ご利益の理由

健康のアミューズメントパーク石切神社


商店の合間にいるあらゆる神様、仏様

 参道の道幅は5メートルほどしかない。
 その細道が1キロほども続く。参道の商店はどこも賑やかだ。煮物を売るお店、刀剣の店、洋品店。種苗店まである。

 店先を覗くと、健康に関する商品をどの店でも並べている。
 食器店の陳列台に「ぜんそくに網目茶碗。中風、胃腸病に左馬茶碗」と書かれていた。
「昔からの言い伝えで、網目や馬を描いた絵柄には霊力があると信じられてきたんや」

 と、店のおじさんが説明してくれた。
 参道は神仏のるつぼでもある。お地蔵さん、お不動さん、天狗や、大仏まで、ありとあらゆる神様、仏様が参道の商店の、合間合間に配置されているのだ。
「今でも年にひとつくらい、新しい神さん仏さんができあがっとるで」
 と、参道に立っていたおじさんが笑う。 石切を訪れる信者をあてにした、あらゆる民間信仰の施設が建てられるのだそうだ。 (下につづく)



 漬物商店の柱の張り紙に目を奪われた。
『一生に一度飲むだけで脳卒中で絶対に倒れない方法』とある。鶏卵、蕗の葉の汁、清酒、梅漬を調合する処方が書いてある。
 ノートを広げると突然、声をかけられた。 「メモを取らんでも、ほれっ、コピー紙をあげるから。紙一枚で健康になれるよ」
 絶妙のタイミングだった。店のおばさんが手渡す紙を、僕はとっさに握っていた。次々と店頭にいる人たちに紙を配る。

「味噌はガンを防ぐて、知っとる?手作りなら、なおさら良いやろね。ウチのは手作りやで……。このラッキョウは鳥取で1年に1回しか取れんもんを、ウチで漬けたんよ。毛細血管を広げるんやて、旦那が鳥取産やないとアカン言うて頑固なんや……」
 味噌や梅干し、ラッキョウ漬けなどが次々と売れていく。僕は拍手を送りたい気持ちだった。「おぉ、こりゃ香具師の口上だぁ」

 さらに参道に目立つのは薬屋だ。
「さすが、健康の神様のお膝下だな」
 創業の由来を聞こうと、立ち寄った薬店のおじさんがこんな話をしてくれた。
「生駒山を登って、奥まで行ってみい。漢方薬を水車で衝ついて、粉にしとる所が今でも見られるで」
 むむっ、ご利益の理由を探るためには、そりゃぁ行かねばなるまい……。

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