南アフリカの古いニュース

動き出す 新生・南ア ◆上◆
黒人主導体制の展望

人種融和にANC自信
「平等化」広い指示
まず経済格差解消急務

 アフリカ最後の少数派白人支配国家、南アフリカ共和国の黒人主導民主体制への移行が1日、確定的となった。南アはこれにより、アパルトヘイト(人種隔離政策)に決裂し、黒人最大政党、アフリカ民族会議(ANC)主軸の新生国家として、人種融和の道を模索することになる。1日付南ア紙サンデー・タイムズは、黒人主導民主体制への移行を「国民にパワー(実権)」と、うたい上げた。

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 南アでは今、制憲議会選挙の開票速報に人々の目はくぎ付けだ。開票が予定より大幅に遅れているため、いらだちも見られる。ANCは30日夜に予定していた勝利パーティーを1日夜に順延したが、黒人社会は自分たちの政権がまもなく初めて誕生することの予感、期待の気持ちを刻々とふくらませている。ANC幹部は再三、支持者に対し、「勝利の歓喜に酔って、暴力行為に出ないよう」警告しているほどだ。
 ANCが選挙の勝利を確信してのは、有権者の7割が黒人である、という人口構成だけから来るものではない。旧タウンシップ(黒人居住区)など草の根で血を流し、反アパルトヘイト闘争を展開したことに対し、黒人社会の圧倒的多数の支持を得ているという自信があるからだ。
 さらには、1955年に採択したANCの憲法とでも言うべき「自由憲章」で、肌の色にとらわれない自由、平等な社会建設を目指す、と明言していることが象徴するように、ANCの人種融和を目標とする基本姿勢が白人社会にも受け入れてもらえる、という自負心がある。事実、ANCにはこれまで黒人だけでなく、進歩的白人、アフリカーナー(欧州大陸系白人)の多くが参加している。
 マンデラANC議長は1日の本紙との会見でも、「白人も黒人も同じ南アの国民」と述べ、ANCが新政権下で、これまで掲げてきたこの人種平等、融和の精神を実践していく強い意欲を示した。今回の選挙でANCが地滑り的勝利を収めても、「少数派国民が脅威と感じる政策を展開してはならない」とも強調した。
 南アのケープ沖にアフリカーナーの先祖であるオランダ人、ヤン・ファンリーベックが到着したのは、1652年。以来、3世紀以上にわたるアフリカーナー英国人の入植の歴史が始まり、先住黒人はこれら白人の支配体制下に置かれた。
 アパルトヘイトの名称で知られる白人絶対体制が確立するのは、アフリカーナーの国民党が政権党の座に就いた1948年。国民党の体制下、黒人はカラード(混血)やインド系の下に格付けされ、生来の地で第2級以下の人生を運命付けられた。黒人の現在に至る経済的困窮ぶりは南ア全土に点在する旧タウンシップを見れば一目瞭然(りょうぜん)。
 マンデラ議長率いるANCはもちろん、こうした白人、黒人間の大きな経済的不平等を解消する責務を担う。しかし、それと同時に、人種間に横たわる積年の偏見、憎しみを癒し、さらには連帯の心をはぐくんでいくことはさらに急務とも言える。

1994.5.2 読売新聞

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