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南アフリカ特集
シンポジウム 第2セッション

ビジネス展開

生まれ変わった南ア経済

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ビジネス展開 第2セッション

 第2セッション「南アフリカでのビジネス展開」では、南アのビジネスマン5人が同国のビジネス環境について講演した。証券市場の現状、会社設立の方法、変化しつつある労使関係、企業の社会的責任、投資優遇処置といった広範な問題を取り上げた。

証券市場
 証券、高配当に魅力 
アンダーソン氏
 ロイ・アンダーソン氏(ヨハネスブルク証券取引所理事長)
 マンデラ国民統一政府への権力の平和的委譲という政治の奇跡を達成した南ア国民は次に経済の奇跡を実現しようと考えている。それにヨハネスブルク証券取引所(JSE)が重要な役割を果たすはずだ。
 JSEは南アで金が発見された1887年に設立された。起源は金取引だが、現在では金取引はJSEの取引高のうち10%未満にすぎない。93年の取引高は証券が7550億円、債権が19兆6000億円。金が110億円規模だった。また、登録証券会社数は46社、上場企業は638社ある。
 証券で人気のあるのはアングロ・アメリカやデビアス、リッチモンド、ミノルコなど10銘柄だ。最近、海外から投資が戻ってきつつある。
 投資家にとって魅力的なのは、下部か収益率(PER)が低いことや、南ア独自の二重通貨制度の活用でかなり高い配当を得られることだ。他の発展途上国に比べてインフラが整っており、南ア経済の成長性も期待できる。
 JSEは投資家保護もしっかりしている。基本的にはロンドン証券取引所と同じ仕組みであり、保証基金なども充実している。

労使関係
 黒人の積極登用を 
マクウェトラ氏
 ボビー・マクウェトラ氏(インターナショナル・エグゼクティブ・サービス会長)
 変化と発展こそ南ア国民の本質であるといえるだろう。今は、外国からの投資を誘致するため確固とした枠組みを生み出すためのビジョン作成の最中だ。
 産業発展の基盤は、南ア経済が6−7%成長した1960、70年代に固まった。いろんな集団が相互に依存関係を強めた。あるビジネスに必要な技能を持つ人が白人で足りない場合は黒人が埋める、といった具合だ。この結果、一部の黒人はさらに技能を身に着け、社会的に自信を深めることになった。
 今後は政府の復興開発計画(RDP)にしたがって産業界の民主化を進めることが重要だ。労働組合や労働者が企業の意思決定に参加できることや、教育、訓練、能力開発の機会の均等化などが必要となるだろう。黒人を専門職や管理職に積極的に登用する処置も大切だ。
 南アには労働者について、いくつかの法律がある中で、最も重要なのは労働関係法である。この法律に基づいて労働組合の合法性が判断される。同法の運用については、産業界に安定をもたらすと同時に、経済成長や発展を支えるものにすべきだという意見が多い。

外国企業
 合弁、手続きが容易 
マッケンジー氏
 チャールズ・マッケンジー氏(アーンスト・アンド・ヤング財務コンサルタント)
 南アには英国法にならって、よく発達した会社法があり、ビジネスをするには法律を知る必要がある。会社法に基づいて設立した上場企業と非上場企業があり、比較的規模の小さい非上場企業が一般的だ。
 非上場企業は株式譲渡の制限、最大50人までという株主の制限などがあり、その半面、経理内容を公開しなくてもよい。外国企業の支店は「エクスターナル・カンパニー」として登録する義務があり、登録には1週間程度の時間と約1500ランドの登録料がかかる。また、南ア人を法的な代表にしなければならない。
 外国からの投資家は通常、南ア企業との合弁会社の形で参入している。年次会計報告を除けば手続きが比較的簡単だからだ。しかも会計報告は会計士に監査を受けて政府に報告するだけでよく、公開しなくてもいい。
 これら以外の形、つまり単独で会社を設立するには、登録手続きのために会計士や法律家に助けてもらうことが必要で、約1週間かかる。初期資本規制はなく、100ランド程度の名目資本で設立されることが多い。取締役を1人以上任命しなくてはならず、その取締役は経営陣を任命する。上場企業や上場企業の子会社は年次会計報告を公開しなくてはならない。

