南アフリカの古いニュース

南ア援助、拙速は禁物
体制不安に欧米二の足

 全人種参加の総選挙が実施されてから約4か月、新国家建設が進む南アフリカだが、長いアパルトヘイト(人種隔離政策)のしこりは簡単に消せない。日本の対南ア経済援助開始には、安定政権が必要だ。

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 新生・南アの将来には当初、世界中が官民ともに大きな期待を抱き、経済力、企業投資の可能性を探る動きが活発だった。
 政府開発援助(ODA)では日本が当面、今年度から2年間で300億円の円借款を内定したのを始め、援助疲れで最近は援助額を減らしているアメリカさえも3年間で6億ドル、イギリスは3年間1億ポンド、ドイツも年に年に1.1億マルクの資金援助方針を発表するなど、援助競争が開始される気配すらあった。
 また、民間も新しい「南ア・ビジネス」に乗り遅れないためにと、各企業が競って投資案件の発掘などに奔走していた。
 「アフリカ開発会議」を昨年10月に開催するなどアフリカ諸国支援に積極的な日本政府は、南アへの経済援助にも当然意欲をみせ、6月から7月にかけて政府の経済協力ミッションを派遣、今後実施される経済援助の重点分野などについてヌゾ外相ら南ア政府幹部と話し合ってきた。
 その結果、今秋から始まる復興開発計画(RDP)を支援するため、円借款プロジェクトを決定するミッションを9月末にも派遣することを検討。特にマンデラ政権の早期安定を助ける必要から、貧困黒人層に目に見えるODAの実施を重視、実現に時間がかかる円借款プロジェクトが今秋にも決定出来ない場合は南アの黒人支援のため、無償資金協力を早急に実施することも考慮していた。
 わが国から南アへのODAは、南アの一人当たり国民総生産(GNP)が援助の対象国としては高すぎたため80年代まで実施されていなかった。だが、90年代から白人との所得格差が大きくて収入が二層化している黒人を対象に技術研修員の受け入れ、小規模無償資金協力などを行ってきた。
 現在の援助額は欧米諸国より少ないが、援助が計画通り実施されると日本はたちまち欧州連合(EU)と並ぶ対南ア2大援助国になるはずだ。
 しかし、最近になって、こうした南ア支援の熱意に陰りが出てきた。まず、関心を弱めたのは欧米の民間企業。他のアフリカ諸国に比べ高賃金の割に低い技術力、さらに不安定要因を残す政治情勢の二の足を踏む企業が出た。
 総選挙直後から白人右翼勢力の政治暴力を懸念する声が強かったが、特に最近はアフリカ民族会議(ANC)と国民党の不調和音が露呈、現政権に対する不安要因となっている。
 こうした企業投資意欲の減退に合わせ、欧米の援助国のODA供与競争も沈静化し、援助の早期実施を見合わせてきている。
 慎重になる要因は民間の危惧(きぐ)と同じで、暫定政府の不安定感に加え、先進国でも開発途上国でもない南ア経済への援助の難しさだ。どんな援助が白人と黒人の経済格差を埋め、南ア全体、ひいては南部アフリカの経済開発に寄与するのかを見極めにくく、プロジェクトを決定しにくい難点にしている。
 こうした状況で、日本だけが南アODAを急いでいるように見えるのは、問題ではないか。そもそも日本の南ア援助には、歴史、地域的に日本よりも深い関係がある欧米諸国に後れをとることなく今後2国間の友好関係強化を狙うため、一時も早く開始しようという焦りのようなものが感じられた。
アパルトヘイト撤廃という画期的な革新をとげたばかりのこの国の体制は、まだ星雲状態にある。援助する相手の姿さえ定かでないところにあわてて援助をしても、決して喜ばれる援助にはならず、資金の無駄にもなりかねない。日本のODA実施には、もう少し時間をかけても良いのではないか。

1994.8.13 新聞不明

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