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 1994年の南アフリカ 

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No.13 1994年4月 (2)

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 《今月の主な掲載内容》

 4月26日から行われる全人種参加による初の制憲議会選挙まで間近に迫った。

 デクラーク大統領(国民党=NP)は18日、選挙への参加を拒否していた黒人保守派、インカタ自由党(IFP)のブテレジ議長と首都プレトリアで会談し、IFPの選挙ボイコットが回避された。

 アフリカーナー(欧州大陸系白人)政党「自由戦線(FF)」は23日、プレトリアで、政府(国民党=NP)、および選挙後に大統領就任が予想されるマンデラ議長の「アフリカ民族会議(ANC)」との間で、選挙後のアフリカーナーによる民族自治政体交渉について合意し、調印した。
 FFは白人自治国家(白人ホームランド)の樹立を主張していた。このホームランド問題は、その後1999年頃まで、プレトリアの東部が候補地だと新聞に何度か掲載されたが、いまだに樹立されていない。

 IFPは黒人最大のズールー族が母体で、ブテレジ議長の指導の下、憲法でクワズールにズールー王国地位保証を要求していた。
 選挙後に、デクラーク大統領とブテレジ議長の間で、「ズールー王国設立を認める」との密約があったと新聞に掲載された。
 しかし、第2党になることが予想されたNPのデクラーク大統領が、ズールー王国設立を約束できるわけはない。IFPが選挙に参加することで、ANCがただ1党で新憲法を採択できる下院400議席の3分の2以上の議席を獲得を阻止することができた。IFPとしては選挙に参加して、選挙後にNPの協力を得る方が有利と判断したのかもしれない。

 IFPの選挙参加で政治的暴力事件の減少が期待されたが、ヨハネスブルクや東部ナタール州のズールー族のホームランド(黒人居住地域)などで、ANC支持者と対立するIFP支持者の衝突が多発して死傷者がでた。
 また、選挙ボイコットの極右アフリカーナー組織「アフリカーナー抵抗運動」(AWB)は妨害工作の激化を示唆するなど、不気味さを漂わせていた。

 当時、ヨハネスブルク(サントン)に滞在していた日本人の方たちは、緊急の事態に備えて、いつでも国外脱出が出来るように航空券などを所持していたそうです。
 当時、白人の知人からの連絡によれば、イースタントランスバール(ヨハネスブルクの東部)の田舎町では、ヨハネスブルクやクワズールの騒ぎは嘘のように、これといった大きな騒ぎもなく選挙の日を迎えたそうです。

 当時のNHKテレビのドキュメンタリー番組が、今でも記憶に残っています。
 ヨハネスブルクの遥か東方、モザンビークとの国境近くにバーバートンという、アフリカーナーの大きな農場のある町があります。アフリカーンス語訛りの英語で、「農園が黒人政権に取られるぐらいなら死ぬまで闘う」と言って、バリケードを築いて銃を持っている農場主の姿が放映されました。

 余談ですが、選挙後に日本のドキュメンタリー番組で、ある廃墟の建物が放映されました。場所は公表されませんでしたが、おそらく北西部の砂漠だったと思います。その建物跡から放射能が検出されたそうです。この建物は黒人政権になる前に南ア国内から姿を消されたのだそうです。

 有権者は2,230万人と報じられています。戸籍のしっかりしない黒人の方たちをどのように調査しっていったのだろうか?
 確か新聞だったと思うが、「自分は○年前からここに住んでいる」と言って、回りの人たちがそれを認めれば選挙権が与えられた、と書かれていたような気がする。


(新聞から)

選挙に参加する主な政党

 アフリカ民族会議(ANC) マンデラ議長が党首の最大政党。アフリカで最も歴史のある黒人解放運動組織。
 国民党(NP) アフリカーナーを中心とし、アパルトヘイトを導入、確立したが、党首デクラーク大統領が撤廃を表明した。
 パンアフリカニスト(PAC) ANCから分派した黒人急進改革派で、黒人への土地返還を主張。マクウェツ党首。
 自由戦線(FF) 白人右派連合から脱退した元国軍参謀総長フィリューン党首が結成し、白人自治国家の樹立を主張。
 インカタ自由党(IFP) 黒人最大部族、ズールー族が主体で、ブテレジ議長の指導の下、憲法でズールー王国地位保証を要求。

