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南ア連立政権に亀裂

南ア黒人国民党が離脱警告
弾圧関与者の免責特権 ANCが剥奪

 アパルトヘイト(人種隔離政策)下の黒人弾圧や迫害に関与した閣僚などの責任問題をめぐって、南アフリカ政府が、昨年5月の発足以来最大の危機を迎えている。旧白人政権党で、現連立政権の第2党である国民党のデクラーク党首(副大統領)は19日夜、全人種参加選挙後初の党大会で、最大与党アフリカ民族会議(ANC)を「私と党を屈辱した」と激しく非難、マンデラ大統領が人種和解の象徴として率いる連立政権の国民統合政府から、離脱する可能性もあると警告した。アパルトヘイト体制下の過去の清算をめぐって、南ア第1党と第2党の亀裂が急速に深まっている。

発足以来、最大の危機

 国民党政権は昨年4月選挙前、それまで反アパルトヘイト活動家の弾圧、暗殺などにかかわってきた当時の閣僚、治安警察官約3500人が白人政権崩壊後も罪を問われることがないようにするため、ひそかに刑事免責特権を与える法的処置を取っていた。ANCがその事実を発見、1週間前に公表した。
 ANCが発表した免責対象者リストには、フロック元法秩序相、マラン元国防相、ファンデルメルベ警察庁長官らの名が並んでいた。元法秩序相は、当時非合法組織だったANCなどの黒人解放組織を狙った暗殺部隊を組織したとの疑惑が持たれている人物。他にも、ANCの故スロボ住宅相の前夫人を小包爆弾で暗殺した実行犯の警官も、免責されていた。
 ANC出身のオマール司法相は、最近になって初めてこれらの事実を知ったとし、免責措置を不当として再調査を指示した。
 このため、マンデラ政権は18日、「免責を求める申請は受理されたが、最終決定はなされていなかった」との見解を発表。これらの免責特権を事実上、剥奪することで、閣僚で合意をみたと発表した。
 しかし、逆に国民党内では、多数派ANCに押し切られたとの敗北感が強まり、デクラーク副大統領が党大会の演説で「ひどく屈辱された」「(マンデラ政権内での国民党の)地位を再考しなければならない」と怒りをあらわにした。
 ANCは、閣僚、警察官が免責を求めた場合、旧体制下での政治犯罪を裁く「真実調査委員会」にかけて判断すべきとの立場を取っており、一括の免責特権付与は犯罪覆い隠すものだと強く反対している。
 これに対し国民党は、アパルトヘイト下でテロ活動などに従事した黒人活動家や1万人以上にも同時に免責処置が与えられたことが問題視されないのは「不平等」と主張している。
 マンデラ、デクラーク両氏は20日、大統領府で会談、危機打開を試みている。だが、「アパルトヘイト下での加害者と被害者の政治犯罪は、同じレベルで論議できない」(ANC筋)とするANCと、「人種和解を推し進めるのなら、両者を平等に扱うべきだ」とする国民党の隔たりは大きく、感情的対立も加わり、問題はこじれそうだ。

1995.1.21 読売新聞