南アフリカの古いニュース

新生・南ア挑戦 A
 敗北宣言の国民党

デクラーク大統領
5年後、政権奪還に意欲
「経済政策」で黒人層へ訴え

 「私はマンデラ氏に大統領を引き継ぐが、国民党は南アの未来図を提示でき、5年後の選挙では最大政党となって返り咲く」。白人のデクラーク大統領(国民党党首)は2日夕(日本時間3日未明)こう語った。
 ザンビア、モザンビーク、アンゴラ、ジンバブエと、少数白人支配から多数派黒人政権に転換したアフリカ諸国は数多いが、南アフリカには他の例と決定的に違う1点がある。他国では少数白人が追放され、あるいは脱出したのに対し南アでは依然、約500万人の白人が暮らし、今回選挙後も彼らを支持基盤とする強力な政党が残ることだ。
 デクラーク党首は自ら副大統領としてマンデラ大統領に仕えることを公言している。大統領から降格して黒人中心政権に入る例はアフリカで初めてとなる。
 「多くの人にとって偉大な日だとは分かるが、私は(アパルトヘイト=人種隔離=根幹法を廃止した)4年3か月前からこの日の到来を描いていた。改革路線の最終ステップ到達に過ぎない」。同党首は選挙での敗北宣言で語った。
 自らを降格してまで進めた転換の根底には、何があったのか。同党首はある経済人の会合で「最大の困難の1つは、ANCが展開したキャンペーンで加速した国際社会による対南ア経済制裁だった」と述べている。南ア経済を支える金の国際価格が低迷を続け、外国資本の依存が必至となった時期の制裁は、国内政治をも動かした。これに社会不安の回避の意思が加わり、国民党は大転換に踏み切ったとみられる。
 第2党への転換を見越したうえで大転換を進めた国民党の決断力、洞察力は今後も侮り難い。今回の選挙戦を通じ、特に黒人層に「自由主義経済を通じて強固な社会基盤建設推進」を訴え続けたのは、5年後に向けた戦略と見ていい。多数派黒人の間に膨れ上がったANCへの期待が2年後、3年後も実現されなかったら……。組織として肥大化したANCが万一、急進派と穏健派に分裂したら……。
 「独立前の暮らしの方が良かった」。干ばつで生活物資欠乏した隣国ジンバブエで一昨年、多くの黒人がそう叫んだ。彼らは少数白人政権の再来さえ望んでいた。政権基盤を支えるのは国民の経済状態、と国民党は読んでいる。
 「南アが白人政権に戻る日は二度と来ない」の声は白人社会にも強い。が、デクラーク党首は5年後の奪還に意欲満々だ。

1994.5.4 毎日新聞

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