南アフリカの古いニュース

南アフリカ特集
再生支援へ外国も出番

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黒人に職業訓練

帰還難民、日本も援助
地元と財団、教師の教育も

 新生南アの最大の課題のひとつがアパルトヘイト(人種隔離)政策下で冷遇されていた黒人の教育や職業訓練。日本政府や日本企業がこの分野での支援活動を活発化させている。
 元難民のジム・マファサさん(38)は11月14日が来るのを心待ちしている。8月に始めた住宅用のれんが・ブロック積み研修がこの日で無事終了するのだ。「手に職をつければ仕事を見つけ妻子を養うことができる」と、研修中の真剣な表情を緩めて話してくれた。
 ヨハネスブルクの中心部から、サバンナを突っ切る高速道路で約30分。サファリパークの敷地に入り込んだところに、日本の資金協力で80人の黒人が職業訓練に励むリーフ・トレーニング・センターがある。
 同センターは南アの鉱山会社が社会貢献の一環として90年に設立。今年5月に、整った設備と研修体制に目を付けた国連高等弁務官事務所(UNHCR)が、日本の資金を活用しこのセンターに依託する形で、帰還難民や黒人失業者を対象に自動車整備、配電工事、塗装、住宅建築などの分野の職業訓練プロジェクトを開始した。
 日本の資金協力によるプロジェクトはこのセンターにとどまらない。ヨハネスブルク市内のエグゼクティブ・エデュケーション・カレッジでは、25人の黒人生徒が経営コースを履修している。サリー・ドルー校長は「企業が製品を販売するまでの過程などを実習重視で学んでもらっている」と説明する。4カ月のコース終了後、自分たちでビジネスを始めることも生徒たちは相談しているという。
 南ア各地で現在500人以上を対象に実施中のこの職業訓練所プロジェクトは、日本政府からの70万ドルと、経団連が事務局になっている「難民救済民間基金」からの50万ドルが財源。UNHCRが企画と準備をしたあと、実際の運営は主として日本国際ボランティアセンター(JVC)が担当している。
 研修費用と交通費が支給されるため、プロジェクトの人気は高い。JVCの津山直子・南ア代表は「人々の期待度は高い。帰還難民はもとより、一般の住民からも参加希望は多い」と語る。自身も帰還難民であるアレイン・イェンデ・JVCコーディネーターによると概して参加者は熱心で、「途中で研修を投げ出すケースはほとんどない」という。
 南アには約1万6000人の難民や亡命者が帰還したが、国内の失業率は高く、社会復帰への道は厳しい。その一助として始めたプロジェクトだが、計画はとりあえず来年まで。難民問題担当のUNHCRにとっては、難民の帰還後いつまでも続けるわけにはいかない事情がある。一方、一般市民向けの職業訓練の重要性を説くJVCは、「UNHCRの資金提供が終われば、ほかの国連機関か南ア政府の予算などでまかないたい」と希望している。
 一方、トヨタ自動車は現地提携先の南ア・トヨタと共同で、89年に「南ア・トヨタ財団」を設立、黒人向け教育強化のための支援事業に乗り出している。南アの黒人の社会・経済的自立をバックアップするための黒人教師教育プログラム「トヨタ・ティーチ」などが主な活動内容。黒人教師のレベルアップを図ることで、黒人向けの初等教育充実を目指している。
 対象地域は南ア・トヨタのあるナタール州ダーバン地区が中心で、98年までに累計で6400人教師の教育を実施する計画だ。

