2004年12月18日 毎日新聞

世界の目 Global Views

コリン・スマッツ(南アフリカ、作家)
マレーシア化する南ア
【訳・高橋】

 70年代から90年代初めにかけて、アフリカ民族会議(ANC)は民主的な人種融和国家建設のために戦った。我々には、南アフリカ国民を隔てているものではなく、全員が共有しているものに目を向けようという信条があった。
 アパルトヘイト(人種隔離)政策によって区分されたアフリカ系黒人、私を含むカラード(混血)、インド系、白人のすべてが民主主義のための戦いに加わった。白人の権利を代表する旧国民党政権が示した反応は、悪意に満ちていた。人種に関係なく、拘留中の死や飢え、暴行、収監という目にあった。
 94年にマンデラ政権が誕生したが、差別是正処置が導入された後、得にムベキ政権になってから、人種融和の夢はうえ始めた。アフリカ系黒人への優遇処置が強制的になったのだ。皮肉なことに、ANCの政権に疑問を持つあらゆる人種の仲間たちが置き去りにされている。
 もし多くの南ア国民の権利が拡大され、貧困が解消し、職、家、教育、社会保障が付与されれば、黒人への優遇処置は悪いことではない。しかし南アでは政治家にコネのある少数が金持ちになっている。大多数は94年より貧しくなっている。
 これらの出来事はすべての人種差別が根っこにある。政府の仕事をもらいたければ、アフリカ系黒人をパートナーにして政治的コネを得る必要がある。形を変えて人種差別は続いているのだ。94年にアパルトヘイトは終わったと考えた人もいたと思うのだが。
 学者や文化人の間でムベキ政権はマレーシア政府の成功例に従っているという指摘がある。マレーシアでは英国から独立後、華人が経済を支配しているとして暴動が起きた。マレーシアの人口比はマレー系65%、華人系26%、インド系8%。政府は人種融和策ではなく、職とビジネス機会の保証を意味するマレー人優遇政策を導入した。
 南アでも人を雇う場合、まずアフリカ系黒人3人にチャンスを与え、次にカラード、インド系。白人は最後という具合だ。南ア政府は黒人優遇という人種問題に基づく政策をとることで貧困問題から目をそらせようとしている。

新聞記事を勝手に掲載していることをお詫び致します