I Know When Bush Is Lying: His Lips Move
ブッシュが嘘をついてる時はわかるよ。だって唇が動くんだもん。

2003年11月21日
John Pilger|ジョン・ピルジャー
公式サイト(英語)
 
原文@Zmag(英語)

この記事が掲載されたのは英国の雑誌,New Statesmanです。


ブッシュ大統領訪英*1の少し前,トニー・ブレア首相は戦没者記念の日曜日*2に戦没者記念碑(the Cenotaph:ロンドンの官庁街にある)に花を捧げた。すでにすり切れていた体面を完全に失っている国家的殺人者(state killer)のあの姿はめったに見られないものだ。「英霊たち」におざなりに頭を下げるその顔は,罪の意識で顔色を失っていた。タイムズ紙のウィリアム・ハワード・ラッセル記者(William Howard Russell)は,クリミアでの死体の山に責任のあった首相について,「手を血に染めた人物のような足取りだった」と書いている。ブレア首相は,女王へ敬意を払うと――女王の大権がイラクにおける犯罪をブレアに起こさせたのだが――そそくさとその場を去った。「目立たぬよう家に帰って,若さと笑いが落ちた地獄のことなど知ったことではないと念じるがよい」とは,1917年にジークフリード・サスーン(Siegfried Sassoon)が書いていることである。

ゲーム・オーバーなのだとブレア首相にはわかっているはずだ。英国を訪問したブッシュ大統領がどう受けとめたられかにそれが表れている。それに,CIAもイラクでの抵抗(resistance)は推定5万人によるもので,「広汎にして強大で,ますます力を強めている」と発表しているではないか。ホワイトハウスに出されたある報告書には「私たちは負けるかもしれない」とある。今や為すべきことは「幕引きを考えること」なのだ。

彼らの嘘はとうとうお笑いになった。ブッシュ大統領はデイヴィッド・フロスト氏(David Frost:BBCのキャスターで辛辣で鋭いツッコミで知られる)に,サダム・フセインの核兵器は「とても進んでいるものなので」,世界はフセインの核兵器に対する態度を変えなければならないのだと述べた。私が好きなのはドナルド・ラムズフェルドによる今後の見通しである。「すでに判明している既知のわかっていることがありまして,わかっているとわかっていることがありましてね。しかしまだ判明していないわかっていないことがあり……私たちがわかっていないということがわかっていることもあります。そして毎年,わかっていない未知のことをさらにいくつか見つけるわけです。」[ママ *3]

過日ワシントンで米国情報機関の高官や外交官,国防省の元高官らによる前例のない集まりがあった。レイ・マクガヴァン氏(Ray McGovern)――CIAでアナリストを務めていたことがありブッシュ大統領の父の友人でもある――の言葉を借りるが,「今だかつて合衆国にこれほど臆面もなくこれほど頻繁にこれほどこれ見よがしに嘘をついだ大統領はいない。……今や想定しなければならないのは,彼が何かを口にする時はいつでも,彼は嘘をついているということだ」ということがその集まりでは語られた。

ブレア首相と外務大臣(ジャック・ストロー)は,ブッシュ大統領一味(the Bush gang)の嘘を見破った何十万人という人々のことを,「ファッションで反米をやっている」のではないかと言った。最近ジャック・ストローが彼ら自身の虚言癖の見本を示している。BBCのラジオ4(BBC Radio 4)で,ブッシュ大統領とワシントンの「予防的戦争(preventive war)」のドクトリンを擁護して,「先ほど話に出た(国連憲章の)第51条は,自衛だけはできるとしているとあなたはおっしゃる。しかし,第51条は,各国がいわゆる『予防的措置』を講じる権利についてのものですから,自衛以上のことに適用されるのです」と語ったのである。

