2014年7月 日経新聞


南ア、スト頻発で操業リスク

進出企業、戦略練り直しも



 南アフリカに進出している企業が頻発するストライキによる操業リスクに直面している。金属業界の労働組合がストに突入して自動車などの製造業で部品の供給不足が広がり、操業停止に追い込まれている。日本企業を含め、南アはアフリカ攻略の拠点としてグローバル企業が数多く進出しているが、各社は戦略の練り直しを迫られている。

 今月15日、トヨタ自動車は南ア東部ダーバンの工場で「カローラ」などの生産を中止した。日産自動車も行政の首都プレトリアにある工場の操業を停止。南アには欧米自動車大手も進出しているが、操業を続けているのは独フォルクスワーゲンなどわずかだ。

 自動車業界の労働者がストに参加しているわけではない。部品メーカーでのストで支障が出ているためだ。自動車は南ア製造業の代表格で、昨年は27万6000台を輸出した。アフリカ向けのほか欧州や北米などへの輸出拠点としても重要な役割を担っており、影響は世界に広がる。

 ストを率いるのが最大労組の南アフリカ全国金属労働組合(NUMSA)だ。うち鉄鋼・エンジニアリング業界が今月初めにストを決行。1万2000社以上に影響が出たとみられる。南アではプラチナ鉱山労働者が6月に大幅な賃上げで合意し、ストの連鎖が起きている。NUMSAは企業側に10%を超える賃上げを求めている。

 自動車業界は昨年もストの影響で操業が停止した。「企業はこうした事業リスクを想定して、利幅を厚めに取っている」(自動車ディーラー)といい、ツケは車体価格に跳ね返っている。例えば、トヨタの「カローラ」の場合、南アでの小売価格は21万ランド(約200万円)からと、日本に比べても高価だ。

 日本貿易振興機構(ジェトロ)ヨハネスブルク事務所によると、南アには製造業や商社を中心に100社を超える日系企業が進出している。政情不安のあるナイジェリアなどより政治や経済が相対的に安定し、事業リスクが低いと判断しているためだ。各社は南アをサハラ砂漠以南(サブサハラ)に進出するための拠点として位置づけ、最近は丸紅などが大幅に人員を増やしている。

 一方、欧米企業のなかには、南ア戦略を見直す動きが出始めている。英資源大手アングロ・アメリカンは、ストの影響で4〜6月期のプラチナ生産が前年同期より4割減った。ストの影響を緩和するため、労働集約的な鉱山から機械化の容易な鉱山に開発をシフトする方針だ。

 南アでは1994年の人種隔離(アパルトヘイト)政策の廃止以降、労働組合が与党アフリカ民族会議(ANC)の支持母体となっており、影響力が強い。ただ最近は一部の黒人層が富を独占し、黒人間で貧富の差が拡大するなど、労働者の不満が高まっている。

 鉱山の労組では振興勢力が影響力を持ち始め、労組も一枚岩ではなくなっている。こうした複雑な構図が賃金交渉を難しくし、スト頻発を招いている。新興国専門の調査会社ルネサンス・キャピタルのエコノミスト、タビ・レオカ氏は「南ア事情を縮小する心理的影響は無視できなくなってきた」と説明する。グローバル企業のアフリカ戦略は過度期を迎えている。

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