誘いの方法


最初に断っておきますが,私はそんなに美人でもピチピチでもありません.むしろとうが立ってるかな.(苦笑) それでも,この国で女性が一人で外歩いていると,このくらいうっとうしいってことなんです.まして若くてキレイな方なら...覚悟しておいて下さい.(笑)

こちらの男性は,一人歩きの女性には視線や合図を送るのが当然,といった感じで,1人で歩いていると,すれ違いざまに露骨に歩くペースを落として(目当ての女性にあわせる)チラチラではなく首を真横にして,通り過ぎては何度も振り返ってまでじろじろ見つめます.不思議と友達と歩いているようなときはこういう経験は無いので,一人歩きの場合だけだと思います.

一昔前のスペイン(カタルーニャは知りませんが)では,見るだけでなく,ピロポと言って下品な言葉(いちおう賛辞らしい)もセットになっていたようですが,最近では,バルセロナはもちろん,マドリッドやアンダルシアに行ったときも,視線だけ,もしくはちゃんと「ちょっと飲みに行こうよー」などと話し掛けてくる,という感じでした.

別にこっちは悪いことしてるわけではないのに,やっぱりそんなじろじろ見られると気まずいので,思わずこっちが違う方向いたり目をそらして歩くはめになってしまいます.目をあわせたら話し掛けられてしつこそうだし(実際むちゃむちゃしつこいです).こちらもうっとりしてしまうような見つめられ方ならうれしいかもしれないのですけどねぇ...
見られるだけなら,まあ減るもんじゃないし(でも穴が開くんじゃないか心配なくらいなんですが)無視していれば,少し居心地悪いくらいで腹立つことも無いのですが,いやなのは,舌でチュッチュッとしながら通り過ぎる人達です.これがけっこういるんですよ.そんな,小犬じゃないんだから,舌鳴らされたからってシッポふってついていくわけないじゃんかぁ,と,考え過ぎかもしれないけれど,けっこう不愉快になってしまいます.また,しつこいんですよ.完全に通り過ぎてもしばらくは後ろを振り向き振り向きです.それで前から来た自転車にぶつかって怪我したといかいう人多いだろうな,と思います.
注意を引きたいなら,ちゃんと声かけなさい,舌鳴らしや口笛なんかで微笑んでもらおうなんざあ,一万年早くってよ!と思うのですが(笑),相手にするのもなんなんで,こっちも思い切り首を違う方に向けてシカトしています.まあ彼らもたいした意図は無く,どうせ歩くならついでに目に付いた女性には合図を送っておこう,礼儀だし,くらいで,言ってみれば,マクドナルドのお姉さんがハンバーガー渡すときに,ついでにスマイルも,くらいのノリなんでしょうけれどね.と,わかっていてもムッとしてしまうのですが.

じゃあ声かければいいのか,というと,もちろん舌鳴らしよりは数段上だと思いますが,そりゃ努力の方向が違うだろ,というような勘違いおじさんも多いです.声かけられてから振り切る間まで延々と,カラダのラインが美しいとか,脱いだ姿を想像したらたまらないとか,これだけ美しいなら,****もきっと美しいだろう,とか言われても...(苦笑) 君はアダルトビデオの監督かっ!と突っ込みたくなります.どんなに飲みに行こうと粘られても,そんなこと延々と言われたら,ますますヤバイと,絶対振り切ろうと思いますよねぇ.ちなみにこういうのはカタラン人ではありません.

上記の例はまあ極端な方ですが,普通の「飲みに行こうよぉ」でも,共通しているのはとにかくシツコイです.「疲れてるから家に帰るところ」と言うと,家の玄関までずっといろいろ話したてながら並んで歩いてきます.最後に玄関前で「どうしてもダメ?」と聞き,ノーと言うと,さすがにそれ以上入って来たら犯罪ですからそこでバイバイしますが.ちょっと家から遠いときは「タクシー拾うから」というと,じゃあタクシー捕まえるまで一緒に待ってるよ,と,ダメと言っても最後の最後まで頑張ります.振り切っているときでもこれだけの努力をしますから,一度飲みに行きでもしたら,2度目の約束は必至になってしまうんですよね.彼らは心理学でいう認知的不協和の理論を生まれながらにして知っているんじゃないかと思ってしまいます.