ストローの述べたことは片言隻句に至るまで嘘であり,でっちあげである。第51条は「各国がいわゆる『予防的措置』を講じる権利について」は言及していない。それに類するものにも言及していない。国連憲章のどこにもそのような言及はない*4。第51条は「武力攻撃が発生した場合の個別的または集団的自衛の固有の権利」についてのみ言及しており,それ以上の権利を規制するものである。何よりもまた,国連憲章は予防的戦争の権利を主張する国を保護の対象から外すようにつくられているのである。

つまり,ストロー外務大臣は国連憲章についてありもしない条項を捏造し,それを事実として電波に乗せたことになる。外務大臣が本当のことを言えばパニックを引き起こす。先日外務大臣は,ワシントンで行われたポール・ブレマー行政官(米国のイラク総督)との極めて重要な会談にブッシュ大統領がストロー外務大臣を参加させなかったということを認めた。大臣は,「その会談の当事者ではなく,ブレマー氏の帰国の当事者ではなかったので」と述べた。外務省の記録からは,大臣が「英国と米国が文字通りの占領国であり,我々がその責務を果たさねばならないのに」とこぼしたということは落ちている。米国の手下のナンバーワン(principal vassal)を米国が軽視しているということが,これほどに明らかになったことはない。

双方ともに今や必死である。ブッシュ政権のパニックはイスラエルの反撃方法を採用したことに現れている。F-16を使って500ポンドの爆弾を「疑わしい区域」とされる住宅街に落とすのだ。作物を焼き払うこと――これもまたイスラエルのやり方だが――も始めている。今やパレスチナやヴェトナムがダブって見える。そして,ヴェトナム戦争の最初の3年間で死んだ米兵よりも多くの米兵がイラクで既に死んでいる。

ブッシュ大統領やブレア首相が「我が精鋭なる軍」の「勇気」を持ち出せば,魔法にかけられたように国民が支持するという時期はもう終わった。インディペンデント・オン・サンデーの1面に「夫は犬死しました」という見出しが踊る。故イアン・セイモア特殊部隊員の妻であるリリアン・セイモアさんは,「彼らは軍隊を騙して行かせたんです。誤ったことをしておいて,後から口実を見つければいいなんて,とんでもない話です」と語っている。彼女の道徳的ロジックは,ブレア首相のさびれゆく宮廷ではどうかは別として,英国民の大多数のものと一致する。インディペンデント紙のライバル,戦争煽動新聞のオブザーヴァー紙*5が今や何と古臭くくたびれて見えることか。オブザーヴァー紙は誇るべきリベラルな伝統を捨て去り,セクシーな記事(←現物を見てないので訳語違うかも。titillation)や手書き文字のページを設けているが。

「あちらの(out there)」イラク人の死者や苦しむイラク人はいまだに人間扱いされず,最も新しい死者数は新聞の1面に載せるネタとは扱われない。アムネスティのレポートもまた同様で,監禁の上で拷問したことや目隠しをして武器を用いて殴る蹴るなどの暴行を長時間働いたことで,捕虜となっていたイラク人が米軍や英軍を訴えていることは伝えられない。アムネスティの調査団は20名の元捕虜から証言を得ている。アムネスティのリサーチスタッフは「1件では,ある男性に対して電気ショックが使われた話をしています。……一晩中人を殴り続けてその人が血まみれになり,さらに殴る側が歯を折ろうとしている場合,それはもはや殴るという域を超えています。拷問です」と述べている。米軍は4000人以上を捕虜としているが,それはサダム・フセインによって投獄された人の数よりも多いと推測されている。

キューバのグアンタナモ湾にある米収容所*6に収容されている英国人の家族の会合がかなり以前から予定されていたのだが,外務省の閣外大臣*7,バロネス・シモンズ(Baroness Symons*8)は,ブッシュ大統領がロンドンに来ていることを理由にそれを延期した。シモンズ閣外大臣は会合の延期を繰り返している。収容されている英国人の家族やその弁護士は,拷問があるとか,収容されている人の精神状態が極めて悪化しているとかいったことや,英国でのムスリム・コミュニティへの非難といったことについて質問をしたがっている。何ら進展なく2年間とらわれているこれらの英国人は,米国の戦争屋の都合のために,権利を軽視されているのである。

