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新生南ア、兵器輸出大国へ
外貨の獲得で黒人救済目指す
マンデラ大統領も”乗り気”

 アパルトヘイト(人種隔離政策)後の新時代に入った南アフリカ共和国が、世界有数の兵器輸出国にのし上がろうとしている。就任式で「平和と繁栄に満ちた国を造ろう」と演説したノーベル平和賞受賞者のマンデラ新大統領ですら、兵器輸出拡大への”乗り気”を隠しておらず、手っとり早く外貨を稼げる兵器ビジネスは、新生南アの代表的産業として重要な役割を果たすことになりそうだ。

「制裁」解除ではずみ

 南アの新体制誕生を受け、国連安保理事は先月24日、アパルトヘイトに対する罰則として長年同国に科してきた武器禁輸制裁の解除を決めた。

 「今後は兵器輸出をひそかに行う必要がなくなり、効率の良い輸出が可能になる」。南アの国営兵器企業アームスコー社のデバール社長は26日、首都プレトリア近郊の同社記者会見し、制裁解除を歓迎し、輸出攻勢を強化する方針を明かにした。
 南アはこれまでも禁輸処置を破って兵器輸出を続けていたが、これからは公然と兵器ビジネスに取り組めることになったわけで、同社長は、南ア全体の兵器輸出額が昨年は8億ランド(約2.2億米ドル)だったと初めて明らかにした上で、今年度は18億ランド(約5億ドル)と一挙に2倍以上に増やす自信を示した。有望な市場としては「アジア、アフリカ、欧州」をあげた。湾岸戦争でイラクが使用したりゅう弾砲の一部も、同社製と言われる。
 1980年代に核爆弾を製造した実績を持つ南アの核開発計画の中核企業だったアームスコー社は、最近製造部門を分離し、現在は、南アの兵器輸出全般を監督する国防省の下部機関の役割を果たしている。
 同社製造部門を前身とする南ア最大の兵器メーカー、デネル社は、アームスコー時代からの攻撃ヘリコプター「CSH−2ロイファルク」や、長距離155ミリりゅう弾砲「G−6」などが主力製品。米国製より安く、ロシア製より高性能との評価を受けている。
 過去の南アは、白人政権防衛の思惑からアフリカ諸国の内戦を助長し、国際社会の批判を浴びてきた。ところが、その白人政権に対して黒人解放闘争を展開していた時、「世界規模の軍縮」を主張、白人政権による兵器開発を批判していたマンデラ新大統領も、今は、兵器輸出に積極姿勢を見せている。
 大統領はテレビのインタビュー番組で、「一部の国が兵器の売買にかかわってはならないというのは公平ではない。主権と国家の一体性を守るためには、兵器売買はなんら問題ない」と答えた。
 兵器輸出の理由は、何と言っても確実に外貨を獲得できる魅力。さらに、白人との所得格差が開いた黒人を救済するためには、復興開発計画に膨大な予算が必要で、そのあおりで国防予算を削減せざるを得ないことから、軍事産業を生き延びさせるには兵器輸出拡大が不可欠、という事情がある。
 だがアフリカは依然、多くの国が内戦の泥沼に陥っている。最も悲惨なのは、6週間で50万人が虐殺されたとも言われるアフリカ中央部のルワンダだ。
 デバール社長によると、5年前、小銃からりゅう弾砲までの1億ランド相当の兵器輸出契約をルワンダ政府と結び輸出を続けたが、昨年10月を最後に輸出を停止。これは「内戦を拡大する恐れ」を考慮したためで、約半分の4500ランド分がキャンセルになったという。また内戦が続くアンゴラへ流れ込む兵器の中継地となっていたザイールに対しても、2、3年前までは兵器輸出をしていたという。
 これらの内戦で、南ア製の兵器が使われたことは否定できない。

輸出先100か国以上

 また、世界の他の地域に関しても、スミス輸出入管理担当取締役らアームスコー社幹部は、読売新聞の取材に対し、輸出先が「計100か国以上」に上がっており、冷戦終結で世界全体の武器取引が縮小している中、逆に軍事増強に向かうアジアでは、「特にマレーシアが大きな市場となっている」と語った。さらに、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)に関しても、「顧客保護のため言えない」と明言を避けた。

輸出総額、世界7位の可能性も 今年

 アームスコー社は、南アの兵器輸出がこれまで世界市場を占めていた割合は「0.5%」に過ぎないとしている。
 だが、「SIPRI(ストックホルム国際平和研究所)年鑑」によると、世界の輸出総額が4−500億米ドルもあった80年代と異なり、92年には世界全体で184億ドルまで落ち込み、米国、ロシアなど大国の輸出額も大幅減少している。その中で南アは世界のすう勢に逆行して輸出を急増させている。
 南アは92年までに輸出実績を明らかにしていないが、今年、輸出額を18億ランドに増やせば、世界でも7、8位に踊り出ることになる。

92年の国別兵器輸出実績

  順位  国    輸出総額(百万ドル)
   1.アメリカ   8429
   2.ロシア    2043
   3.ドイツ    1928
   4.中国     1535
   5.フランス   1151
   6.イギリス    952
   7.チェコ     779
   8.イタリア    335
   9.オランダ    305
  10.スウェーデン  113

1994.6.1 読売新聞

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