南アフリカの古いニュース

南アフリカ特集
鉱業偏重から脱却 産業構造を高度化

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日本の対南ア貿易の推移  (単位:百万ドル)

         1984年 1985年 1986年 1987年 1988年 1989年 1990年
      輸出 1,840 1,020 1,355 1,863 2,047 1,717 1,477
      輸入 1,611 1,844 2,229 2,259 1,933 2,035 1,843

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金価格低迷 経済に暗い影

採算割れ鉱山続出
希少金属の強み どう発揮

 ヨハネスブルクの中心部メーン街。ここにアングロ・アメリカン・ゴールド・フィールズ、ランド・マインズなどの主要鉱山資本”シックスシスターズ”の本社ビルが軒を連ねる。その中心に位置する南アフリカ鉱山会議所で、J・リーベンバーグ広報部長は吐き捨てる言った。「金価格の低迷は深刻だ。採算割れに陥っている鉱山は全体の30%にも達する」――。
 南アといえば世界に冠たる鉱物資源大国。19世紀項半にダイヤモンド、金が発見されて以来。今日まで南ア経済発展の原動力だったといっても過言ではない。産出する鉱物の種類はざっと40種類以上にも及び、その全輸出額は220億ドルの半分以上に達している。中でも最大の外貨の稼ぎ頭は金。しかし、金価格は昨年初めから低迷、南ア経済に暗い影を投げかけている。
 このところ金価格は360ドル前後(1トロイオンス当たり)。これは79年、ソ連によるアフガニスタン侵略直後につけた870ドルの半分以下という水準だ。「現在の低迷の主因は、ソ連の売り。外貨獲得を狙ったソ連の金売却量は今年だけで600トンに達している」。アングロ・アメリカンのマーケッティングディレクターのK・ウィリアム氏はこう分析する。価格低迷から9月にはランド・マインズ系の鉱山会社が閉鎖に追い込まれ、関係者を動揺させた。
 「かつては世界で最も低いコストを享受してきた南ア鉱山は、今や最も高い生産コストに苦しむようになった」と解説するのはT・メイン鉱山会議所会頭。「コスト上昇の要因は2つ。1つはインフレの進行で非熟練労働者を中心に賃金が上昇したこと。もう1つは鉱石からの回収率の低下だ。高品位鉱脈は枯渇しつつあり、地表から3000〜4000メートルといった深層部まで掘り進まないと有望な鉱脈には行きつかない」。
 ソ連のによる売却でコスト割れに追い込まれているのは金だけではない。「白金のコストはざっと400ドルだが、現在の水準は360ドル前後。ソ連売りが鎮静化しないと価格浮上の目はない」と最大の白金鉱山、ルステンブルグ・プラチナ・マインズのB・デービソン社長も思案投げ首だ。
 もっとも、南ア鉱山業の底力は万人が認めるところ。その源になっているのがファイナンシャル・ハウスの存在だ。南アで金が発見された当初から、金鉱山を開発しようという企業家たちに必要資金を貸し付けるファイナンシャル・ハウスが誕生していた。そして現在、ファイナンシャル・ハウスを支配しているのがシックス・シスターズなのである。
 南アの鉱山会社は大小あわせて数千社。このうち多くは株式を上場し、独自の経営を行っているが、一方ではシックス・シスターズ6社と経営や資本関係を持っている。6社は互いに競い合うと同じに、技術、経営、雇用などの各分野で協力しあっており、この強いつながりが南ア鉱山業を支えているといっても過言ではない。

◇         ◇

 世界的な資源大国としてまず名前が挙がるのが南ア・ソ連・米国・カナダ・オーストラリアの5カ国。だが先端技術に欠かせない希少金属に限ると、資源のほとんどが南アとソ連の2カ国に集中しているのが実情である。それだけに日本にとって南ア依存度は高く、90年の通関実績をみてもバナジウムが79%、クロムが68%、マンガンが51%などと際立っている。
 石炭や鉄鉱石も豊富だ。特に石炭は最良の無煙炭で、価格も豪州産などに比べ1トン当たり8ドル安い。石炭、鉄鉱石とも日本は経済制裁期間中は輸入を自粛していたが、制裁解除を受けて電力業界、鉄鋼業界が購入に積極的な姿勢をみせている。

