
このインタビューは,Socialist WorkerではJohn Pilger on Bush’s occupation of Iraq "They put the lie to their own propaganda"(ジョン・ピルジャー,ブッシュのイラク占領について語る「彼らは彼ら自身のプロパガンダに嘘を塗り重ねた」)と題されているもので,ピルジャー制作のドキュメンタリー番組,'BREAKING THE SILENCE'に関するものです。内容から察するに,このインタビューはこの番組の米国でのオンエアに先だって取材されたもののようです。
このドキュメンタリー番組は,英国では9月に放送されています。番組放送当日にピルジャーがDaily Mirrorに出した記事と,視聴者の番組の内容紹介は当サイト内『Lies and More Lies 嘘,また嘘』をご参照ください。
ジョン・ピルジャー氏はベテランのジャーナリスト・ドキュメンタリー作家である。足掛け30年以上に及ぶキャリアにおいて,氏はヴェトナム,東南アジアからアパルトヘイト時代の南アフリカによって攻撃されていた隣国,さらに中東のパレスチナやイラクなど,米国政府の最もひどい戦争犯罪の現場から,レポートし続けてきた。
氏の新作ドキュメンタリー,『沈黙を破って――対テロ戦争の真実と虚構/Breaking the Silence: Truth and Lies in the War on Terror』において,氏はブッシュ大統領とブレア首相によって進められたイラクに対する戦争について厳しく検証し,2001年に録画されていたパウエル国務長官とライス補佐官のテープ――イラクは軍事的脅威ではなく、10年前の湾岸戦争以来大量破壊兵器は作っていないと明言する内容――を白日の元にさらしている。このドキュメンタリーは英国では世界に先駆けて9月に放送された。氏の最新著書,The New Rulers of the Worldは,ブッシュ大統領のいわゆる「対テロ戦争」をカヴァーすべく加筆修正をほどこした文章を集めたものである。
以下はSocialist Workerのアンソニー・アルノーヴ(ANTHONY ARNOVE)が,なぜ米国は戦争に走ったのか,そしてなぜ植民地主義的占領が危機に陥っているのかをテーマに,ピルジャー氏に行ったインタビューである。
――ドキュメンタリー『沈黙を破って/Breaking the Silence』では,コリン・パウエルとコンドリーザ・ライスがイラクは脅威ではないと認識していたという証拠をはっきりと示されましたね。この証拠についてうかがいたいのですが。
彼ら自身が自分で語っていたのです。ブッシュ一味の(the Bush gang's)発言を何時間もかけて見ていると,いくつかものすごいフィルムが出てきたんですね。それをドキュメンタリーで使用しました。
2001年2月24日にエジプトのカイロで,パウエルは次のように発言しています。「彼〔サダム・フセイン〕は大量破壊兵器に関しては,何らかの意味があるような能力を有してはいない。彼は隣国に対して通常兵器を発射することもできない。」これはブッシュとブレアが国民に対して述べたこととまるっきり矛盾しています
パウエルは,イラクの独裁者を武装解除させることができたのは,米国の「制裁」政策だとすら自慢気に語っています。これもまた,ブッシュとブレアが繰り返し述べたこととまるっきり矛盾しています。2001年の5月15日には,パウエルはさらに踏み込んだ発言をしています。サダム・フセインは「この10年」の間,「軍隊を再編し,大量破壊兵器を開発」することはできていない,と。米国は彼を「箱の中」に閉じ込めておくことに成功しているのだ,と。
その2ヶ月後,コンドリーザ・ライスが,か弱くバラバラで軍事的には無防備なイラクのことを語っています。「サダムは国の北部はコントロールしていません。彼の武器に手が届かないようにさせておくことが私たちにはできます。彼の軍隊は再建されていないのです」と述べているわけです。
ということは,ブッシュの側近中の側近2名が,自身が次から次へと繰り出したプロパガンダに嘘を塗り重ねたということになります。
――戦争は終わった(the war is over)わけですが,イラクの大量破壊兵器計画に関するトニー・ブレアの「書類dossier」は,どのようにして調査に持ちこたえているのでしょうか。*1
まったく大笑いですよ。例の書類の一部は,米国の大学院生の修士論文からの写しでした。大学院生のスペルミスまでそのままで,「対抗勢力opposition groups」という語が「テロリスト勢力terrorist groups」に置き換えられるなどしていました。あまりにもお粗末な嘘ですね。その他の部分も,情報当局の上級スタッフによって否定されています。ブレア首相自身のスタッフのチーフまで否定したんですよ,ハットン・インクワイアリーの場で。*2
――イラクがアル・カーイダと関係があったとする主張については,何か情報はありましたか。
何もありません。実際,この件に関しては,私の最もよい情報源は米国大統領と国防長官なのですが,当のご本人たちが9月に相次いで,イラクとアル・カーイダには関係があったという考えそのものを否定してしまったわけですから。これが彼らのシニシズム*3のやり口なんですね。国と世界に嘘をつき,米国人の多くが信じるように仕向けておいて,それからそっと,その嘘を間違いでしたと言う。報道をあれこれ見てみますと,アル・カーイダがイラクにいるという証拠は今でさえ何もありません。いや,いるかもしれないですね。しかし,大量破壊兵器と同じで,証拠は一切ありません。
