【近視を治す手術】   Studio Medico会員 眼科医 Y.I

「眼がさめた時、眼鏡なしで周りのものがくっきり見えたら・・・」
と思う近視の方もいらっしゃるでしょう。
また、最近、近視を治す手術についての広告をみて、
「ほんとに近視がなおるのかなあ?」
と考えた方もいらっしゃるでしょう。

最近話題の近視をなおす手術についてお話します。


1.近視とはどういう状態なのでしょうか?

みなさんは、
「視力が1.0だった」
「視力が0.2に下がった」
という言い方をしますね。

視力はその人の自覚的なものです。

「視力とはものの形や位置を見分ける眼の能力である」と定義されます。
近視というのは屈折異常のひとつで、それ以外に乱視、遠視があります。
近視というのは、近くははっきりみえるけど、遠くが見えない状態で、
「無調節の状態で平行光線が網膜の前で像を結ぶ状態」といわれています。

ややこしいですね。

近視の場合、凹レンズ(マイナスのレンズです。)を使うと
平行光線がちょうど網膜で像を結ぶようにできます。

これはどういうことかといいますと、
近視の人は、眼科での視力検査で目の前にレンズを入れてもらったら
視力検査表がハッキ見えますよね。
あれがレンズで矯正して平行光線を網膜で像を結ぶようにした状態なんです。

一番ハッキリ見える時のレンズの度数を自覚的な屈折度数といいます。
自分の感じ方によるものなので、自覚的というんです。
もっとも、乱視と近視が両方ある人も多いですね。

屈折度数(近視の度数、遠視の度数なんていいますが)というのは、
今までの話でもわかるように視力とは関係は深いけれど、違った概念です。

眼科や眼鏡屋さんでは視力とともに屈折度数もしらべているわけです。
眼科で機械をのぞくと、気球の絵がぼけたり、
はっきりしたりしてみえる検査ではかっているのが、屈折度数です。

古典的なやり方では、暗室で眼科のドクターが
レンズの埋め込んである長い棒のようなものを
患者さんの目の前でずらしてはかります。
これは検査してはかるものですから、他覚的な屈折度数といいます

さっきの自覚的な屈折度数と対になります。
眼の病気がない場合、近視の度数が進む程、視力は下がります。

一般的に-6.0D以上を高度近視といいます。
絶対値が大きい程、近視が強いのです。
この屈折度数という概念が近視をなおす手術では大切です。
手術をする側としては
「1.0以上の視力をだす為にナントカDの近視をなおすことをめざそう」
ということになるわけです。

2.近視を治す手術とはどういうものなのでしょうか?

前置きが長くなってしまいました。
では、近視を治す手術とはどういうやり方なのでしょうか。
眼の表面に角膜という透明な膜があります。

近視を治す手術はこの角膜の状態を変えて、近視をなおそうというものです。
いろいろな手術があるのですが、
ここでは代表的なものを3つ説明しましょう。

1)RK(radial keratectomy) 放射状角膜切開
 
1972年に臨床応用され、1980年代にアメリカで広がった手術です。
角膜の表面に切開を入れるものです。
高度近視はこの方法ではできません。
矯正できる範囲は-3.0Dまで、せいぜい-5.0ぐらいといわれています。

2)PRK (photorefractive keratectomy) 

エキシマレーザーというレーザーを角膜の表面にあてるものです。

術後1週間以内には裸眼視力が改善する、といわれています。

3)LASIK (レーシック、laser assisted in situ keratomileusis)

角膜の表面をめくって、その下にエキシマレーザーをあてるものです。
術後、痛みも少なく、一番早くから視力が出るといわれています。

最も新しいやり方です。

LASIKのよい点は、一番、矯正範囲が広いし
(高度近視の人でもなおせる、ということです)、
一番、早くから視力がでる、痛みが少ないなどです。
最近では-2.0D〜-12.0Dの近視をなおせるといわれています。

これらの手術では今ではかなりやり方が確立していますが、
いくつか問題点もあります。

一番の問題はねらい通りにぴったりと近視が矯正できるか、ということです。
これはどの手術にもあてはまります。
例えば、-6.0Dの近視を治す手術をうけたとします。
ぴったり、-6.0Dの近視がなおって、
眼鏡なしで視力表で1.0見えるようになればいいですが、
-5.0Dしかなおせずに-1.0Dの近視が残ったら、眼鏡なしで1.0の視力はでません。
逆に-7.0D矯正して、+1.0Dの遠視になっっても、眼鏡なしでは1.0の視力はでません。
こういう目標からずれる確率はその病院によっていろいろだと思います。

一般的には近視の度数が強くなる程、つまりきつーい近視をなおそうとするほど、
目標通りにならない確率は高いとされています。
もっとも、この「ずれ」はこれから、レーザーの機械がよくなるにつれ、
いろいろ研究されるにつれ、少なくなっていくと思われます。
また、LASIK は追加矯正がしやすいので、近視が残った時には追加手術ができます。

また、
手術の後、角膜の上皮下に濁りがでることがある、
屈折度が変化することがある、
視力はでてもぼやけることがある、などと報告されています。
これらの問題点が少なくなるように、いろいろ研究が重ねられています。

それから、RK、LASIKで表面を切る時に深く切ってしまうことがあります。
しかし、きれいな傷ですから、ちゃんと処置すると問題ない場合がほとんどです。
また、感染の可能性もゼロではありませんが、そうならないよう、
ちゃんと消毒し、術後も抗生剤の点眼を行うことになっています。

どの方法も長期的な予後はわかっていません。
今のところ、視力低下をおこすような合併症はないだろう、と考えられていますが、
あくまで予想です。

3.手術をうけるのなら・・・

眼鏡やコンタクトで視力が出ない人は近視を治す手術をしても限度があります。
他の手術と違う点は「健康な眼に手術をする」ということです。
ですから、御本人が納得してうけることが一番大事です。
コンタクトや眼鏡でもなんとかなるわけですから。
手術をうけることによって得られる利益と不利益をよく理解したうえで、
ちゃんとした施設で受けるのが望ましいと思います。
眼科のドクターならすべていいというわけではありませんが、
眼科のドクターであるというのは一つの目安になると思います。
先ほどもお話したように、まだ歴史の浅い手術ですから、
何十年後になにか予想のできない問題が起きてくる可能性は否定できません。

医学的に手術をしない方がよい場合があります。

ドライアイという言葉を聞いたことがあるでしょうか。
涙が少ない状態、または涙の量は正常でも乾きやすい状態をいうのですが、
こういう場合は術後傷がなおりにくいことがおおいです。
だから、重症のドライアイでは手術をしない場合が多いようです。

年齢制限もあります。
20才未満では屈折度が安定しないことがありますので、
手術は待った方がよいといわれています。
また、角膜の病気がある場合はまず、そちらの治療をします。
その他、主治医の先生が判断された場合はよくお話を聞いて下さい。

また、病気を治す治療ではありませんから、保険は使えません。
手術費用はそこの病院でいろいろです。
あらかじめ、ちゃんと聞いておいた方がよいでしょう。

近視矯正手術はうけると生活が楽になるとされていますが、
眼鏡やコンタクトでもなんとかならないわけではありません。
手術をうけた場合のいい点と悪い点、
うけなかった場合のいい点と悪い点をよく考えて、
納得してから手術を受けることをお勧めします。
手術を受けるか、受けないか、しばらく様子を見るかは御自分がきめることです。
納得しないのであれば、手術を受けることはないと思います。