企業責任
 企業、社会貢献も必要 
コーザ氏
 ハンフリー・コーザ氏(シェル石油南アフリカ広報担当ゼネラル・マネジャー)
 南アがアパルトヘイトという足かせ解放されて以降の短期間で、産業界では新しい戦略作りへ向けて急速に動いている。この動きは特に企業と社会の責任の分野に当てはまる。
 かつての南ア社会では人々は大企業を悪くて、力を持ち過ぎていて、秘密主義である、と考えていた。数年前に全国経済フォーラムで産業界、労働者、政府が一堂に会するようになって以来、相互理解が進んだ。
 RDPには、黒人を積極的に登用する処置など再分配メカニズム、社会の向上、供給拡大戦略などが盛り込まれている。
 RDPに沿って考えると、企業はただ金を使えばいいのではなく、地域社会や顧客との密接な関係を通して社会への投資の質を向上させなくてはならない。特に短期的な問題として、地域社会の生活向上や環境対策、持続可能な成長といった政策論争への参加が挙げられる。また、大企業、とりわけ多国籍企業は、地域社会への貢献を大切にする必要がある。

投資
 政府、投資優遇を検討 
フレーム氏
 クリス・フレーム氏(キング・フィッシャー・ファイナンス・インターナショナル社長)
 南アフリカ経済と欧州、米大陸、アジアの3極経済との本質的な関係こそが南ア投資のインセンティブになり得る。南アは3極経済に主要な資源を供給している。多くある資源供給国の中で今の南アほど政治的に安定している国はないのに、日本企業はあまり関心を払ってない。
 南アは経済的、社会的なインフラが整っており、人口6億のアフリカ大陸市場への入り口でもある。現在は国内企業の工業製品に輸出補助金を出しているが、これは関税貿易一般協定(ガット)に加盟したので、2年以内に廃止する。
 将来、大市場となる南アの重要性を西欧諸国は理解しており、進出を競っている。
 政府の税制改革委員会は、ベルギーのように、南アに本社を置く場合の優遇策を検討中だ。また、為替管理の廃止に向けて動き出している。これまで投資優遇策が充実していないのは諸外国から経済制裁を受けていたためである。新政府は2年以内に具体的な投資優遇策を打ち出すことを表明している。日本企業にとって投資の好機が訪れているのだ。

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パネルディスカッション

文化交流に期待 プリンス氏
改革の進展に目を 大島氏
南部アフリカの拠点 スパイサー氏
投資、最初はゆっくり 上島氏

 シンポジウムの締めくくりとして「日本と南アフリカの今後の関係について」をテーマに、パネルディスカッションが開かれた。主に日本企業の南ア投資に対する可能性や、その問題点に焦点が当てられた。

 まず、クリストフェル・シーザー・プリンス駐日南ア大使が日本と南アにとり、「今は、アパルトヘイト(人種隔離)政策により失ったものを取り戻す時」と協調。経済関係だけでなく、文化・学術的な交流が進展しつつあることを高く評価した。両国間の一層の関係強化に向けて「地理的な遠さ、歴史的な関係の薄さ、互いの関心の薄さの改善」に期待を示した。

 日本企業側からは、上島重二・三井物産副社長と、大島陽一・東銀リサーチインターナショナル社長が出席。上島氏は両国の経済関係について「経済的な相互依存関係にある。前政権下では投資は出来なかったが、貿易関係は続いていた。投資は長期的な企業間の信頼関係が大きな条件となるが、すでに貿易を通じ高い信頼を勝ち得ていると見ている。南アへの制裁解除で両国は新しいビジネスの時代に入ったといえるのではないか」と発言した。
 大島氏は「日本の南アに対する正確な知識がまだ不足しているが、これは報道などでやや危機感があおられている面がある。現在はすべての人種、部族が参加する歴史的な改革が進んでいることに目をとめるべきだ」と述べた。ただ、経済面においては「特にマクロ経済政策でインフレ率の高さ、外貨準備と為替相場に不安が残る」と指摘した。