――米国のイラク占領に対する抵抗(レジスタンス)は「外国人テロリストforeign terrorists」によるものだというブッシュ政権の主張を,どのように思われますか。
米国の役人が,米国人を攻撃する「外国人兵士foreign fighters」のことを話すと,途方もなく皮肉に(ironic)なりますよね。まるで米国人がイラク人であるかのようです。むしろ,イラク人は存在しないとでも言うか。
ロバート・フィスク氏が指摘していますが,イラクには20万人の外国人兵士がいて,14万6000人が米軍の制服を着ています。他の国の人もいるでしょう。英米の侵略はアラブ世界に対する攻撃であり,汎アラブ的抵抗が発生しても私は驚きません。フランスのレジスタンスは,特に英国人など外国人によって支援されましたが,おそろしいことになりました。まったく同じことです。現在のプロパガンダは,国家的抵抗(nationalist resistance)の真実をぼやかすことに向けられています。
好きであるかどうかに関わりなく,多くのイラク人にとって,サダム・フセインはある種のナショナリズムの現れでした。いわゆる「サダム支持の残存勢力(Saddam remnants)」はナショナリストです。非常に誇り高い社会ですし,西洋の評論家の一部が私たちに信じさせたがっているほどに,部族同士で対立しているわけではありません。
この占領は確かにヴェトナムに似ていますが,最も近いのはアフガニスタンにおけるソ連の失敗です。さらに,それはまだ本格的には始まってすらいない。シーア派が動くまでは始まらないでしょう。
シーア派の軍隊が水面下で組織されつつあるそうです。彼らにはじっと耐えるという伝統があります。ちょうどイラン王朝のもとでしていたように,じっとその時を待つ。イラク占領もブッシュも,ものすごく大変なことになっていますね。
――政府の欺瞞と不正についての証拠を,メディアが,特に米国のコーポレート・メディアが,報道するまでにこんなに時間がかかった理由は何だとお考えですか。
コーポレート・メディアは国家の一部(an extension)です。こんなことはわかりきったことですが,メディア学科ではまず教えられません。マッカーシズムの時代の報道を振り返ってみましょう。新聞を読み,ラジオのアーカイヴを聞くんです。いくつかの例外はありますが,恐ろしいほど今日と似ています。マッカーシーが権力を握っていた間のほとんどの期間,メインストリームのメディアによって彼のイライラが取り上げられ増幅されていたのです。
あのエドワード・R・マロウ(Edward R. Murrow:参考)でさえ,マッカーシー批判を始めるには,マッカーシーが力を失いつつあった1954年まで待ちました。そのマッカーシーが行き詰まりを見せたのは,米軍が共産主義者だらけになっているというわけのわからない糾弾を始めてからです。メディアの力ではありません。
21世紀になってなお,メディアは「狼が出たぞ!」と叫ぶように「過激派(extremism)がいる」と叫んだのです。the Center for Public Integrityの会長で以前CBSで報道記者をしていたチャールズ・ルイス氏(Charles Lewis)が,もしもメディアがブッシュの欺瞞に挑んでいたならば,イラク占領はなかったかもしれないとおっしゃっていました。すべてが暴かれてとても持ちこたえられなかっただろうと。私もそう思っています。
プロパガンダや権力を代弁するのではなく,真実と民衆の代弁者として行動することは,ジャーナリストの持つ力です。自分たちの有する技術について真面目に考えているジャーナリストが,自身の良心を直視して,自分たちの知性とモラルの感覚を仕事のために歪めることをやめるべき時に来ているのです。
――大量破壊兵器やアル・カーイダとのつながりがでっちあげで,イラク侵攻の口実なのだとすれば,真の動機は何だとお考えですか。
もちろん石油です。それと,中東を直接コントロールすること。サウジ・アラビアは,アメリカの代理役ですが,最近は信用できなくなってきています。米国はイラク全土を,石油のためだけでなく,基地として欲しがっていた。就任式のすぐ後にブッシュとディック・チェイニー(副大統領)が見たthe principal reportsを読んでみてください。外交問題評議会(Council on Foreign Relations)のレポートには驚きますよ。何しろ内容的には「今すぐ行動を起こし,枯渇する前に石油を手に入れろ,さもないと中国がぶんどることになる」と警告しているんですから。
イラク侵略は,アレクサンダー・ヘイグ氏(Alexander Haig:レーガン政権の最初の国務長官。参考)いわく,「デモンストレーションの戦争」でもありました。イラク侵略はブッシュの過激派の強欲さを示すものであり,人類に対して彼ら流の資本主義を押し付けようという決意を示すものでした。そして「気をつけろ。次はお前の番だ」というメッセージを送るものでした。
―― 一般のイラク人の状況はどういうものでしょうか。
私には状況がどうかを言うことはできません。しかし,現地の友人たちの話では,ある友人の書いていたことですが,「ひどすぎる。こんなになるとは思ってもいなかった」のだそうです。バグダッドのある機関が,侵略以降初の信頼できる世論調査を行っています。それによるとイラク人の多くが,一般人にとっての状況はサダム・フセイン政権下よりも悪いものであると思っているということです。
