域)」創設に向け原則合意書に署名するはずだった。しかし、作業部会は、「この問題の審議は、保守派の選挙参加が前提」とするANC、南ア政府と、国会で大詰めを迎えている暫定憲法案に「先に修正を加えるべきだ」とするFAが、本論に入る前から紛糾した。この結果、AVF合意書署名を拒否。指導者のフィリューン議長は「主張が十分に検討されていない」と不満を述べた。

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修正交渉は先送り 南ア暫定憲法案 採択へ
4月選挙へ本格始動  白人支配、完全に終止符

【ケープタウン=22日】93.12.23読売

 南アフリカ共和国の三人種別会議(白人、カラード、インド系の三人種で構成)は22日、暫定憲法案に関する審議をすべて終了、同日中に法案を採択する。この日は、南ア史上最後の白人優位議会となるもので、法案を採択することは確実。これにより来年4月27日実施の全人種参加による新憲法制定議会選挙に向けて、南アは本格的に動き出す。しかし、22日未明まで続けられた憲法案に反対する白人保守派と政府などの交渉は来年1月まで解決を先送りされた。
 暫定憲法案審議は11月から1か月間を費やして行われ、「ぜひとも現国会の最終承認を得て、選挙戦に入りたい」とする最大の黒人開放勢力「アフリカ民族会議(ANC)」の意向により、国会、各委員会で、修正案は最小限にとどめられた。
 暫定憲法案は全人種平等、立法・行政・司法の三権分立、連邦制(全国で9つの州を予定)導入を柱としている。これにより、アパルトヘイト(人種隔離政策)の名のもとで約340年以上にわたった白人支配は法的な根拠を完全に失う。
 採択では、「白人ホームランド(民族別居住地域)」設立問題、地方の自治権拡大要求などで、白人右派保守党などが棄権すると見られる。
 デクラーク大統領は同日午後、白人中心の国会で最後になると見られる国会演説を行い、これまでの成果を国民に説明する予定だ。
 国会審議と並行し、22日未明まで続いたANC、南ア政府、保守派連合組織「自由同盟(FA)」の交渉は、FAが要求する白人自治州設立問題を中心に行われたが、協議の継続を確認しただけで、問題を先送りした。
 この日三者が確認した合意によると、今後の交渉は、来年1月24日を最終期限とし、これまでの間、ANC、国民党とFA参加団体は、「アフリカーナーの民族自決権」、地方州の権限などについて、さらに協議を積み重ねる。
 このため、両者の交渉の進展次第では、政府が、国会を1月以降に再度召集、今回採択する暫定憲法にさらに修正を加える可能性もある。

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越年する課題 混迷する世界から <10>
新生・南アフリカ
激化する黒人内抗争 
初めての選挙 答え出せるか

【ケープタウン】93.12.24読売

 「すべての政党、組織は、現状を維持しようとしても、もはやできなくなっていることは了解しているはずだ」。22日、南アフリカ最後とされた白人優位議会で、全人種平等をうたう暫定憲法案が採択された後、デクラーク南ア大統領は、こう語った。
 大統領の言葉は明らかに、自分たちの権益を守ろうと暫定憲法に反発し、来年4月に予定される制憲議会選挙ボイコットの姿勢をみせる白人、黒人右派勢力に向けられたものだ。暫定憲法作りの主導権をとってきた政府と南ア最大の黒人開放組織、アフリカ民族会議(ANC)は、暫定憲法採択直前まで、白人右派の説得を続け、何とか交渉継続の合意は得た。だが、黒人右派との交渉には、解決の見通しがない。
 この黒人右派の代表が、ANCに対抗してきたマンゴスツ・ブテレジ議長が率いるインカタ自由党(IFP)だ。
 IFPは、南ア政府がアパルトヘイト(人種隔離政策)の一環として黒人を一定の地域に封じ込めるために作った「ホームランド(部族別黒人居住地域)」の一つクワズールを本拠地とし、これまでに得た権益を保持するため、強力な自治権を要求している。
 南ア議会は今月中旬、ホームランド廃止を決めた。制憲選挙までの暫定統治機構として設置された暫定執行評議会(TEC)は、IFPの拠点であるクワズールへの軍隊、警察の派遣方針を打ち出した。派遣されれば、ANCがその主力部隊の一つになる。IFPはたちまち反発し、選挙ボイコットどころか「内戦」のカードさえちらつかせ、ANCをけん制し始めた。
 そうした中、ANCとIFP支持者の衝突は続き、旧黒人居住区の荒廃は止まらない。ヨハネスブルグ郊外のカトルホン地区から逃げてきたという溶接工、シーポ・ムティアネさん(36)は、「親類、隣人が殺された。住民は夕方から外出できず、無人地帯が広がっている」と話した。
 世界に例を見ないものだった南アの白人少数支配はすでに終わり、来年には黒人主体の政権が誕生するのは確実だ。黒人内の抗争は、その誕生が近づくほど、新生南アの主導権をめぐる権力闘争の様相を強めてくる。
 この抗争を目の当たりにしてきたムティアネさんは、「黒人、白人双方の穏健派が多数を占める政権を望む」といい、さらに選挙では生活を良くしてくれる党を選ぶと語る。
 南ア総人口3600万人のうち75%以上を占める黒人は、アパルトヘイト下で白人とは比べものにならないほどの貧しい生活を強いられてきた。来年4月、初めての選挙権を行使する黒人の多くが、ムティアネさんのように、豊かな暮らしへの願いを込めて一票を投じるのは間違いない。その一部には、黒人政権が誕生すれば、これまで白人のものだった豪邸に一夜にして住めると言う者さえいる。
 ANCのマンデラ議長は白人政権との反アパルトヘイト闘争に勝利し、暫定憲法も手にし、「新生南ア」をうたいあげた。選挙後には「新生南ア」の初代大統領に就任する可能性が高い。だが、彼も、黒人内の抗争にも、黒人が求める豊かさにも、まだ回答を出していない。

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1993年12月の写真

 

1879年の白人との戦いに勝利した記念日を
祝うIFP支持者
(雑誌から:12/16ロイター)