南アフリカの古いニュース

南ア大統就任式 「差別のない社会へ」
貧富の差さらに拡大  エイズ感染530万人

アパルトヘイト撤廃後の南アフリカの各種指標の変化

 一人当たりの国民総所得  3010ドル   2600ドル
              (1994年)  (2002年)

 15歳〜24歳の識字率    83%      96%
              (1996年)  (2001年)

 平均寿命           65歳      52歳
              (1995年)  (2000年)

 南アフリカ・ムベキ大統領の2期目(任期5年)の就任式が27日、首都ルレトリアの大統領府で行われた。ムベキ大統領は就任演説で、「差別のない社会建設を完成させなければならない」と語り、引き続き民主化の深化に取り組む決意を示した。
 また、深刻な黒人の貧困問題について「南アの汚点である」と述べ、「この現状が続く限り、すべての南ア人が尊厳を回復したとは言えない」と強調した。

差別知らず 新世代に希望も

 ムベキ大統領の就任宣言式華々しく祝った南アフリカは、貧困やエイズ問題を抱え、国を取り巻く環境は今も厳しい。だが、アパルトヘイト(人種隔離政策)を経験していない新世代も社会の入り口に立ち、南アは「特異でない国」への脱皮を遂げつつある。

 ■ 置き去り
 「政府にコネがある一部の黒人は裕福になるのに、我々は置き去りにされたままだ」。ヨハネスブルク北部の旧黒人居住区に住む主婦フェイス・サンヤンさん(41)が嘆く。
 道路わきの市有地に建てた約5平方メートルのトタンの「家」に家族5人で住む。2つのベッドと質素な炊事道具があるだけで、水道も電気もない。夫は失業中で、知人のつてを頼りに塗装や大工仕事で日銭を稼ぐ。月収は平均500ランド(約8000円)。数キロ離れた商業地区には高級店が軒を連ね、白人中心の富裕層が買い物を楽しむ。
 今回の総選挙で、与党アフリカ民族会議(ANC)は約7割の支持を集めたが、「投票時、身分証明書に押されるスタンプがにとANCは職をあっせんしない」とのうわさが流れ、多くが仕事欲しさに投票した。フェイスさんもその一人だ。
 ANCのマンドラ・ドラミニ選対委員長は本紙に、「正直、票の8割は取れると思っていた」と明かす。有権者の25%、約700万人は選挙人登録自体を見送っており、ドラミニ委員長は「この数は潜在的なANC批判票」と圧勝にも危機感を募らせる。
 政府統計によれば、2000年の黒人世帯平均収入は5年前より18.80%減り、15.30%増えた白人世帯との格差は拡大した。ムベキ大統領は「南ア経済は先進国と行進国の2階建て。間に階段はない」と言い表す。
 エイズ禍も深刻だ。南アのエイズウイルス(HIV)感染者は530万人と世界最多。毎日約600人が死んでいるとされる。黒人社会の破壊度において、エイズはアパルトヘイトを上回るとさえ言われる。
 ムベキ政権は、治療薬の高価さなどを理由に、エイズ問題から目をそむけてきた。ランド・アフリカーンス大学のピーター・フーリー講師は「ANC政権が手をこまぬいているうちに、エイズ問題は手に負えなくなった」と批判する。

 ■ 変わる子供
 「南ア人はアパルトヘイトより将来について語るべきだわ」。ヨハネスブルク北郊の公立高校に通う黒人のテュミーさん(17)は流ちょうな英語でこう話す。
 「黒人を嫌う白人は今もいるけど、気にしない。今の南アには黒人にも平等の機会があるから」
 かつて黒人は実質的に就学の機会を奪われ、白人のもとで働く作法を身につけただけだった。この高校も白人専門だった。それが、今や生徒の8割以上は黒人だ。教員歴39年の教頭は「この10年で黒人の子供は大きく変わった。10年前に残っていた不安、恐怖心じゃ消え、物おじせずに自分の意見を言う」と話す。
 黒人の4割弱は14歳以下。このアパルトヘイトを知らない子供たち」が今後、続々と社会へ進出する。教育の機械が乏しく、不遇にも黙って耐えることしか知らない中年以上の黒人と違い、教育を受け、差別を知らず、自己主張できる新世代だ。
 民主化から10年。民主主義は根付き、経済面でも3%の安定成長を遂げ、通貨ランドは危機をくぐり抜けた。過去の「不の遺産」から台頭する「民主主義としての新たな10年」(ムベキ大統領)こそ、南ア民主化の真の成否は問われる。

2004.04.28 読売新聞(加藤氏)

新聞記事を勝手に掲載していることをお詫び致します