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南アフリカ特集
シンポジウム 第1セッション

経済の特徴

 10月14日に都内のホテルで開いた日本経済新聞主催の「南アフリカシンポジウム」(オメガ・インベストメント・リサーチ社共催)では、マンデラ大統領のもとで黒人と白人が手を携え、「人種融合国家」として生まれ変わった南アの経済・投資環境をめぐる活発な議論が展開され、第1セッション「南ア経済の特徴」では南アの景気動向や観光、鉱業、製造業の現状がテーマとなり、第2セッション「南アのビジネス展開」では南アの投資環境、労使関係などに関し南ア側参加者が報告した後、質疑応答を行った。日本側参加者も合流した最後のパネルディスカッションでは、南ア市場の可能性、日本企業と振興黒人企業との協力、投資優遇策の改善の余地などに関し率直に意見交換をした。

日本視野に新たな可能性

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[基調講演] 政情安定、投資促す
南アフリカ共和国通産大臣 トレバー・マニュエル氏

 南ア政府は基本的な生活水準の達成、人材の開発、経済発展、国家・社会の民主化の4本柱から成る「復興開発計画」(RDP)を策定している。RDPは国家による統制的な計画ではなく、国内外の民間部門、非政府組織、市民団体が参加し、分野は広い。産業の再構築や中小企業の振興は民間が大いに責任を持つべき分野だろう。
 政府は9月22日に発表したRDPに関する文書で「効率的な市場を整備するとともに、過去のひずみを是正することによって、民間投資を促進する環境づくりに力を注ぐ」と明言している。さらに同文書では「政府は経済の成長と開発という目的から国外の投資を歓迎する。政情の安定や経済成長が国外からの投資を誘致するための道筋であるという考えを容認している」としている。
 アパルトヘイト(人種隔離)の負の遺産は南ア経済に深く根づいている。競争力は乏しく、南ア国民の大多数を経済的な所有や支配から排除してきた。しかし、今われわれは南ア経済を近代化する時代に生きている。競争力を回復するため産業再構築に照準を合わせ、産業界、労働界、政府が一致協力し組織的に経済の再生に努めている。
 われわれは参加型の民主主義社会を形成することで、多くの国々に直接投資のチャンスをもたらそうとしている。マンデラ大統領は「政府は国民中心の自由社会の構築に傾注し、欠乏や飢えからの解放を追求していく」と述べた。こうした見解は先進主要7カ国も支持している。

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[基調講演] 黒人と協力拡大
駐南アフリカ大使 瀬崎克己氏

 南アと日本との関係では91年に経済制裁を解除して以来、貿易額は順調に増えつつあり、93年にはピークだった87年の40億ドルに次ぐ39億ドルまで回復した。94年は日本の景気が徐々立ち直りつつあることを反映してか、南アからの金属原料などの輸出が順調で、また食品や化学製品なども輸出が拡大しつつあると聞いている。
 南アに対する投融資についても昨年来5件が行われた。鉱業にかかわるものがそのうち4件で、他の1件は通信関係となっている。日本から東南アジアや中国などに向けて行われている投資の件数・規模に比べると動きはまだ小さいが、日本企業の幹部が多数来訪し南ア企業との話し合いを持っていることからいずれ具体的な成果が表れると期待している。
 日本は南ア産鉱物資源の重要なマーケットであり、また自動車や電機の分野においてこれまでも大規模な現地生産・技術移転を行ってきた。こうした強い経済的なつながりから、南ア政府・財界の日本への期待は大きい。日本の関連企業にはこうした要請にこたえ、南アとのビジネスを一層拡大してほしい。
 ポイントとして、従来ほとんど形づくられてこなかった日本企業と黒人ビジネスの関係の強化とこれを通じた黒人ビジネスの振興を重視してほしい。南アには企業化精神とアイデアに富んだ黒人ビジネスマンがいるが、日本との接点は余りない。あらゆる機会を通じて今後交流を深め、相互にビジネスチャンスを見いだしてほしい。

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[基調講演] 企業に代わり 金融が高度化
スタンダード銀行投資会社グループ代表取締役 エディー・トロン氏

