南アフリカの古いニュース

南アを地域の安定・発展の柱に

 340年の白人支配に終止符を打った南アフリカで10日、アフリカ民族会議(ANC)のネルソン・マンデラ議長が大統領に正式就任した。多数派黒人、少数派白人、混血など多人種が融和し、共存する民主主義社会を、南アが確立できるかどうか。新大統領の指導力に期待したい。
 世界は、肌の色で支配と従属の関係が決まる制度が公然と維持される不幸な時代を経験してきた。南アの白人支配体制の終わりで、人間社会は、このゆがんだ歴史を過去に追いやったことになる。
 先々週の全人種参加の選挙で、ANCは大勝したものの、単独で憲法を修正できる3分の2の議席は獲得できなかった。白人政権の与党だった国民党は予想以上の得票率で善戦し、また遅れて選挙参加したインカタ自由党(IFP)も健闘した。
 南ア暫定憲法は、選挙後の政府を、各政党が国会議席数に比例した閣僚を送り込む国民統合政府にすることを定めている。選挙結果は、新政権運営におけるANCの独断専行を懸念していた白人層などをひとまず安堵(ど)させるものとなった。
 マンデラ大統領は、第1副大統領にANC内穏健派で、白人層にも受けのよいムベキ氏を登用したほか(第2副大統領には白人のデクラーク国民党党首)、ANCに割り当てられる閣僚ポストの相当数にインド系など非黒人を起用する。人種間の融和を重視したものと評価できよう。
 また白人政権時代の蔵相の留任も含め、経済閣僚ポストの多くを国民党に任せる。かつてANCが掲げていた国有化などの社会主義的な考えはやめ、市場経済の維持をめざすものとして、南ア白人経済界や、南アへの進出を考えている外国企業から好感されている。これも、マンデラ新政権の穏健で現実的姿勢を示すものだろう。
 ただ、国防や治安担当閣僚をANCがしっかり押さえたことは、白人層の不安心理を刺激するかもしれない。
 新生南アが、混乱なき再建の道を歩むには、今みなぎっている和解精神を今後も堅持してゆけるかにかかっている。人種間、あるいは黒人勢力間の対立・抗争が生じた場合、マンデラ大統領が、国民へ説得力を十分に発揮できるかがカギとなろう。
 経済が落ち込んでいるとは言え、南アの国民総生産(GNP)は年間約1千億ドルで、南部アフリカ地域(南アを含めて11か国)全体のGNPの4分の3を占める。
 南部アフリカ地域は、希少金属など鉱山資源が豊かで、潜在的な経済発展能力は大きい。経済基盤の比較的整っている南アには、そのリード役が期待できる。南部アフリカ地域が経済成長路線に乗り、政治的に安定化してゆけば、国際社会が受ける利益は政治的にも経済的にも大きい。
 マンデラ新政権は、南アの再生のための意欲的な計画を掲げているが、まず低コストの住宅建設など黒人の生活向上が緊急の課題だ。日本を含む国際社会は、南部アフリカ地域全体の発展を促すという狙いからも、南アが新国家形成の軌道を着実に歩めるよう支援体制を整えるべきだ。

1994.5.11 新聞不明

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