南アフリカの古いニュース

制裁解除 南ア援助、拙速は禁物
意外な農産物も豊富 「非関税障壁撤廃を」

 南アフリカ共和国に対する日本の経済制裁が22日に解除されたことを受け、「南アビジネス」が本格的に動き出す。「アパルトヘイト(人種隔離)の国」「金、ダイヤモンドなどの資源大国」といったイメージの強い南アだが、知られざる有力産業、意外な農産物も数多い。カネ持ち大国の日本へ熱い視線を投げかける南ア産業界の実情を報告しよう。

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◇ワイン◇

 南アで食事した日本人がまず驚くのがワイン。味といい香りといい、南アワインはまさに世界の一級品。そのうえ値段は欧州産と比べると各段に安い。
 南ア産ワインは1655年、ケープタウンに入ったオランダ総督リーベックが初めてこの地にブドウの木を植えたことに始まる。南緯34度の豊かな日差し、気候、風土というブドウ栽培に適した環境の中、1659年にケープタウンの東パール地方にワイナリー工場が誕生、以来「ケープタウン」の名称で世界40カ国のワイン党に愛飲されている。
 南アの大手ワインメーカー、ディストラーズ社の対日輸出窓口をつとめるR・A・ハイマン氏も「ボジョレ・ヌーボーに見られるように、ワインに対する日本の潜在需要は極めて高い。制裁解除を機にぜひ試して欲しい」とPRに余念がない。すでに30年以上の輸入実績のある国分では、栽培期間中は1万ケース(1ケース=12本)だった輸入量を2−3倍にもっていきたいと期待をかけている。

◇かんきつ類◇

 「南アはレモンやグレープフルーツなどかんきつ類の宝庫。自然環境の中ではぐくまれた南ア産かんきつは健康食品でもある」と熱っぽく語るのはシトラス・エクスチェンジ社のG・T・ジョーンズ部長。同社はトランスバール州に本社を置き、南ア国内およびスワジランドで生産されるかんきつ類の生産と販売を一手に管理している。
 シトラス・エクスチェンジ社が年間に輸出しているかんきつ類はオレンジ2200万箱、グレープフルーツ540万箱、レモン160万箱。南ア産かんきつ類の特徴は害虫を駆除するのに際して農薬は使用せず、バイオテクノロジーの技術を駆使して天敵を利用している点。このため以前から安全性を重視する生協、一部販売店から高い評価を得ていた。
 ジョーンズ部長は日本に対する注文も忘れない。「植物防疫上、日本の農水省は南ア国内での低温処理薫蒸を義務付けているが、これは非関税障壁。国際的にみても船上での低温処理がルール化されており、これが認められないと輸出拡大が実現しない」。船上処理が実現すれば約3週間分の日数が節約でき、その分フレッシュなかんきつが提供できると力説する。

◇健康茶◇

 南アの最南端ケープタウンから車で北へ約4時間。クラウンウイリアムズ一帯に広がるお茶畑は、「ルイボスティー」と呼ばれる健康茶の生産基地だ。ルイボスティーは南アの南アのレストランや喫茶店のメニュー、一般家庭にはほぼ備わっている定番品で、日本でのウーロン茶と思えばいいだろう。
 ルイボスティーは各種ミネラルを豊富に含んでいるほか、成人病に効果があるとされるフラボノイドの含有率も高い。生産から品質管理までを一元化しているルイボス社のJ・バンパットン輸出部長は「日本も健康食ブームと聞いているが、それならルイボスティーだ」ウインクして見せた。
 日本では日本プロスペリティーセンター(本社大阪氏)が販売を手がけているが、「経済制裁期間中は”南ア産”と表示できず、”南部アフリカ産””アフリカ最南端の”などの表現で苦労した。今後は積極的な販促も可能になる」と期待している。

◇観光◇

 「一つの国に世界がある」――。南ア観光局が作成したパンフレットのキャッチフレーズだ。インド洋と大西洋がぶつかり合う喜望峰、ケープタウンの全景が一望できるテーブルマウンテン、野生動物の保護地サファリ、金・ダイヤモンド鉱山跡地……。まさに南アは「ベストシークレット(秘密がいっぱい)」の国といえるだろう。
 南ア観光業界も湾岸戦争の余波で観光収入は伸び悩み気味で、1−7月は前年同期比6%減となった。それだけに日本に対する視線は熱い。南ア観光局のE・ヒース・ディレクターは「日本人の海外旅行は年間1,000万人以上。このうちの1%でも南アにとっては巨大だ」。ちなみに昨年南アを訪れた日本人は6,700人である。
 アパルトヘイト廃止の動きを受け、すでに今年に入って香港のキャセイ・パシフィック航空、台湾の中華航空が南アとの定期便を設けている。日本の航空会社は現在検討中だが、直行便が就航するようになれば日本―南ア間の距離はグッと縮まり、閉ざされていた人的・文化的交流が活発化しそうだ。

1991.10.27 日経新聞

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