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《南アフリカのニュース》
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 南ア大統領 インカタ議長と会談

【ヨハネスブルグ=18日共同】94.4.19読売

 南アフリカのデクラーク大統領は18日、全人種選挙への参加を拒否している黒人保守派、インカタ自由党のブテレジ議長と首都プレトリアで会談した。
 両者はインカタの選挙ボイコット回避について協議したとみられる。

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インカタ、選挙運動開始

【ヨハネスブルグ=20日共同】94.4.19

 26日からの全人種選挙への参加を決めた南アフリカの黒人保守政党インカタ自由党は20日、本格的に選挙運動を開始した。インカタは選挙参加を決めた19日、地盤の南東部ナタール州各地にポスターを張り出し、20日の朝刊に選挙広告を掲載した。
 南ア政府とアフリカ民族会議(ANC)は20日、インカタの選挙参加を可能にするための選挙法改正案の採択を目指して多党間制憲会議を開催し、締め切られた政党登録手続きを再開する予定。

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監視団の判断受け選挙結果受け入れ 南ア・インカタ議長

【ヨハネスブルグ=21日】94.4.22読売

 南アフリカ共和国の黒人右派勢力「インカタ自由党(IFP)」のブテレジ議長は20日、本拠地ウルンディで、支持者数千人を前に、初の正式な選挙演説を行った。この中で、国際監視団が制憲議会選挙の選挙結果を自由、公正と判断したら、「個人の感情がどうであれ」、選挙結果を受け入れなくてはならない、と述べた。

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南ア、26日から制憲議会選 消える”最後の白人支配”

初の全人種参加 新憲法、5年後までに採択

 悪名高いアパルトヘイト(人種隔離政策)でかつて国際的批判の的になった南アフリカ共和国で、26日から始まる初の全人種参加の制憲議会選挙。この選挙で多数派黒人主導政権の誕生が確実視され、アフリカ大陸最後の白人支配政権が消滅するが、その歴史的な意義や選挙の仕組みなどを紹介する。

【ヨハネスブルグ】94.4.23読売

 長い間、少数白人が支配し、カラード(混血)や、インド系などのアジア人にしか参政権が認められていなかった南アで、今回選挙が大きな意義を持つのは当然だが、アフリカ全体にとっても歴史的な意義が深い。
 他のアフリカ諸国が、植民地支配を脱し独立を遂げる中、南アは、アパルトヘイトに代表される最も過酷(かこく)な白人支配体制に至った。今回選挙で、アフリカ大陸最後の白人支配政権は終わり、ブラック・アフリカでの白人支配は完全消滅する。
 他のアフリカ諸国では、独立と同時に白人は欧州など祖国に帰ったが、南アでは、支配期間が長かったため、多くの白人が土着化している。このため4分の3を占める黒人は、今後も白人など他人種との共存を求められる。
 選挙は、この直後に発効する暫定憲法を制定する「制憲議会」の代表を選ぶ。比例代表制で有権者は全国区、地方区ともに、それぞれ政党に対して投票する。各州州議会選も同時に行われる。
 暫定政府は、同議会下院議員で構成され、人種融和を図る「国民統合政府」となり、選挙から5年後までに新憲法を採択する。大統領は、選挙で過半数を制した第1党から、2人の副大統領は、原則として第1、第2党から選ばれる。
 黒人解放に最も貢献してきた「アフリカ民族会議(ANC)」が第1党になり、党首のネルソン・マンデラ議長が新大統領になるのは確実だ。このため、ANCが、下院400議席の3分の2以上の議席を獲得し、ただ1党で正式憲法を採択できる強大な権限を得るか、それとも他の政党が、ANCへの権力集中を阻止できるかどうかが注目される。
 第2党は与党国民党と見られ、デクラーク党首(現大統領)が副大統領に就任する見通しだが、他の政党も支持者を拡大しており、予断を許さない。
 また、黒人右派政党「インカタ自由党(IFP)」が、投票日の1週間前に、選挙参加を決めたことで、選挙妨害の恐れは減ったものの、選挙反対の白人極右の妨害が、依然として大きな懸念材料となっている。

