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南アをめぐり中台綱引き

 中国と台湾が、南アフリカ共和国との外交関係をめぐって確執を深めている。マンデラ・南ア大統領は7月、中国との国交樹立のため台湾と断交することはないと言明したが、来年の香港の中国への返還もからんで、南アをめぐる中国と台湾の駆け引きが今後活発化しそうだ。

台湾
揺れる国際戦略の柱 関係強化図る動き

 台湾当局は南アとの現在の外交関係に当面変更はないとみている。しかし、中国が来年の香港返還をにらんだ「香港カード」を使う可能性もあり、今月末にも徐立徳・行政院(内閣)副院長を南アに派遣して関係強化を図る動きが出てきている。
 徐副院長は森林造成計画、中小企業への援助、退役軍人の職業訓練など多岐にわたる共同プロジェクトの打ち合わせを行うとみられる。7月初めのマンデラ発言を引き出したことで、南アとの関係継続に一応は成功したが、具体的な財政支援計画なども含めた詳細な検討を続けていくことで、さらにパイプを太くしていく思惑がありそうだ。
 台湾は、連戦副総統のドミニカ共和国訪問、章孝厳外交部長のハイチ訪問など再び積極的な実務外交に動き出した。7月下旬には台北で、中米7カ国外相らとの合同協力会も開いた。
 こうした外交攻勢が力を持ち得る背景の一つには、南アの存在があることは確かだ。台湾が外交関係を結んでいる31カ国の中でも、南アは国際社会への影響力からみて最大の国家だ。南アとの関係が崩壊すれば、国連再加盟をゴールとする台湾の国際戦略は狂うことになりかねない。
 南アは香港に総領事館を置いている。中国は外交関係のない国には返還後の香港総領事館設置を認めない方針で、南アに対してはこの「香港カード」を武器に、強く国交を迫ることが十分考えられる。
 南アは香港返還後も引き続き総領事館を置くことを希望しており、中国との協議が始まれば、マンデラ発言が修正される可能性は否定できない。

中国
経済・「香港」武器に 時間かけて国交迫る

 中国は、南アに台湾との外交断絶を粘り強く迫っていく構えだ。
 江沢民・国家主席は今年5月、アフリカ6カ国を訪問した。
 10カ国が台湾との外交関係を持つ「台湾外交の拠点」のアフリカで、これ以上台湾の力が広がらないようにくさびを打ち、大国南アをけん制する意図があるのは明白だ。
 南アは台中との外交関係を維持する「二重承認」を中国に求めているといわれるが、中国は「一つの中国」の大原則を変えるわけにはいかないため、今年中の樹立という観測が強かった南アとの国交問題の解決には、まだ時間を要するとの見方が強まってきている。
 しかし、中長期的にみて、南アはとりわけ経済面で中国との関係強化の道を歩まざるを得ないだろう。
 南アの対中貿易額が近い将来、台湾との貿易額を追い抜くのは確実で、来年の香港返還も南ア引き寄せる要因といえる。また、南アが今後国際舞台で活躍するためには、国連常任理事国の中国の支持が欠かせない。
 このような情勢をにらみつつ、中国は時間をかけて南アの軌道修正を求めていく方針のようだ。崔天凱・外務省スポークスマンは「南アフリカが中国との国交問題でさらに時間が必要ならば、我々は待つ」と明言している。

南ア
台湾断交も視野に 中国の出方うかがう

 中国の南アに対する圧力が強まった今春、対中正常化と台湾断交の決定が近い、と見られた時期があった。しかし、現在は南ア側からは行動を急がないようだ。中国の今後の圧力の強弱が、南アの方向転換のかぎとなるだろう。
 南アの外交当局に、これまでの「中台二重承認論」から「台湾断交やむなし」の見方が強まったのは、昨年夏に下院外交委員会の調査団が訪中し、銭其深外相から「中国との国交樹立には台湾との断交が先」と警告されてから。同委員会は報告書で、中国との正常化がなければ、南ア航空の香港乗り入れなど香港での南ア権益が損なわれる可能性を指摘した。中国はヌゾ外相の訪中(今年3月)、呉儀・対外貿易経済協力相の南ア訪問(同4月)で、台湾断交への「ものすごい圧力」(南ア外務省当局者)をかけたといわれる。
 だが、南アは6月末から7月にかけて、ヌゾ外相を今度は台湾に派遣した。台湾はその際、台湾との断交は南アへの投資や進出企業にいる雇用促進に悪影響を及ぼす、と警告した。
 南アの本音は、台湾と断交するとしても「やむをえず、(中国の)大きな圧力に屈して」という形にしたい。香港返還の影響や、中国の今後の圧力などによって、あらたな決断を迫られることになるだろう。

1996.8.11 朝日新聞