ブレア首相の困難は始まったばかりである。英国が占領しているイラク南部でシーア派が結集し始めているという兆候がある。シーア派の地下軍隊が,静かに決して急がずに組織されつつあると言われているのだ。彼らが立ちあがったら,首相の手を染める血の量はまたたくさん増えるだろう。

11月11日の戦没者記念日に,ハイウェル・ウィリアムズ氏(Hywel Williams)がガーディアン紙に書いた記事には心を動かされる。氏は「キャリアを積み,前進する理由のある者による……利用できる過去――プロパガンダに仕立て上げられるもの」の搾取について書いている。「私たちは今や,戦争の喪に覆われた国なのである……今ここでの戦没者への追悼はもはや毎年恒例の行事ではない。ひとりひとりの魂が,マスコミによって米英の戦争の正当化に利用されているのだから*9,絶え間なく続く死の祭典なのだ。この悲しみに終わりは見えない。」*10

その通りだ。ただし私たちがそうさせてしまうならばの話だが。

 

Jim Brannに多謝 (←Pilgerによる謝辞です)


*1:
ブッシュ訪英は2003年11月18〜21日(22日だったかも?)。米国大統領が国賓として訪英するのは1918年以来とのことで何もなければ大西洋のあちらとこちらで華やかに盛りあがったかもしれないが,このご時世なのでものすごい厳戒体制にものすごい抗議デモに,挙げ句は「ブッシュの銅像が引き倒される」というパフォーマンスまで飛び出しました。

*2:
英国の戦没者記念日Remembrance Dayは11月11日(第1次世界大戦の終戦日)。戦没者記念の日曜日Remembrance Sundayは11月11日に最も近い日曜日で2003年は11月9日。赤い造花(ポピー)が戦没者追悼のシンボルです。→参考:首相官邸のサイトarmyのサイトabout.comによる基本情報

*3:
そのまんま日本語にすると誤植っていうか未整理原稿みたいに見えるので,原文に100%忠実に日本語にすることは避けました。言語不明瞭意味超不明のお笑い文としてかなり有名なラムズフェルド発言,原文は→The message is that there are known knowns - there are things that we know that we know. There are known unknowns - that is to say, there are things that we now know we don't know. But there are also unknown unknowns . . . things we do not know we don't know. And each year we discover a few more of those unknown unknowns.

*4:
「国連憲章」
日本語@http://www.unic.or.jp/know/kensyo_b.htm
第51条
 この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない。この自衛権の行使に当って加盟国がとった措置は、直ちに安全保障理事会に報告しなければならない。また、この措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持または回復のために必要と認める行動をいつでもとるこの憲章に基く機能及び責任に対しては、いかなる影響も及ぼすものではない。
 
英語@http://www.un.org/aboutun/charter/
Article 51
Nothing in the present Charter shall impair the inherent right of individual or collective self-defence if an armed attack occurs against a Member of the United Nations, until the Security Council has taken measures necessary to maintain international peace and security. Measures taken by Members in the exercise of this right of self-defence shall be immediately reported to the Security Council and shall not in any way affect the authority and responsibility of the Security Council under the present Charter to take at any time such action as it deems necessary in order to maintain or restore international peace and security.

*5:
The Observerは平日はthe Guardianです(The Guardianの日曜版がThe Observerです)。労働党御用達新聞なので,かつては「左派インテリ」「革新系」,さらには「反体制」とさえ呼ばれていましたが,2001年9月11日以降ははっきりとそのタカ派の色を見せています。政権ヨイショ記事や政権側の人の寄稿がやけに多いです。奇妙なことに,メイジャー政権までは「右派」「保守系」であったThe Daily Telegraphが最近は「反体制」になっています。(でも読者層は相変わらず,保守党支持の高齢者が多いらしい。だからなのかどうか,英語もちょっと古臭い,いかにもの「イギリス英語」を使っている新聞です。)なお,the Independent(日曜日はthe Independent on Sunday)は,“緑の党”みたいな色合いの新聞です。かつては「中道左派」の新聞とも呼ばれていましたが,「戦争」という事態でGuardianと逆転しちゃったみたいに見えます。英国にはもうひとつthe Timesという新聞があります。かつては「英国の新聞といえばタイムズ」だったのですが,90年代にルパート・マードックの傘下に入って以来,記事の質がひどくなったという評判を何度か耳にしています。これまたwarmongeringな新聞です。