囚人は確実に増加しています。少なくとも4000人が投獄されていますが,おそらく数はもっと多いでしょう。集団懲罰や拷問があります。書物に書かれているありとあらゆる国際法に違反する行為です。アムネスティ・インターナショナルがレポートすれば,一党独裁国家のレポートのようになるでしょう。
――ピルジャーさんは戦後のアフガニスタンに行かれたばかりですね。アフガニスタンの状況からイラク占領について学べることはどんなことでしょうか。
弱くてほとんど防御のない国をつぶす能力が米国には間違いなくある,しかし米国にはつぶした後にそれらの国をコントロールする能力はほとんどない,ということですね。アフガニスタンでは,米国人はバグラム空軍基地(Bagram airbase)に固まっていますが,それはヴェトナムのプレイク(Pleiku:参考)の基地を連想させます。
彼らは不信と敵意に囲まれています。それに彼らには,英国がごく少数の部隊で全人口を掌握することのできたような植民地的状況を築き上げるなどということに関心はありません。米国はイラクから追い出されるでしょうし,その意味するところは,リンドン・ジョンソン大統領にとってヴェトナムが意味したのと同じくらい,ブッシュにとって深刻なものとなるでしょう。私はそう思います。
――現在の危機に対する米国の対処をどう思われますか。米国が主導権を取り戻そうとすると思いますか。
米国には物量と武力はありますから,それはありうることですね。しかしうわべだけで短命のものになるでしょう。
――反戦活動において最優先すべきことは何だと思いますか。
大量直接行動(mass direct action)です。規模がどんなに小さくても。すべての小さな町で,すべての街区で,しっかりと声を上げ,人々に市民的不服従のリスクをすべて引きうける気持ちを持ってもらうことです。
ボリヴィアでは最近大統領が退けられました。貧しい小国のボリヴィアの人々がやったことを米国でもやるのです。はずみをつけるのです。イラクで兵役についている兵士の家族や,イラクで命を落とした負傷したりした人の家族と連携を取るのです。
忘れないでください。反戦運動は民主的な反対勢力なのです。今,反対勢力は他にありません。私の記憶する限り,選択と責任がこんなにも明らかだったことはかつてありません。
*1: 英国政府が「イラクの大量破壊兵器計画の証拠」としたいわゆる「ドッジー・ドシエdodgy dossier」は,「45分以内に使用可能な大量破壊兵器がイラクにはある」とした一節をめぐり,「あれは誇張であった,嘘であった」との内部告発めいた事態となり,その内部告発めいたことにおいて「国防省からの情報提供者」とされた国防省顧問のデイヴィッド・ケリー博士が手首を切った死体で発見されました(2003年7月)。ケリー博士の死の責任の所在をめぐって英国では独立調査委員会が設けられ(委員長がハットン卿なので「ハットン・インクワイアリー/Hutton Inquiry」と言います),役人やジャーナリスト,閣僚,さらにはブレア首相も証人として喚問され,証言を行いました。
*2: おそらくはアレステア・キャンベル氏のことでしょう。キャンベル氏はブレア政権誕生時からの「スピンドクター」(「ドクター以上」の意味も込めて「スピンマイスター」とも)で,この人がいなかったらブレアの「清新な若きリーダー」のイメージはなかったかもしれないとさえ言えるような大きな存在です。広報担当のトップとしてブレアの側近中の側近の地位にあり続けてきましたが,ハットン・インクワイアリーが行われている期間中に辞任を表明しました。(「この仕事は忙しすぎて家族と一緒にいられないから」というのが理由でした。)なお,ハットン・インクワイアリーの全証言はウェブでHTMLドキュメントで公開されています。閲覧するのに個人情報の登録などはまったく必要ありません。http://www.the-hutton-inquiry.org.uk/
*3: どうにもこうにも日本語力に乏しくてうまく日本語にできないのですが,「シニシズム cynicism」とは「皮肉」というよりむしろAn attitude of scornful or jaded negativityです。日本語の「皮肉」だとちょっと意味がずれる気がして,かといって話し言葉として適当な別な表現も見つからず,待ってても浮かんできそうにないので,カタカナにしちゃいました。仕事が雑ですみません。
You are fighting a group that is in their home. If it was me and someone was to come into my home, I’d be throwing some lead downrange.words from frontlines:イラクに派兵された米軍兵士の生の声。
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The way we have been treated and the continuous lies told to our families back home has devastated us all.
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We're conquerors to them. It wasn't supposed to be like that.