南アフリカの古いニュース

動き出す 新生・南ア ◆中◆
黒人主導体制の展望

「再建・開発」どう実現
ANC、1兆円事業構想

 「マンデラが大統領が大統領になるのが決まったんだ。世の中変わるさ」
 南ア経済の中心、ヨハネスブルクから車で約30分の旧黒人居住区ソウェト。老朽化した自動車がガタガタと通り過ぎ、未舗装の道路から瀬赤土の砂ぼこりが舞い上がる。所在もなく自宅前の道端に座り続ける失業中のジョン君(28)は言う。「多分、数か月以内に仕事が見つかるんじゃないかな。もっと広い家が持てるだろう」
 制憲会議選挙の開票が進み、最大黒人政党アフリカ民族会議(ANC)を中軸にした黒人主導政権誕生と、マンデラANC議長の大統領就任が確実になる中、これまで南ア社会の底辺を構成してきた黒人たちは、生活向上への期待を急速にふくらませている。
 南アの黒人は人口の約4分の3を占めながら、アパルトヘイト(人種隔離政策)による少数派白人の支配の下、経済的にも最も抑圧されてきた。しかも、南アがアパルトヘイトに対する国際社会の制裁で苦しい経済状況に直面すると、そのしわ寄せを一番に受けたのも黒人だった。
 南ア人種関係研究所の資料によると、黒人の月平均収入は304ドルで、白人の5分の1以下だ。
 また、16歳から30歳の若者のうち全体で52%が失業状態にあるが、同年齢層の失業率は、白人4%に対し、黒人は57%にも及ぶ。
 黒人票に依存するANCは選挙キャンペーンで貧富の格差是正を最優先課題に掲げた。
 「再建・開発計画」を作成し@土地再配分を1年以内に始めるA5年間で100万戸の低コスト住宅建設B公共事業中心に雇用創出C2000年までに250万世帯を電化D人種別優遇雇用政策(アファーマティブ・アクション)による黒人の官庁、企業での積極的登用――などを公約してきた。また、同計画実現に必要な支出は、向こう5年間で390億ランド(約1兆1200億円)とする。
 ANCの再建・開発計画は、単に人気取りの空手形というわけではない。地元大手銀行、ファースト・ナショナル銀行のチーフ・エコノミスト、ケース・ブラゲマンス博士(41)も、今後、住宅建設や電化推進などは大幅な民間資金の導入が期待でき、短期間に達成可能との見方を示す。こうした一部財界の楽観的な見方が、黒人の期待を一層あおっているのも事実だ。
 しかし、同計画に対し現与党の国民党は「税負担が2倍になる可能性がある」と批判。また、直接投資や技術移転により南ア経済活性化に役割を果たすと期待されている日系企業も、「財源確保に関する、政権掌握後のANC内の経済政策討議を見極めたい」(日系大手商社筋)と、慎重な構えだ。
 黒人主導政権の誕生が生活向上につながらなかった場合、期待を裏切られた黒人はどう出るのか。同計画の成否は、新体制の行方を大きく左右することになりそうだ。

1994.5.3 読売新聞

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