白人社会 治安悪化を警戒 ”黒人政権”誕生の情勢に

 商業都市ヨハネスブルクは以前にも増して、黒人の姿が目立ち、道行く白人の顔には笑顔は見えない。ひったくりを恐れ、バッグや袋をしっかりと握り、足早に道を急ぐ。夜間は通りから白人の姿は消え、ゴーストタウンの様相さえ呈する。
 今、南アでは白人社会を中心に、治安の悪化を嘆く声を至るところで耳にする。高圧電線の塀に囲まれた郊外の高級住宅街に住む白人の一人は「我々の暮らしはまるで因人のよう」と自虐的に表現する。
 黒人主導の新政権誕生が確実な中、豊かな白人社会には恐怖感が静かに広がっている。
 「多くの黒人が驚喜するにはわかるが、これが騒乱状態につながったり、浮かれたた人々が商店の略奪行為に走ったりすると思うと、選挙後が怖いわ」と、ヨハネスブルク北部のスーパーに買いだめに来ていた白人の主婦、アンゲラ・フェンターさん(48)はいう。
 フェンターさんの隣人は、黒人の使用人の”反乱”を恐れて、家政婦を解雇した。また、比較的安全とされるケープタウンや、国外に引っ越す隣人が後を絶えず、不安な毎日だという。
 また、ヨハネスブルクのある銀行は行員に対し、文書でこう注意を喚起した。
 「収拾不能のお祭り騒ぎや報復行為が、選挙後に必ず起きる」
 「電気が切れることは確実。医薬品、缶詰だけでなく、ロウソク、ガソリン、現金なども用意する」
 「道路封鎖は、多くの車両、警察で行われる。人員が少ない封鎖は、偽警官による強盗目的なので、運転中に出くわしたら逆送してでも逃げろ」
 だが、治安の悪化などの否定的側面に一方で、80年代には考えられなかった好ましい現象も見られる。
 その一つは、国営テレビでの政治討論番組。ANCから国民党、南ア共産党、アフリカーナー右派の自由戦線(FF)、黒人急進派のパンアフリカニスト(PAC)など、主義主張の大きく異なる諸政党の代表が集い、かつての武闘ではなく、活発な政策論議を繰り広げる。時にスタジオの聴衆の笑いが起こる場面も。その紳士的な激論は、南ア社会の確実な変化をうかがわせる。
 ヨハネス郊外の南ア最大の旧タウンシップ(黒人居住区)ソウェト。一つの小さなビルの中に、ANCと国民党の事務所が壁を隔てて”同居”している。国民党はアパルトヘイトの下、黒人大衆を抑圧してきた政党。ANC支持者に囲まれ、危険はないかと尋ねると、若者の一人は「お互いに相手の立場を尊重している。私が国民党を支持しているのは、昔の人種差別政党ではない政権党だから」と語った。
 人種間の膨大な貧富の差、土地問題、テロの可能性など、新生南アの道程が平坦(へいたん)である保証はない。しかし、南アは着実に歴史的な一歩を踏み出そうとしている。

