南アフリカの古いニュース

挑戦する女性たち 12
10年ぶりの国連世界会議

南ア新体制を支える
制憲交渉に参加 法的平等を獲得

 「昨年選挙実現にこぎつけた交渉には、南ア人が外国の仲介無しに問題解決できた点以外に、もう一つの特徴があった。それは、世界でも例を見ないほど多くの女性代表が、新体制作りに参加したことだ」
 南アフリカ共和国では、史上初の全人種参加選挙の結果、昨年5月にマンデラ大統領が誕生した。この一連の流れを推し進め、現在は新政権で保健相を努めるヌコサザナ・ズマ(45)は、選挙までの制憲交渉を振り返り、こう自画自賛する。
 黒人アフリカ一般では、女性の社会的地位は極めて低い。女性は男たちより働くが、土地所有も認められず死んでいく。
 この中で、第1党アフリカ民族会議(ANC)所属の議員の3分の1を女性が占め、27閣僚中3人が女性、さらに副大臣職にも女性3人を抱える南アは、例外的な女性躍進の場だ。
 それまで南アあは、多数派黒人の部族首長中心の社会と、一種の開拓者精神が豊かな少数派白人世界に大別され、両者とも極めて男権の強い保守的世界だった。
 ヌコサザナなど一部女性は、選挙までの道筋を決めた制憲交渉が始まった約3年前、各党が女性代表も交渉に同席させるべきだと主張した。しかし、周囲は、その意図すら理解できなかった。「ある白人政党代表は、大笑いしてイスから転げ落ち、『この女どもをオフィスから台所に追い返せ』と叫んだほどだった」とヌコサザナは回想する。
 それでも、結局は参加が認められ、女性団体が起草した「女性憲章」の精神が、南ア国民全般の基本的人権を定めた「権利宣言」にも反映され、女性の法的平等を勝ち取った。南ア女性の社会進出は遅れている」と語る。
 特に、長い間、教育の機会を与えられなかった農村部の黒人女性は、ANC内での女性躍進とは裏腹に、まだまだ「解放」されていない。
 黒人社会ではこれまで、遺産相続権を女性に認めなかった。また、結婚にあたっても新郎の家が嫁の実家に子牛を贈り、その代わり嫁の実家は結婚後、娘に対する発言権を失うといった慣習が残っていた。これら「慣習法」が支配し、長老を頂点とする男性支配を決めた伝統社会は、他の黒人アフリカ国家同様、根強い。
 南ア黒人女性は現在、新憲法によって基本的人権を保護された。さが、ヨハネスブルク。ウイッツ大学政治学部のシーラ・メインキス講師(45)は、実際に、遺産相続などで問題が起きると、黒人女性は自分の権利を知らなかったり、あるいは、村八分になることを恐れて、新国家と伝統社会の価値観の板ばさみになってしまう、と指摘する。
 黒人社会の伝統に話しが及ぶと、ヌコサザナも歯切れが悪い。彼女を含め、黒人指導者の多くが王族や名門出身で、伝統秩序の上に現在の地位を築いたからだ。
 「女性の社会進出増えれば、習慣法の不要な部分も自然消滅していく。私の娘たちの時代は、大きく変わっているはずだ」と、社会全体の変化の行方が、黒人社会も変えるという点に期待。「今後、マファーマティブアクション(人種別雇用優先政策)などの政策が、女性全体を救済しなくてはならない」と力を込める。
 南アにとって、性差別という「第2の差別」の問題は、人種差別問題と同様、法的には解決し、新たな実践を重ねていく段階に来ている。(敬称略)

1995.1.14 読売新聞