 国内総生産(GDP)で見ると南アはアフリカ諸国で最大の経済力を持っている。GDPはエジプトの4倍、ナイジェリアの3.6倍、ケニアの14倍近い規模だ。南部アフリカ地域に限定すると近隣諸国の3.5倍に達する。
 GDPの産業別貢献度は、多様化した業種構成を反映している。1次産業への依存率は小さく、さらに漸減している。主要産業だった鉱業は金、白金、ダイヤモンド、石炭などが今でも輸出品として有力だが、GDPへの貢献率は10%以下に下がっている。
 2次産業は多様化しており、業種別では製造業の貢献度全産業中最大だ。ただ、過去20年にわたり国際的に孤立していたため、内需を満たすための業種だけが発展しているといった弱点がある。3次産業、すなわちサービス産業が最大の規模で、特に金融サービスは高度化している。
 南ア経済は89年から長期低迷の局面に入った。状況は干ばつでさらに深刻となり、92年には2%を超すマイナス成長となった。しかし、93年には不況期を終え、回復し始めた。94年は政治的な急変で景気回復の勢いがややそがれた上、外需も伸び悩んだが、2−2.5%の成長は保つだろう。
 今後は景気循環のサイクルは回復へ向けスピードを上げ、95年は堅調な成長をとげよう。政治的な変革により経済が解放されたことから、将来はさらに成長する可能性がある。南アが国際金融市場へ参入する条件も正常化した。貿易も急増のチャンスを迎えている。
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経済の特徴 第1セッション

 第1セッションでは「南ア経済の特徴」をテーマに、南アのビジネスマン5人と国会議員1人が講演した。経済状況の概論、観光、鉱業と鉱物資源、投資と金融サービス、黒人企業の台頭、製造業についてそれぞれの特徴を紹介した。

経済好転
 来年は3.5%成長に 
ゴーズ氏
 ルドルフ・ゴーズ氏(ランド・マーチャント銀行取締役)
 南アの経済は上昇しており、長期的にも明るい見通しだ。2年連続で農業が好調であり、大型の資本プロジェクトが進行している。対外債務が低減し、企業の財務内容もしっかりするなど好ましい材料が多い。
 過去20年間続いた政情不安、内紛、アパルトヘイト時代の非効率な時給自足経済、経済制裁などこれまで経済成長を阻む要因がなくなったことにより、南アの経済はこれまでになかった勢いで発展する。
 政府による復興開発計画(RDP)も経済成長を支えていくだろう。新政府は国内総生産(GDP)に対する支出の伸びを抑え、税負担を平均化し、財政赤字を減らしながらRDPを進めていくシナリオを描いている。
 南アの経済収支は今年半期から回復しており約40億ランドの黒字を見込んでいる。景気は18カ月間拡大していることから、金利がこれからゆるやかに上昇するだろう。GDPの伸びは今年2.5%ほどに落ち着き、来年は3.5%ぐらいになると予測している。

観光業
 観光で雇用創出 
ランショド氏
 ブハラ・ランショド氏(南ア共和国下院副議長)
 日本人は毎年1000万人が海外に出かけているが、南アを訪れるにはわずか1万人にすぎない。両国間の貿易にくらべ観光客の数は非常に少ない。
 93年に南アを訪れた観光客は約60万人。観光業のGDP全体への寄与度は3%と、世界平均6%とくらべてもまだまだ増加の余地はある。外貨獲得でも他の多くの国が観光業が1位の産業であるのに対し、南アは4位。南アは観光地としての魅力が大きく、潜在的成長力は大きい。
 南アの9つ州はホテル建設などで投資を誘致し、観光業の活性化に努めている。ゴルフ場建設など日本の投資家にも多くの機会があるだろう。観光業は労働集約型の産業であり、失業率が約50%と高い南アでは、有望な雇用創出になると期待している。南アの国民の生活改善につながるだろう。
 南アと日本の間に直行便を設ければ貿易の促進や観光事業の急速な成長だけでなく、両国民の相互理解に役立つはずだ。