選管 黒人有権者教育 ”いろは”から詳細に

 ヨハネスブルク郊外の工業団地の一角で、選挙管理委員会が行っている「有権者教育」の一室。「私の票は本当にだれにも見られないの」と、食料品従業員のドリス・ランガさん(21)。「平気よ」と答える指導員のマディバさんも黒人だ。
 すべての黒人有権者にとっては投票は初めて。選管は、選挙の意味から、なぜ秘密投票なのか、どこに印をつけるのか、脅迫された場合は、といった点まで細かく説明する。また、この地域では、有権者の約4分の1は字が読めない。
 選管によると、指導員にあたるのは、「女性開発基金」など多くの非政府機関(NGO)。同基金だけでも2,000人が全国各地で、南アの新しい公用語となる、英語、アフリカーンス語、ズールー語など11言語により指導にあたる。
 有権者教育にかかる費用は推計2,750万ランド(約8億3,000万円)だ。
 一方、イン方自由党(IFP)の選挙参加が土壇場で決まった。このため、選管では投票用紙の手直しや投票所新設などの対応に追われている。
 まず問題となったのが、投票用紙。選挙委員会(IEC)では、IFPの選挙参加は絶望的と判断してIFPの政党名の入っていない投票用紙をすでに8,800万枚を印刷済みだった。再印刷には間に合わず、窮余の一策として、選管はIFPの党名やロゴ、ブテレジ党首の顔写真の入ったステッカーを投票用紙の最後に張りつける、と発表した。
 用紙はこれまで、先頭のパンアフリカニスト(PAC)から最後尾の国民党まで18政党が記載されていた。IFPは国民党の次に張られることになった。この処置で割りを食ったのは国民党。国民党は「トップになるために最後(の党)に投票しよう」という選挙ポスターを作成、数日前から街頭で張り出していたからだ。
 IFPの拠点で、これまで選挙準備ができていなかったナタール州の一部地域に500か所の投票所が必要になっり、電話回線確保などで困難も多いまま、投票日を迎えそうだ。

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選挙後の自治交渉で合意 自由戦線とANC

【ヨハネスブルグ=23日】94.4.24読売

 南アフリカ共和国のアフリカーナー(欧州大陸系白人)政党「自由戦線(FF)」は23日、プレトリアで、政府、および「アフリカ民族会議(ANC)」との間で、選挙後のアフリカーナーによる民族自治政体交渉について合意、調印した。

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南アでパイプラインが爆発 白人右翼テロか

【ヨハネスブルグ=23日】94.4.24読売

 南アフリカ共和国のヨハネスブルク南方75キロのオレンジ自由州サソルバーク近郊で23日早朝、石油パイプラインが爆発された。けが人はない模様。ブルームフォンテーン地区警察当局は、来週に迫った初の全人種選挙の妨害を狙った白人右翼によるテロ活動とみて操作している。

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ヨハネスブルク 爆弾で65人死傷

【ヨハネスブルグ=24日】94.4.25読売

 南アフリカ共和国のヨハネスブルク市中心部にある「アフリカ民族会議」(ANC)事務所近くで24日午前、車にしかけられた爆弾が爆発、市当局者によると少なくとも7人が死亡、58人が負傷した。
 事件の背景はわかっていないが、現場はANC事務所のほか、選挙に参加している黒人急進改革派「パンアフリカニスト会議」(PAC)事務所もあり、初の全人種参加制憲議会選挙に反対する勢力のテロの可能性が高い。ANCのカール・ニーハウス広報官によると、ANC事務所ではこの日、有権者への選挙教育が行われる予定だったという。

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ANC支持者3人殺される インカタ支持者に

【ダーバン=24日】94.4.25読売

 南アフリカ共和国東部ナタール州のズールー族のホームランド(黒人居住地域)、クワズールのウルンディで23日午後、選挙運動展開中の南ア最大黒人政党「アフリカ民族会議」(ANC)の支持者3人が、対立する「インカタ自由党」(IFP)支持者らにより殺害された。また別の政党支持者1人もIFPの発砲で死亡した。
 この事態を受け、ブテレジIFP議長は同日夜、オレンジ自由州での遊説を急きょ切り上げ、ウルンディに戻った。マンデラANC議長も同日、ズウェリテニ・ズールー王と接触、事態の鎮静化に乗り出した。
 マンデラ議長は24日、同州最大都市ダーバンのキングスパーク・スタジアムで開かれた数万人規模の選挙集会で、ウルンディの犠牲者を悼むとともに、ANCへの支持を訴えた。

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