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資進出人 期待と失望

政情など模様眺め
インフラ整備でビジネスの好機

 国際社会の経済制裁解除で南アフリカでは外国企業の投資が増えるとの期待が膨らんでいる。だが現状では国によって進出意欲に落差があるなど、期待のわりには進出事例が少ないとの見方も出ている。
 新生南アへの進出で比較的腰が軽いのは米国企業。飲料メーカーのコカ・コーラ、ペプシコ、制御機器のハネウエル、米電話会社AT&T、アップルコンピュータなどが投資計画を相次いで発表している。英国、フランスも首脳がいち早く南アを訪問するなど、今後企業の進出が増えそうな気配だ。
 だが、新政権誕生で投資の大幅増加を期待していた南ア関係者からは「思ったほど進出例は少なく、全般的に外資の進出状況には失望している」(ファイフォード。ファイナンシャル・メイル編集長)との声も聞かれる。投資が急増している米国についても、「対南ア経済制裁で撤退を余儀なくされた企業が制裁解除で再び戻ってきたケースがほとんどで、新規の進出は少ない」(瀬崎克己南ア大使)との分析もある。
 西側先進国の中で特に「投資に慎重」と南ア側を失望させているのが日本だ。日本貿易新興会ヨハネスブルク事務所の調べによると、南アに投資している企業は独334社、米150社、英154社、仏83社、日本は日本電工、住友商事など4社にすぎない。独企業が多いのは、アパルトヘイト時代からの累積で、最近になって急に増えたわけではないという。
 南ア市場の魅力は「ザイール、アンゴラなどの諸国を含めた南部アフリカの拠点としての発展が見込める」(大平修治三井物産ヨハネスブルク支店長)こと。また豊富な鉱物資源に加え、今後黒人の生活改善を目的にした各種インフラ整備のプロジェクトが動き出すことも、南アでのビジネスチャンス拡大につながるとみられている。
 同国では経済制裁下で、特別な外資優遇策を設けていなかったが、「経常取引のレートである商業ランドと、投資通貨である金融ランドの二重為替制度を導入しており、金融ランドは20〜25%安く設定されている」(オールド・ミューチュアル社のホースト投資担当ゼネラルマネジャー)。この点も外資へのインセンティブを高める要因になっている。
 だが、南ア市場の問題点として、治安の悪さ、政情不安が指摘されている。もっとも政情ついては、新政権発足後、予想以上に政権が安定していると評価する声もある。また労働コストも東南アジアとの比較で必ずしも安いというわけではなく、国によっては南アの方が高いという場合があるという。
 労働面では今年夏に5週間にも及ぶストライキが自動車産業などを中心に発生、これも不安材料になっている。
 このため日本を含む外資系企業の中には、南アの将来性には強い関心を持ちながらも、いまは様子ながめを決め込むという空気があるのも事実。10月に丸紅が調査団を送ったり、経団連も11月末に南アとの経済交流を促進するミッションの派遣を予定するなど日本の産業界も関心は示している。邦銀の中には駐在員事務所などの開設を検討しているところもあるという。
 こうした動きが実際の投資につながってうくのかどうか。日本の産業・金融界はいま南ア側の熱い期待に対する回答を求められているといえそうだ。

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自動車で日本的経営

日本車、市場の55%
技術・生産ノウハウ浸透

 ヨハネスブルクなど南アフリカの街を歩いていると、日本車をよく見かける。南アにはトヨタ自動車、日産自動車、マツダ自動車などが進出、自動車市場の約55%を日本車が占める。だがアパルトヘイト時代の経済制裁で日本企業は長く南アへの投資を禁止されていたこともあり、日本車を製造する会社はすべて現地資本で、日本車メーカーとのライセンス契約に基づきノックダウン生産を行っている。ただ日本企業の技術、製造ノウハウはしっかり導入されており、南アの自動車産業を日本的経営が支えている。
 南ア・トヨタ社の工場はインド洋に面する同国第3の都市ダーバンの郊外にある。工場を見学していると、案内役のオールドワース自主研推進課長が裁断作業用のロボットを指してしゃべり始めた。「あのロボットは頭脳を改良することで最近は溶接の仕事もこなすようになった。ロボットを有効活用しようという従業員の提案。カイゼン運動の成果です」。
 同社は日本式の全社的品質管理(TQC)を早くから導入しており、工場従業員に積極的な作業改善提案を求めている。従業員のモラールアップのため、年末に有益な提案をした人を集め、抽選を行い、1等賞には車2台を支給するなど報奨制度を実施している。
 この工場で生産しているのは、カローラ、カムリなどの乗用車とハイラックスのような小型トラック。年間の生産量は約10万台だ。生産された自動車はほとんど国内市場向けで、トヨタは同国で29.6%のシェアを誇るトップメーカー。以下、日産(17.4%)、独フォルクスワーゲン(13.8%)の順で続いている。
 日本的経営の導入に熱心なのは南ア日産も同じ。品質工場のための改善提案制度を設けるとともに、技能訓練のための合宿なども行っている。
 南ア・トヨタはダーバン近郊の工場で約7800人、ヨハネスブルクの営業・事務部門で約1200を雇用している。南ア日産の従業員は生産、販売を含め全部で5500人。
 国際社会の経済制裁解除と黒人主導政権の発足で、南アの自動車産業も大きな転機を迎えている。南ア政府は従来国産車保護の立場から、完成車の関税を115%と設定していたが、今年9月に80%に引き下げたのに続き、来年7月に65%にまで下げる方針だ。日本政府の経済制裁解除に伴い、日本車メーカーの現地企業へも投資も問題がなくなった。
 ただ日本車メーカーの投資について現地の南ア資本は正反対の対応を見せている。南ア・トヨタは「トヨタとは、(同社の資本参加について)話をしたこともない。現在のままでうまく行っており、トヨタの投資は必要ない」(ブラッドリー副会長)。これに対し南ア日産のニューブリー会長は「数年前から日産と論議しているが、まだ結論が出ない。私は35−40%程度の資本参加を期待している」と語る。
 南アはアンゴラ、ナミビアなど周辺国を含めた南部アフリカの拠点であり、いずれ黒人の中流階級形成されれば、国内にも一大市場ができる。日本車メーカーも将来をにらんだ長期的な南ア戦略を構築する時期が来ているといえそうだ。

1994.11.04 日経新聞

新聞記事を勝手に掲載していることをお詫び致します