南アフリカの古いニュース

アパルトヘイト後の南ア
難航する教育再編

旧白人学校を占拠
黒人児童生徒3000人 小学校が飽和状態で

 アパルトヘイト後の時代を迎えた南アフリカ共和国のマンデラ政権は現在、長年の黒人差別が残した人種間不平等の是正に取り組んでいる。不平等は特に初等教育の分野で目立っており、黒人側の強い期待と白人側の焦燥間の前に、教育再編は極めて困難な事業と言える。

学籍未登録者180万人にも

 ケープタウン郊外ルイターバハト。旧黒人居住区に近く、住民6000人のほとんどが白人貧困層とカラード(混血)の地区で、最近、マンデラ大統領自ら「南ア社会の病巣」と呼んだほど人種間対立が深刻化している。
 事件の発端は、先月中旬、廃校となっていた町の中心部の旧白人専用学校に、黒人児童・生徒3000人がバスでやって来て学校を占拠、自主開校したことだった。生徒は、15キロ離れた最貧困地区の子どもたちで、近くの小学校が飽和状態のため、この拳に出た。
 白人側は、「子どもの付き添いで来た若者たちのせいで治安が悪化した」と反発、ムチや番犬を使って黒人を追い回した。黒人側も講義デモで対抗。白人右翼が夜間、学校の講堂に放火するなど、対立はエスカレートした。
 ケープタウンのある西ケープ州は、全国9州の中で唯一、旧白人政党・国民党が州政府を掌握しており、その州教育相は、白人住民の嘆願を受けて、学校閉鎖を命じた。
 それに対して、黒人主導の第1党・アフリカ民族会議(ANC)系のPTA組織「全国教育調整委員会」は、閉鎖命令を覆し、黒人生徒への学校開放を決定した。ANCにとって教育改革は、妥協が許されない死焦眉の急だからだ。
 南ア政府は先月末、教育白書を発表したが、それによると、昨年末までに学籍登録しながら、飽和状態の教室に入れない児童・生徒は全国で5〜6万人。さらに、6歳から18歳までで学籍未登録の者は180万人上る。そのほとんどが黒人だ。
 このため、教育相は、黒人の就学率を高めるため、各州で旧白人専用学校に大量の黒人生徒を編入し始めた。黒人生徒の中には、白人の主要言語であるアフリカーンス語や英語を話せない者が多く、各地で白人からの反発が起きている。
 ルイターバハトの白人側の反対運動リーダー、牧師クース・ファンレンズブルクさん(27)は、「多数派支配がどんなものか、初めて思い知らされた」と語る。
 反対に、隣の旧黒人居住区ランガのルムカ・ノンガラザ総合中学校長(黒人女性)は、「何を前時代的なことを言っているのか。アパルトヘイトという白人優遇制度が生んだひずみを埋め合わせのに、なぜ協力しないのか。要するに彼らは黒人との平等な競争に自信が持てず、いまだに国有財産を私物化しようとしているだけだ」と反論する。
 高等教育でも、学生の要求は高まっている。黒人大学生で組織する南ア学生同盟は、奨学金の早期支給を求め、国会前でデモを展開し、今月3日には、西ケープ州教育相を「アパルトヘイト時代の遺物」として、更送を要求。さらに、白人専用学校の占拠など実力行使に及ぶと警告、要求は次第に過激になってきている。
 南ア教育界では、これまで無視されてきた黒人史や、アフリカ文学の導入、差別語排除などのカリキュラム変更が徐々に進められている。
 だが、義務教育(6〜13歳)ですら、その前提となる「教育の場の確保」すら困難で、「全児童を学校に入れるだけで、今後10年間はかかる」(ベング教育相)という。今後、ルイターバハトのような人種間対立が各地で多発する恐れが強い。

1995.3.8 読売新聞

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