南アフリカの古いニュース

動き出す 新生・南ア ◆下◆
黒人主導体制の展望

経済協力に熱い視線
アフリカ諸国、自立の時代

 南アフリカ共和国のアパルトヘイト(人種隔離政策)撤廃は、国連、アフリカ統一機構(OAU)、英連邦諸国など国際社会が長年、目指してきた目標だった。黒人中心の最大政党、アフリカ民族会議(ANC)の主導体制が確定した新生民主国家の南アには、今後、西側を中心に有形、無形の「民主化の報酬」が殺到するのは想像に難くない。
 デクラーク国民党政権に民主化促進のシグナルを送り続けてきた米国は、クリントン米大統領が先月30日、今週中に南アへの援助額を倍増する支援計画を発表する意向を表明した。国際社会が南アに課した経済制裁はデクラーク政権の一連の改革策で今やほとんど解除されているが、現実には西側の民間企業は依然、新規投資に及び腰。南アでは米政府のイニシアチブで西側の投資戦略に火がつくことへの期待が高まる。
 欧州では旧宗主国の英国の南アてこ入れが目立つ。英国は18世紀以降、金鉱山などの権益を狙い、先住入植者のアフリカーナー(欧州大陸系白人)と戦争を繰り返した歴史がある。また、アフリカーナーの国民党政権下でアパルトヘイト体制が確立すると、英国系の企業はアパルトヘイトがもたらす安価な黒人労働者を利用、自らの経済権益の拡張に走った。この負い目があり、英政府にとっては南アの民主化は決して他人事ではない。
 だからこそ、英国は今回の制憲議会選挙のために、約400万ポンド(約6億4千万円)の緊急援助を寄せた。ネルソン・マンデラANC議長も新政権発足後早い時期に、61年に脱退した英連邦への再加盟を申請する意向があることを表明。同議長はまた、エリザベス英女王の南ア訪問を歓迎する意向明らかにしている。
 新生南アはこうした祝福と歓迎の中、国際社会に復帰する。外交方針はデクラーク現政権を踏襲するものと見られる。
 注目されるのは、内戦や貧困にあえぐ同胞のアフリカ諸国に対し、新政権がどのような波及効果を及ぼしうるか、ということだろう。アフリカ諸国は南アの民主化を歓迎するとともに、新たな経済協力関係に熱いまなざしだ。南アが貧しい大多数の黒人社会を抱えているとはいっても、その経済力はアフリカ随一だからだ。
 南ア民主化の過程をローズ大学(南ア・グラハムズタウン)で見ている英スタッフォードシャー大学のスティーブン・ライリー講師は「新生南ア誕生はアフリカ大陸が待ちに待った朗報。アンゴラやモザンビークなど内戦、紛争を抱えた国々には、特に好ましい影響を与えることが期待できる」と語る。
 一方で、アフリカ統一機構はこれまで往々にして、その足並みの乱れをアパルトヘイト批判で辛うじて繕ってきたことは否定できない。また、メンバー国の中には政治的不安定や経済不振に一因をアパルトヘイト体制の南アのせいにするケースも目立った。今後は今までの言い訳は成立しない。新生南アの誕生により、他のアフリカ諸国が真の自立を迫られる時代が到来した、と言える。

1994.5.4 読売新聞

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