*6:
グアンタナモにとらわれている英国人とは,「英国人」という表現を使うとわかりづらくなってしまうかもしれませんが(ほんとはここで言葉の使い分けはしたくない),「英国籍を有する人々」のことであり,彼らはムスリムです。グアンタナモ湾についてご存知ない方は,こちら(毎日新聞さんの「ニュースの言葉」)でどういう場所なのかを把握したら,こちらさんとかこちらさんとかこちらさんの(2)とかを参照してください。(リンク先はすべて日本語です。)

*7:
ministerを「閣外大臣」としましたが……これは誤りではないのですが厳密には不正確です。英国の政府の役職というのは非常にややこしくて,ministerが単純に「大臣」とは言えません。外務省の場合,「外務大臣」はthe Foreign Secretary [=the Secretary of State for the Foreign and Commonwealth Office] で,それがジャック・ストローさんです。ではForeign Office ministerとは何かというと,外務省に何人かいるministerのことで,the Foreign Secrataryより格下になります。すべての省がこうならまだいいんですが,内閣の構成員になるトップがMinisterである省もあり……もーわけわかんない。英国さんには,別な性質をもつものを同じ名前で呼ばないでくださいとお願いしたいです。参考:umekawa.netさんの概念図(「概念図」が必要なくらいややこしいということです。)

*8:
あー,またややこしいものが……「バロネスBaroness」はもちろん「バロンBaron=男爵」の女性形ですが,「男爵位を持つ女性」(「“男”爵」という日本語がいかんのです)なのか「男爵位を持つ男性の妻」なのかがわからないので,「バロネス」とカタカナにします。「バロネス」はお名前ではないので誤解なきよう。っていうかどうしてこんなに本筋から離れたところでこんなにややこしいんだろう。

*9:
原文はindividual souls are press-ganged into the justificationです。Guardianからこの10月に出たRoy Greensdaleの著書,"Press Gang"抜粋がちょこっと読めます@guardian.co.uk)がかなり話題になっているそうなのでそれのもじりでしょう。Roy Greensdaleは元Daily Mirror編集長で「誇るべきリベラルな伝統」の時代のガーディアンの人。今も書いています。

*10:
全文はガーディアンで読めます。Bloody Sunday, Hywel Williams, Monday November 10, 2003

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メディア批判を始めると止まらなくなるピルジャーさんですが(この記事のガーディアン批判は短いですが,同じオーストラリア出身のニューズコーポレーション批判はものすごいです),この「イラク戦争」(イラク軍事侵攻・イラク侵略)についてメディアが果たした役割がとても大きかったということは日本でも伝えられている通り。この点について,ピルジャーさんとは違った視点で簡潔にかつ深く述べた記事がZNetにあります。Norman Solomon, Linking Occupation to 'War on Terror'日本語化「イラク占領と『対テロ戦争』」(益岡賢さんのサイトにあります)


↓WHEN BUSH LIESつながりでオマケ画像(要Flash player):http://www.bushflash.com/

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■追記:ネット上の関連記事(11月28日)
* 米軍のイスラエル軍のような行動について:「イスラエル化する米軍」(田中 宇さん,11月25日)
* シーア派の動きについて:Shia pressure may alter Iraq plan(BBC NEWS,11月27日)US Iraq plan unpopular with Shias(BBC NEWS,11月27日)

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日本語訳&ページ制作:いけだよしこ@nofrills
翻訳日:2003年11月24日(日本時間)
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