認知的不協和というのは,人間が自分の中で矛盾を生じないよう,過去の自分の言動にひきずられた言動を無意識にとってしまうということを説明した理論です.ちょっと難しく聞こえるかもしれませんが,例えば,あなたが友人Aさんに何か頼まれごとをしたとします.それに対して,簡単なことなら人のいいあなたは快く引き受けたとします,次にAさんが,ちょっと面倒だな,というようなことをまたあなたに頼んできたとします.あなたは,少し躊躇を覚えても,前は快く引き受けちゃったから,今回はダメとは言いにくいな,と思い,つい引き受けてしまいます.この,2回目の意思決定のプロセスを説明するのが,認知的不協和なのです.
「前はOKしちゃったし...」これを応用した手法は,某米国系大企業(●社としておきます)の営業の方は社員教育でみんな習っているんじゃないか,と思うことがあります.私は以前,プリセールスという部署にいたのですが,その会社の営業員は,●社出身者が圧倒的に多く,彼らはみな,徐々にこちらが彼らの依頼を断れない状況にするのが上手でした.いやいやでも,つい「前も引き受けちゃったしなぁ」と,また引き受けてしまい,プリセールスのメンバーがどんどん深みにはまっていくのでした.私は最初が肝心,今回引き受けたらまた次も来るな,との教育心から,心を鬼にして明らかに無駄な仕事や無茶な依頼はあっさり断っていましたが.(苦笑)
本来はこの手法は客に対して取るためのものであって,社内の関係で使うのは反則だと思うんですが.
あと,恋心を抱く相手にも使わない方がいいでしょう.私も認知的不協和の罠に落ち,自分で納得いかないまま,でも断る理由が見つからなくて付き合い始め,ずるずる断りそびれているうちに深みにはまっていってしまったという経験があるのですが,しょせん「納得いかないまま」なんです.まあ相手に有無を言わせずそのまま押し倒そう,てなこと考えている場合はそれで充分なんでしょうけれど,そうでない場合は,ちょっとひいて,相手の違和感をなくさせてから再アプローチする方がいいでしょうね.押してだめなら,とはよく言ったものです.もちろんひいた途端に逃げられる,という可能性もありますが.(爆)

と,話がだいぶ外れましたが.(笑) そんな感じで,こちらに来て最初の頃は,道で話し掛けられると,最近日本ではそういうことも少なくなっていたので(苦笑),ついニコニコと話などしてしまっていたのですが,すぐに,そこから次ステップがとても断りにくいことに気づき(断り切れず約束して反故にすることを何度か重ねて),たとえ他に方法がなかったにせよ約束を破るのはあまり気持ちのいいものではないので,道で話し掛けられても適当に生返事をするようになりました.

断るのに何が難しいかと言って,日本人なら,普通の人は,相手が気が無さそうとか,明らかに迷惑そうな調子で対応すれば,察して無理強いはしないというか,自然な感じで引いていくじゃないですか.それが通じないのですよ.どんなに迷惑そうな顔しても,しばらく忙しいからいつ会えるかわからないと言っても,それでも攻めてくるわけです.断り切れずに電話番号教えちゃったら,いつ会えるってしつこく電話してきて,忙しいから暇になったらこっちから電話するって言っても相変わらずもう数ヶ月になるのに電話してくるおじさんとか(彼もカタラン人じゃないです).日本人ならとっくにわかってくれて止めてくれるんだけどなぁ,とため息です.そんなに,こっちが嫌がってでも会いたいものかなぁ,と,認知的不協和を怨んでしまうのです.嫌々とはいえ電話番号も教えちゃったから,ますます次をはっきりとは断りにくくなっちゃって.理論そのままです.
そういう以心伝心の通じる国じゃないんだから,とも思うのですが,どうもこういうの断るの苦手なんですよね.仕事なら,はっきり,どうして無駄になるか,何が無茶か説明して断れたんですけれど,初対面の相手の誘いは,しょせん「なんとなく気が乗らない」だけなので,なんで?と突っ込まれると答えられないのです.よっぽど,曾祖母の遺言で頭文字■で始まる人とはお茶しちゃいけないんだ,とでも言おうかと思ってしまいます.
そんなわけで,ここ数ヶ月,友達から明らかに電話がかかってくる予定の無いときは,線抜いちゃってるんですけどね.(苦笑) こういう苦労もあるんで,やっぱり最初が肝心,電話番号はちょっとでも迷いのあるときは嘘を教えるべきでしょう.



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