南アフリカの古いニュース

南ア 貧困問題で対立
「真実隠そうとしている」「エリートが富を独占」

 昨年4月の総選挙で圧勝し、1党支配体制を固めた南アフリカの与党「アフリカ民族会議」(ANC)の政策を巡り、これを批判するノーベル平和賞受賞者のデズモンド・ツツ元大主教(73)とANC議長のムベキ大統領(62)が対立している。南アの「顔」でもある2人は黒人貧困問題で対立しているが、「黒人解放運動」のあり方を巡る世代間対立の側面もある。
 「私はうそつきで、貧しい人を心配するふりをする山師だと、大統領は思っているのですね」
 マンデラ前大統領に次いで国民から圧倒的な支持を得ているツツ元大主教は昨年11月末、声明でムベキ大統領にかみついた。
 ツツ氏とムベキ氏の対立は、ツツ氏が講演で南アの経済改革に言及し、「ごく一部の(ANC)エリートが富を独占している」と批判したのが発端。これに対して、ムベキ氏はANCのウェブサイトで経済改革の成果を強調し、「南アには真実を覆い書くそうとするやからが常にいるものだ」とツツ氏はなじった。ツツ氏の声明はムベキ氏の反論にさらに反ばくしたものだった。
 南ア人口の約8割を占める黒人は、1994年のANC政権誕生で政治的自由を得たものの、大半は貧困にあえいだまま。黒人の失業率は約49%、黒人世帯の収入は白人の16%、人種間の経済格差は逆に拡大している。
 ANC政権は企業に黒人の雇用優遇などを促し、「経済の黒人化」を進めている。だが、ANC関係者が富や利権を独占しているとされ、「ANCとのコネがなければ、黒人は金にも仕事にもありつけない」(黒人大学生)との不満がうっ積している。ツツ氏の発言は、黒人貧困層の不満を代弁したものともいえる。
 ムベキ氏はマンデラ前政権で副大統領を務め、1999年に大統領に就任。副大統領時代から、「人種和解の象徴」として振る舞ったマンデラ氏の陰で実務を取り仕切った。アパルトヘイト時代に国外でANC活動を続けた「亡命世代」に属し、投獄や弾圧を生き延びたマンデラ氏やツツ氏など「闘争世代」とは対照的な経歴を歩んできた。
 ツツ氏とムベキ氏の「舌戦」は、新生南アのあり方を巡る世代間対立とも言える。マンデラ氏とムベキ氏の関係も冷え切っているという。これまでANC批判はタブー視されてきたが、南アメディアにも「ANC批判を許さない風潮は危険」との論調が出始めており、ツツ氏の発言を機に黒人貧困層の不満が噴出する可能性もある。

2005.01.06 読売新聞(加藤氏)

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