南アフリカの古いニュース

21世紀をどう踏み出すか
第38回 貧困 (上)

援助・自助 共に努力

 12億人。1日に1ドルも稼げず、「貧困」にあると国連が推定する地球上の人の数だ。インド政府は独自に基準を設け、最新の統計基準(93−94年)では、都市部では月収264ルピー(1ルピーは約2.5円)、農村部では同229ルピー以下が貧困とされる基準になっている。その数約3億2000万人、日本の人口の3倍に達しようという数だ。
 首都ニューデリー市内も、貧困のすさまじい様が見られる。ゴートゥンプリーと呼ばれるスラムは、廃材の掘っ立て小屋が4キロにわたって並び、ここの7500人が、群がるハエの中で生活する。栄養失調のせいか、子供たちは皮膚病が目立つ。政府統計によると全国で5歳から14歳までの子供のうち半数は就学していないというが、ここではそれも大きく下回るだろう。
 こうした貧困の実情は、政府開発援助(ODA)の拠出額世界一の日本に援助の見直しを迫っている。
 日本の民間援助団体「シャプラニール・市民による海外協力の会」は南西アジアを中心に貧しい人々の救済活動を続けているが、下沢獄事務局長は「日本の援助は道路や通信設備などインフラ設備が中心」と批判、貧しい人たちが実感できる援助の必要性を強調する。日本の援助はしばしば「顔の見えない援助」で、巨額の援助が外交カードに使われていると言われる。その要因がこうした援助の仕方にあるのは確かだ。
 このため政府は、99年8月に作成したODA中期政策で、貧困対策に重点を置く方針を打ち出した。外務省経済協力局長は「これまでのODAは社会的弱者や貧困に目を向ける点で遅れていた」と認め、今後は派遣人材の育成を通じ「援助の質を高める」という。
 今年の沖縄サミットでも、参加国は貧困にある人口の割合を2015年までに半減することで合意、各国が貧困撲滅に積極的に取り組むことを約束した。
 だが、本当に15年でそれが達成されるのか。疑問の声を強い。南アフリカは金、ダイヤモンド、希少金属の世界有数の保有国。94年5月には、その富を独占していた白人少数支配に終止符が打たれ、人種融和の民主体制が実現された。初の黒人大統領になったマンデラ氏は就任演説で「全国民に正義と平和、パンと水が行き渡るようにしよう」と宣言、南アはアフリカ発展の「希望の星」となった。それから6年。黒人の失業はまだ50%にのぼり、かつて不平等と貧困の象徴だった「黒人居住区」は、今も電気も水道もなく、スラム状態から脱していない。「希望の星」の苦闘は、貧困撲滅の難しさを物語っている。
 先進国も途上国も、貧困撲滅には経済成長が不可欠という立場では同じだ。その成長を促すためには、先進国が援助を拡大し、効率的にするだけでなく、被援助国も、教育の遅れ、汚職による不公平な富の集中などの問題解決に積極的に取り組み、自助努力をすることが必要だ。そうした努力を促す援助の方法というものもあるだろう。
 南アのムベキ大統領は、9月に世界の首脳を集めて開かれた国連ミレニアム総会で「この千年で、人類が貧困と未開発を撲滅できる資本と技術を生み出したのは本当だ。だが、その能力を貧困と未開発の撲滅に使わなかったのも本当だ」と演説した。来世紀、この反省をどう生かせるるか。先進国、途上国双方が問われている。

2000.12.7 読売新聞