 現在進んでいる人種間の融合と対日関係については、黒人側を代表する形でモトラナ・メトロポリタン・ライフ会長が「アパルトヘイト政策下で日本の対南ア貿易は、同政策を長引かせたという点で黒人にはマイナスだったと言わざるを得ない」と発言。ただ、長期的な面では貿易関係を保ったことが良かったのかもしれないと指摘し、「現在、両国の関係改善を阻もうという考えは(黒人側には)まったくない」と述べた。

 モトラ氏が指摘した南アでの黒人企業の台頭について上島氏は「正直なところ、今まで付き合ったこともない企業が多くあることに驚いた。これからの対南アビジネスを検討していくうえで非常に参考になった」と語った。

 上島氏の発言に対して、モトラナ氏は「黒人企業が増えているといっても、まだアパルトヘイト政策を引きずっている面もあり、ビジネスリーダーで黒人の数は限られている。黒人がビジネスを始める場合にはどこから資金を借り入れしなくてはならないという問題がある。パートナーとして日本の企業が資本を出し、提携していくことが必要だ」と強く訴えた。

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 新生南アへの投資については南部アフリカ市場全体をにらんだ観点が必要との意見も参加者から相次いだ。

 アングロ・アメリカン社会長顧問のマイケル・スパイサー氏は「南アの人口4000万人に近隣諸国を加えると人口は9000万人弱となる。各国とも政治的に比較的安定しているほか、内戦状態のところも収束する方向にある。英国のブリティッシュ・ペトロリアム(BP)は南部アフリカの拠点を南アに設置したうえ、活動の範囲をインド洋のモーリシャスまで広げている」と南アの地域市場における重要性を指摘した。

 上島氏も新政権となり、近隣の黒人国家との対立が解消したことに言及、「南アという孤立していた国を南部アフリカのなかの南アという形で見ることになった。投資機会を探るものにとっては新しい視点が生まれたことになる」と同意した。

 具体的な日本から南アへの投資の分野についてはアングロ・アメリカン社のボイド副会長が「鉱物資源関係よりも民営化が進むと思われる通信産業関係など日本が経験を蓄積している分野に投資チャンスがあるのではないか」と発言、日本のノウハウが移転できる企業を誘致したいとの考えを示した。

 プリンス大使も、多くの日系商社の幹部が南アを訪問していることを歓迎、「日本政府が表明した南アへの政府開発援助(ODA)が南アの復興開発計画の一部にも使われることになれば、両国のビジネスの関係強化にもつながる」と述べた。

 大島氏も日本の金融機関が「すでに盛んになりつつある貿易仲介の資金調達に加え、投資に伴う外貨調達などで役割が期待できる」との見通しを示した。

 ただ、日本側から対南ア投資が一気にすすむかどうかは慎重な発言が目立った。
 「投資は慈善事業ではないし、長期的なものだ。最初はゆっくりとしたものになるだろうが、魅力的な投資環境を作ってもらい、相手を探し、実行していくことになろう」(上島氏)。「通貨ランドの安定を保つ政策を取ってほしいし、政治の面でも、銃を使った犯罪が比較的多いのは脅威に映る」(大島氏)との意見も日本側から出された。

 一方で、南ア側からは「日本企業に比べると韓国、台湾企業の南アに対する投資は非常に積極的だ」(ボイド氏)、「欧州からも歴史的に関係の薄いフランスからの投資が増えており、最大の対南ア投資国になりそうだ」(モトラナ氏)との発言があり、日本側の慎重さおけん制した形となった。

1994.11.04 日経新聞

新聞記事を勝手に掲載していることをお詫び致します