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先端分野の育成進む

採自動車生産に力点

 「作業効率を上げるには、ここをこうした方が……」。南アフリカの首都プレトリアから車で北西へ約20分。ロスリンにある現地資本100%の南ア日産の工場では、黒人従業員によるQC活動が盛んだ。「当初は欠席や遅刻をチェックするだけのサークルでした」と、10年前に初めて現地に赴任した中村恵一課長は感慨にふける。「ムリ」「ムダ」「カイゼン」などの用語も日本語のままだ。
 南アの道路を走ってまず驚くのが日本車の多さ。年間販売台数33万台のうち、日本車のシェアは約50%。といっても経済制裁中は日本車メーカーが輸出を自粛していたこと、南ア政府が国産化を目指して完成車に120%の関税をかけていることもあり、輸入車の割合は全体の0.1%ほどだ。道路をうめる日本車は、現地企業に日本車メーカーが名義を貸し、KD(現地組み立て)部品を輸出して南アで生産されたものである。
 南ア日産の従業員3500人のうち、黒人労働者は2500人。D・ファイフ社長が「ここでは肌の色による差別は存在しない」と断言するように、黒人の現場リーダーも多く、カメラを向けると気軽にポーズを取ってくれる。「南ア企業の発展は、安い黒人労働者を踏み台にしてきた」と批判されるが、自動車産業を例にとれば賃金上昇率は高く、90年の平均賃金は80年の5倍に達している。
 鉱業依存の産業構造を高度化し、製造業やサービス業などを中心とした構造に転換するのが南アの課題。自動車産業はそのカナメ的存在だが、ここでも経済停滞の影響は深刻だ。「南アの自動車生産は一時は40万台に達していた。消費者の購買力は目に見えて低下している」(ファイフ社長)。

石炭液化の事業化推進

 自動車以外にも、南アが世界に誇る技術に石炭液化事業がある。道路のあちこちで「SASOL(サソール)」の看板を掲げたガソリンスタンドに出くわす。サソールとは石炭液化事業を手がける南アの国営企業だ。南アを走る車の70%までを、このサソールがまかなっているのである。
 南アは国内の豊富な石炭資源に着目、1940年ごろから石炭液化の事業化を検討してきた。特に国連決議の一環で多くの国が石油禁輸措置をとったのをきっかけに、同事業にかける南アの熱意は燃え上がった。石油入手のパイプが細くなった南アのいわば自衛手段でもあったわけだ。
 現在操業しているプラントはサソールT、サソールU、サソールVの3つ。Tはプレトリア南西、UとVは南東に位置する。原料になる石炭はプラント周辺にある炭層からベルトコンベヤーで運ばれてくる。その用途はガソリンだけでなく、都市ガスや化学品の原料など幅広い。
 アフリカ最大の経済大国である南アに寄せる周辺諸国の期待は高い。南アを中心とする南部アフリカ経済圏構想を予感させるようなプロジェクトも着々と進められている。南アの電力公社エスコムによる発電事業統合計画がそれだ。
 この計画は、南ア国内の発電所とジンバブエ、アンゴラ、ザンビアなどの水力発電所を結んで電力を相互に供給しようというもの。火力発電所に依存する南アにとっては電源の多様化になる一方、南部アフリカ各国はアフリカ最大のエネルギー供給国の支援が受けられることになる。実現すれば同地域の経済発展に大きく寄与することは間違いない。
 同計画の推進者のひとりであるM・デービス取締役は「南アでは黒人の70%までが電力の供給を得ておらず、この比率はやがて80%まで拡大する。現状では黒人の増加ペースに電力供給が追い付かない」と説明する。南アの技術と周辺諸国の資源が一体となる時、南部アフリカ経済圏構想が大きく前進することになる。

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活発化する金融市場

将来性買い資金流入

 南アフリカ政府は9月19日、ドイツマルク建て公募債の募集を開始した。85年以来6年ぶりの国際マーケットへの復帰だ。
 主幹事を務めたのはドイツ銀行。募集前には国連などから「国際市場への復帰は早過ぎる」と、ドイツ銀の積極姿勢を批判する声も上がっていた。しかし市場は南ア政府とドイツ銀を”支持”した。当初3億ドルの予定だった発行部額は、人気の高さを受けて急きょ4億ドルに増額された。
 ヨハネスブルク証券取引所(JSE)の90年度の売買高は前年比14%の23兆ランド(約1100兆円)に達し、今年も増加傾向が続いている。「昨年末ごろから欧州、特にドイツやスイスの資金が流れ込んでいる」と広報担当者は言う。ヨハネスブルク工業株式指数は86年当時は1500前後だったが、今年に入って4000を突破。現在は4100内外で推移している。
 南ア政府はまだ不安定だ。南ア政府が償還期限を迎える96年には、すでに黒人が政治の主導を握り、現在とは異なる政体になっている可能性が高い。
 しかし、海外の投資家は証券市場を通じて、南アの未来を買い始めた。
 南アの金融市場も、こういう海外の投資家の要求にこたえられるだけの基盤は持っている。南アの大手銀行は欧州系の銀行の支店だった。ファースト・ナショナル銀行は英パークレイズ銀行の、スタンダード銀行は英スタンダード・チャータード銀行の、それぞれ南アの支店網だった。
 このため設備はもとより国際金融に商慣習にも精通している。南ア5大銀行の自己資本比率はすでに8%を超えており、経済基盤も安定している。
 政情不安のほかにもマイナス成長、高インフレといった懸念材料は多い。ただ長期的には、南アはアフリカの金融センターに育つ可能性を秘めている。

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1991.11.08 日経新聞

新聞記事を勝手に掲載していることをお詫び致します