月便


占いに来てくださったお客様が、寄せてくださったエッセイです(^^)ありがとうございます<(__)>
名前等プライベートな部分を一部変更しております。
楽しく時間を過ごしていただけて良かったです。お仕事も占いの結果通り、見つかって良かったです(^^)

ペンネーム☆渡辺絵梨果

扉を開けると、久しぶりのつややかな肌とふわふわした髪の彼女に再会した。
 彼女の職業は、鑑定士である。ミルキ-ムーンと名乗っている。神秘的というよりはむしろゴシックロリータ風の女の子といった感じを受ける。年令は不明である。彼女は、いつも安定していてささやくように話す人だ。由紀はその声に安心感を覚えた。清浄な空気が漂うマンションの広い一室が、彼女ともう一人の仕事仲間の共同セッションルームといったところだ。
「こんにちは。お久しぶりです」
由紀が嬉しそうに言った。
「こんにちは」
と笑顔で彼女は答えた。続けて
「どうぞ・・・」
と言った。
「わあー。凄く素敵な部屋ですね」
お世辞ではない。本心だった。
初めて彼女と出逢ったのは、『女神の館』という占い館だった。本当になんとなくやって来たのだ。
「先生を選んで下さい」
受付女性がファイルを開けた。
-女神カードで占います-
この文字に心が動いた。
「じゃあ、こちらの方で・・・」
と写真を指差した。その頃彼女はアンジェラと名乗っていた。8番のブースへ案内された。
「お願いします」
と由紀が言うと彼女は少しびっくりした目で
「生年月日と出生時間をお願いします」
と言った。
「昭和47年1月17日です。朝の9時55分生まれです」
と言うと、さらさらとホロスコープを書いた。
「どのコースにされますか」
と占いのメニューを差し出した。
「仕事についてのコースで・・・」
「だいぶお疲れのようですね」
と静かに彼女はそう言った。
「ええ。そうなんです」
「ちなみに今、何をなさっていますか」
「ああ。電話営業です」
「しんどい仕事ですよね」
「はい」
「私もやってた事ありますからわかります」
「えっ?」
何にびっくりしたかというと彼女が電話での仕事をしていたという事より、私的な事を話始めてくれたからだ。
「うちの家も厳しいのでわかりますよ」とか、「実は心療内科にかかっているのです」
と由紀が言うと、
「私もそんな時がありました。青い顔してましたよ」など。
今まで通った占い師は年上女性だった。そしてああしたらいいとかこうしたらいいとかアドバイスをしてくれた。それはそれで良かったけれど、由紀にとって必要だったのは、ただ、黙って話を聞いてくれる存在だと気づいたのだ。心の中で言葉少なな女性だと思った。反対に由紀はおびただしい数の言葉を口から、いや、心の奥から沢山だしていた。激しく言葉を投げても、彼女は終始冷静である上、笑顔なのだ。強い人である。か細い声とは裏腹な強い精神の人であるのだ。
「仕事休まれたら」
「そうですか?」
「不安にかられて不安を選ぶよりもいいですよ」
「大丈夫ですか」
「来年にいい仕事に出会いますよ」
「私、ちなみに占い師さんから占い師が向いていると言われたんですけど、本当ですか?」
「観ましょうか−うーん、いいですよ!」
「本当ですか」
それから3ヵ月後、由紀は電話鑑定の仕事が入ってきた。

彼女に出逢って学んだ事がある。自分自身の力を信じるということと、いつも自分の心に問いかけるということだ。そして自分で人生を選んで進んで行くということだ。

久しぶりに会う彼女はなかなか話すとユーモアもあり、楽しい人である。鑑定中に由紀が、
「この猫のカードかわいいですねぇ」と言うと、わざわざ奥の棚へ足を運んでいくつかのタロットカードを持って来てくれたのである。
「カードお好きなら・・・」
「はい」
と言ってひとつひとつ手にして見ると猫の絵のカードが二組もあった。
「猫、お好きな人ですか?」
「はい」
一枚一枚見ているとそのユーモラスに笑いをこらえきれず、声立てて笑ってしまったのだった。
知人の猫に似ていたので思わず吹き出した。
「ああ、そろそろいい時間ですね」
と由紀がサイフを出した。
彼女のサイフをよく見ると、猫のイラストが描かれていた。
「本当にお好きなんですね。猫」
「はい。好きなんです」
笑顔で答えた。なんだか本当におかしくなってきた。
「じゃあ」と言って私が席を立つと、彼女は棚に乗せていた、天使の本を手に取り、
「これ新品なのに半額だったんです」などと言う。
彼女、ミルキー・ムーンにブラウスは白くひらひらとした羽根のようだ。天使の羽根。
扉を閉めて、ふと見ると、鳥の飾りがドアにかけてあった。彼女はこれからもはばたき続けるだろうとふと思った。



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