鉱物資源
 
レスリー・ボイド氏(アングロ・アメリカ・コーポレーション副会長)
 南アの金産出量は93年で620トン。西側供給量の33%、世界の27%に上り、金輸出だけで南アは70億ドルの外貨収入を得た。埋蔵量は約2万トンで、新しい生産計画も次々と立てられている。南アは今後も世界の金の供給国としての地位を築いていく。
 このほかプラチナ、銅、ニッケル、鉄鉱石、バナジウム、クロム、マンガン、ダイヤモンド、石炭と、世界的にも豊富な鉱物資源がある。
 ただこれからは鉱物に付加価値をつけていかなければならない。例えばクロム鉱石は1トンで58ドルだが、ここからクロム鉄を380キロ生産すればその価値は167ドルになる。さらにこの量のクロム鉄は2100ドルの価値に相当する1250キロのステンレス鋼の材料でもある。
 南アは世界的に原材料を提供するだけでなく、鉱物資源に付加価値を与えるための「新コロンバス・ステンレススチール計画」をたてており、それが世界の総合鉄鋼生産業者の第5位になるものと自負している。

投資と金融
 外貨管理緩和の方向 
ホースト氏
 ヨハネス・ファン・ダー・ホースト博士(オールド・ミューチュアル社投資担当ゼネラル・マネジャー)
 南アの金融部門は英国や日本に劣らず高度に発達している。特に銀行、生命保険分野が盛んだ。商品内容も豊富だし規制もきつくない。新商品の開発、サービスの向上などで競争が厳しくなっている。
 南アには42の銀行があり、93年末で690億ドルの国内資産を計上した。うち上位4行で80%を占める。自己資本率は8.7%とBIS基準を容易に満たしている。生保会社は50あり、資産総額は670億ドルである。
 ヨハネスブルク証券取引所(JSE)は93年末時点の資本総額は2000億ドルを超え、世界で10番目の規模だ。資本、金融市場では長期固定金利の証券、特に国債や電力会社などの準国債が中心となり、93年の出来高は1750億ドルに上った。
 為替市場については外貨持ち出しが規制され、ポートフォリオは国内に偏っている。現在、政府は外為管理をできるだけ緩和しようとしている。

黒人企業
 教育充実し規律強化貨管理緩和の方向 
モトラナ氏
 ンタト・H・モトラナ博士(メトロポリタン・ライフ会長)
 1912−13年の土地法の制定以来、南アでは土地や富が雇用を生み出す基礎となった。南アの土地は87%が白人所有となり、黒人はずっと貧しい階級だ。しかし今年、国民統一政府に移行したことにより、黒人企業が徐々に台頭する環境が整ってきた。
 真の力というのは経済力であり、政治的な力は経済力の結果生まれるものだと思う。これから白人と黒人で経済力を共有していくのは簡単でないが、黒人系南ア人はアパルトヘイトを憎むより将来を見据え努力している。実際、ヤベン・レバケン、アフリカン・ライフ、ニュー・アフリカ・インベストメントなどがJSEに上場するなど、成功する黒人企業が出てきた。
 失業問題に取り組む活動も盛んになってきた。我々は教育を充実させ、勤勉な労働倫理を築き、規制を強化していく。鉱物資源、インフラ、人材に恵まれ国として南アは潜在成長力が高いだけでに、黒人企業との合弁企業の機会は増えるだろう。日本も慈善事業ではなく、健全な経済原理に基づいて資本参加することを期待する。

製造業
 製品輸出も伸びる 
ニューベリー氏
 ジョン・ニューベリー氏(日産・南アフリカ社長)
 南アの製造業はGDP(93年は810億ドル)の約4分の1を占め、この割合は80年代半ばから続いている。政府は経済活性化のために製造業を重視しており、復興開発計画(RDP)でも優先対象になっている。
 これまで南アの輸出のほてんどが一次産品。しかし製造品の輸出も84−92年の間に実質ベースで年間10%伸びており、貿易制裁の中でそれなりの成功をおさめたといえる。これは南ア製造業の技術力の高さを示している。例えばデネル社は英軍の新型攻撃ヘリコプターの受注をめぐり米仏英の軍需産業と競うほどの技術力を持つ。
 制裁が解除された今は南ア製造業が大きく成長するチャンスだ。国際競争力ある産業を築くために人材の開発や技術の修得に重点を置いた政策が求められる。民間の設備投資も活発だ。アルサフ・アルミニウム精練所の65億ランド、コロンビア・ステンレススチールの41億ランドなどの大型投資が軒並み計画されている。
 海外企業にとっても南アは国内市場の大きさ、成長力、鉱物資源、労働力など魅力的な市場だ。ビジネスチャンスはたくさんあり、サブ・サハラ地域への入り口にもなる。

1994.11.04 日経新聞

新聞記事を勝手に掲載していることをお詫び致します