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南ア新憲法 差別主義と完全決別
国民参加重視、「人権」貫く

 南アフリカ共和国は、マンデラ大統領が10日署名した新憲法により、国家が人種差別を合法化したアパルトヘイト(人種隔離政策)の醜い過去を完全に葬った。人種平等、人権に重点を置く新憲法は、政党間の対立と妥協の産物だが、その価値は、各派が分裂することなく交渉が民主的に行われ、新憲法の成立にこぎ着けた点にある。
 署名式は、アパルトヘイト時代の1960年、黒人に身分証明書の携行を義務付けた「パス法」反対集会に警察が発砲し、69人を射殺した「シャープビル虐殺」の現場近くのスタジアムで行われ、虐殺の生存者22人も出席した。
 新憲法に署名したマンデラ大統領は「我々の歴史をのろったシャープビルのような数々の事件を経て、いかなる力にも屈することなく、人命と自由、よき生活を尊重すべきとの固い決意が生まれたのだ」と語り、式典を盛り上げるコーラスをバックに、歓喜に満ちた顔で踊り始めた。スタジアムの観衆も、来賓席のゲストも、記者席の記者も踊り、新憲法を祝った。
 94年の全人種参加選挙後に起草が始まった新憲法は、いかなる差別も認めず、同性愛を含む「性的志向」の自由も認めたリベラルなもので、逮捕された人の権利条項に2ページを割くなど、人権に最も配慮を払っている。
 また、インターネットなどで一般国民から意見を募り、起草にあった諸政党が約200万人以上の声を反映させた「国民参加型」憲法の初の成功例で、今後議会が定期的に見直しを図るのも特徴だ。
 制憲交渉の過程では、南ア最大部族のズールー族を支持基盤とする黒人右派政党、インカタ自由党(IFP)が交渉を離脱。旧白人支持政党の国民党も、第1党のアフリカ民族会議(ANC)の単独政権を可能にする新憲法に反発して下野するなど、政党、人種の利害が真っ向から対立した。
 しかし、国家再分裂の危機が回避できた背景には、2年間続いた制憲交渉の努力を無にしたくないとの各党の意見の一致があり、こう着状態にあった交渉は、現行暫定憲法が定めた採択期限(今年5月9日)前の最後の約3か月で急転直下の妥協に至った。
 圧倒的多数を誇るANCに有利な草案が出来上がったのも事実だが、これに「待った」をかけたのが憲法裁判所だ。ANCが中央政府の権限強化を狙ったのに対し、暫定憲法よりも州、地方の権限を縮小してはならないとする合意済みの原則を指摘。州、地方政府の権限をさらに明確にするよう修正を求め、5月に採択された草案を制憲議会に差し戻した。
 難航が予想された修正作業も、わずか1か月で終了し、今年4日、憲法裁判所が修正案を承認。最後まで新憲法に抵抗したIFPも、「合法的な改正手続きを探る」とした上で、裁判所の決定を受け入れた。
 新憲法の成立を受け、南アは今後、かつて制度上の不利益を被った黒人が、その後遺症で克服できずにいる教育、就労問題、社会復帰問題などや、真実委員会によるアパルトヘイト時代の人権侵害の調査、記録という「過去の清算」に取り組むことになる。

1996.12.13 新聞不明

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