南アフリカの古いニュース

南ア・ムベキ大統領再任
ANC 黒人の貧困解消へ試練

南アフリカの最近の主な動き

 1989.09 ボタ大統領が退陣し、最後の白人政権となるデクラーク
     政権発足
 1990.02 黒人解放運動指導者マンデラ氏釈放。アフリカ民族会議
     (ANC)合法化
 1991.06 アパルトヘイト関連法全廃
 1993.12 マンデラANC議長とデクラーク大統領がノーベル平和
     賞を受賞。3人種国会が暫定憲法案を採択
 1994.04 初の全人種参加による総選挙を実施、ANCが大勝
 1994.05 南ア初の黒人大統領マンデラ政権発足
 1996.05 全人種平等、三権分立を柱とする新憲法採択
 1997.09 デクラーク氏が国民党党首を辞任、政界引退
 1997.12 マンデラ氏がANC議長退任、後任にムベキ氏就任
 1999.06 2回目の総選挙。ANCが大勝し、ムベキ氏が大統領就
     任
 2004.04 3回目の総選挙。ANCが圧勝

 4月14日の総選挙で選出された南アフリカの下院(定数400)は23日午後、大統領に与党アフリカ民族会議(ANC)の党首で現職のターボ・ムベキ氏(61)を再任した。任期は5年。アパルトヘイト(人種隔離政策)撤廃に伴う初の全人種参加選挙から10年、ANCは総選挙で得た約7割の支持を背に、引き続きアフリカ大陸の大国・南アのかじ取りを任された。だが、黒人の多くは貧困から脱せないままで、今後5年間はANCにとって黒人指示をつなぎとめる試練の期間となる。
 下院の再任を受けた演説で、ムベキ大統領は「国民の多くは今も極貧の生活を送っている」と述べ、「我々の社会の特徴である人種間不均衡を終わらせなければならない」と訴えた。ANC政権下で黒人と白人の経済格差は逆に拡大し、民主化とは裏腹に「経済のアパルトヘイト」は深刻化している。演説では、こうした危機感を隠さなかった。
 ANCはこの10年、「黒人解放運動」から「政権党」への脱皮を図ってきた。ネルソン・マンデラ前大統領は黒人政権への白人の不安抑制に廃心し、「新生南アの象徴として振る舞った。黒人雇用政策の拡大など、本格的な民主改革はムベキ政権に委ねられた形だ。
 ANCは今回の選挙で@住宅約140万件を建設A840万人に水道施設を供給――などと、民主化10年の成果を強調し、人口の約8割を占める黒人の支持を得た。
 だが、雇用対策までは手が回らず、黒人の失業率は48%に達した。貧困層の間で「こんなはずではなかった」との不満は拡大している。ANCの最大支持母体「南ア労働組合会議」(COSATU)のズエリンジマ・バビ事務局長は「ANCは貧困解消や失業問題で失敗した。南アの経済は今も白人エリートが支配したままだ」とANCを批判する。大半の黒人はANCの政策に懐疑的になりつつも、「アパルトヘイト時代の負の遺産を10年で解消するのも無理だ」と自らに言い聞かせて、ANCに投票したのが実態だ。
 対外面でムベキ政権は、アフリカ連合(AU)設立や、コンゴ民主共和国(旧ザイール)、ブルンジなどアフリカ各国の紛争調停に尽力し、「アフリカの盟主」の地位を固めた。16日のANC勝利集会でも、ムベキ大統領は「どんな国内問題があろうとも、国際的な責務は忘れない」と述べ、今後も積極的なアフリカ外交を続ける決意を示した。
 一方、山積する国内問題解決に迫られるムベキ大統領は21日、国内9州の知事のうち8人を新任し、全員を側近で固めた。ムベキ大統領は遊説中に見聞した黒人貧困層の窮状を目にしており、知事の人事は「国内問題の深刻さに気づいた大統領の危機感の表れ」(ランド・アフラカーンス大のアルバート・ベンター政治学部長)とされる。
 大統領就任式が行われる27日は、南ア民主化10年を祝う場でもある。だが、貧困にあえぐ黒人の間に祝賀ムードはない。黒人の関心は、「民主化10年」ではなく、「これからの国家再建」に向けられている。

2004.04.24 読売新聞(加藤氏)

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