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特別編

 「韓国では犬を食べるんですか?」という質問はよくあるが、その質問に対して私は「ええ」と答える。「犬は滋養にもよく、高タンパクなので、健康ために食べる人もいる。食堂で補身湯(ポシンタン)として食べる」と言えば、説明しやすいし納得してもらいやすい。
 しかーし、先日意外な話を聞いた。それをみなさんに紹介しよう。

 私の住んでいるアパートは川沿いにある。川沿いといっても川のすぐそばではなく、川面から土手のようなものを挟んで建っている。その土手のような場所にほったて小屋が2、3並んでいる。そのほったて小屋の前にはいつも壊れた家具が山積みされている。
 昼は、電気ドリルや電気カッターの音がよく聞こえる。多分ここは家具の解体か修理の小工場なのだろう、といつも思っていた。
 だが、夜になると犬の声がよく聞こえる。1匹だけでなく数匹いる。夜中になるとよくなくことがあった。昼間、その工場をのぞくと(私の部屋は10階なので、ベランダから少し身を乗り出すような感じでのぞく)、犬小屋(といっても鉄格子みたいな感じ)がいくつかあって鎖につながれた犬が数匹いた。
 私がここに住み始めて、夜になるとよく聞こえたのが上の階に住むアメリカ人先生達(私のいるアパートは外国人の先生用にアパートの7階から13階を買い上げている)のどんちゃん騒ぎか、この犬達のなき声であった。

 ある日、このなき声のことについて日本人の同僚の先生と話をした。そしたら意外ことがわかったのである。
 「山田先生、その犬のなき声の件なんですけど、あれ殺されているんですって…」
 「殺されているんですか?」
 「ええ、あの工場の人が犬を食べているそうなんですよ」
 「ええーっ。そうなんですか?」
 「はい、上に住んでいるアメリカ人の先生達から聞きました」
 「何で彼らは知っているんでしょうね?」
 「いやー、彼らは一度、犬が殺される様子をアパートからずーっと見ていたそうですよ。一部始終をビデオに撮った、とも言ってました」
 「へー、私はてっきり犬はどっかの食堂で食べるものとばかり思っていましたよ」
 「でね、ただ殺すんじゃないんですよ。痛めつけたり、縛ったりして徐々に殺すそうなんですよ」

 あいやー…。声を失ってしまった。確かに夜なく犬達のなき声は普通とは幾分違っていた。同じなき方を何度もしたり、だんだん声がかれていったり…。これで、犬達のなき声がおかしいことが理解できた。犬の数が日によって違うことも理解できた。

 理解はできたが、そんなことが私の住んでいるすぐ下で行なわれているとは…。ちょっとぞっとする。
 あと、私はアメリカ人の先生が撮ったというビデオを見ていないので何とも言えない。だが見る機会があったら、このページを更新することにしよう。

<後日談>
 8月になって急に犬の泣き声がしなくなった。それからしばらく気にせずにいたが、最近になって、うちの大学の学長が例の工場に「犬はここで食べないで下さい」とたのんだということを知った。それで静かなのである。

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