|
はじめに
チュチマのフリーガー クロノグラフ
ルフトバッフェ購入しました。それをきっかけに、チュチマの歴史やラインナップなどを調べていましたが、そんな中、見たことのないフリーガークロノグラフ
ルフトバッフェを名乗る時計をネットで発見。「この時計はチュチマなのか?」。そんな疑問から出発した「チュチマ レポート」です。
歴史
チュチマはドイツのGlashutte/グラスヒュッテ(旧東ドイツ地域)で1845年に工房を開設した時計メーカーが源流。チェコとの国境近くに位置するグラスヒュッテに現れたドレスデン出身の時計職人であり、ドイツ時計産業の父フェルナンド・アドルフ・ランゲを創設者と考える説があります。ただし、この時点では“チュチマ”ブランドは存在していません。また、フェルナンド・アドルフ・ランゲは「チュチマ」の祖というよりは、グラスヒュッテ時計産業の祖と言ったほうが適当なようです。現在のチュチマのホームページによると、そのルーツは、グラスヒュッテに暮していた画家のアシスタント,
わらの織り手, 農場手, 石切り場の労働者などが失業対策として時計づくりをはじめたことだとあります。
その後、ドイツの時計産業は分裂、連合を繰り返し、1926年、ドイツの時計関連会社の大合同があり(第二期グラスヒュッテ社)、その責任者がDr.Ernst
Kurtz/ドクター・クルツです。このクルツによってグラスヒュッテ社の1ブランドという形で「TUTIMA(チュチマ)」の名前が初めて世に出ました。
従って、チュチマとしては創業の地、グラスヒュッテと並び、ドクター・クルツの名前を同社の歴史を語る上で前面に押し出しいます。ちなみに「TUTIMA(チュチマ)」とは、ラテン語で“精密”を意味する“TUTUS”に由来しているとのことです。現在のドイツにある会社の正式社名は「Tutima
Uhrenfabrik GmbH 」。会社の本社工場があるのはGanderkesee/ガンダーケゼー(旧西ドイツ地域)。
|
TUTIMAの系譜
1918年 DPUGグラスヒュッテ社(Deutschie
Praezisions-Uhrenfablik Glashuette in Sachsene.G.m.b.h in Sachsen/
DPUG)設立
1925年 DPUG解散
1926年 UFAGグラスヒュッテ社(Uhren-Fablik
A.G. Glashuette )設立
UFAGが製造する時計の中にTUTIMAブランド誕生
1945年 ドイツ東西分割
1945年〜 UFAGグラスヒュッテ社の工場が東ドイツ政府により接収。グラスヒュッテ時計国営工場(Glasshutter Uhrenbetrieb GmbH/G.U.B)が同ラインを使って時計製造を開始。
ソ連の第一時計公社(モスクワ第一時計工場FMWF)が東ドイツの工場ラインの一部を接収。
1948年 ドクター・クルツが西ドイツに亡命。1960年のクルツ死去に伴い、西ドイツにおいて現在のチュチマ社(Tutima
Uhrenfabrik GmbH)が設立される
1967年 東ドイツの「グラスヒュッテ時計国営工場」「ワイマール精密機械国営工場」「ルーラ時計及び機械国営工場」が合同、「国営ルーラ時計コンビナート(
Uhren Kombinat Ruhla/VEB)」となる。
1990年 東西ドイツ統一
1991年 VEBが「A.ランゲ & ゾーネ」の商標を放出、IWCが買収する。1994年に新生ランゲ&ゾーネの時計を発表
1994年 ハインツ・Wファイファー(現G.U.B社長)がG.U.Bの商標とVEBのグラスヒュッテ工場を買収。グラスヒュッテ・オリジナル(Glasshutter Uhrenbetrieb GmbH/G.U.B※社名変更せず)設立
2000年 スウォッチグループ傘下に入る。
情報提供 スペシャルサンクス 「時計猿の小部屋」のDADAさん。「だいすき〜Navi兄貴の小部屋」のNavi兄貴さん。「タイムゾーン日本語ページ」の斎藤さん。「Tutima Uhrenfabrik GmbH」のI.Goetteさん。
参考文献
“世界の腕時計 No.16、No.41” ワールドフォトプレス
“新軍用時計物語〜今井今朝春氏著”グリーンアロー出版社
“INTERNATIONAL WRIST WATCH日本版”No.10、No.14、No.15 二玄社
“TUTIMA instrument watches” Tutima Uhrenfabrik GmbH
“ヴィンテージ ウォッチ 2nd issue” 日経ムック
“German Impressions 2000” ドイツ観光局
年表や内容に誤記等ありましたらご指摘下さい。
|
ここからが本題
さて工場と商標が東ドイツ政府に接収されてしまった、グラスヒュッテですが、さらにその製造ラインの一部が旧東独地域からソ連軍に接収されてしまいます。そして旧ソ連時代の第一時計公社(モスクワ第一時計工場FMWF)であるPOLJOT/ポレオットが、そのラインを使って時計の製造を始めました。
このラインを使い、第一時計公社(モスクワ第一時計工場FMWF)が造った時計は、戦後、間もないあいだは「Glashutte
Tutima」銘で世に出ていたようです。しかし、その接収したラインで造るオリジナルクロノムーブメントは、生産性が非常に低いので、1940年代中には生産は中止されたとのこと。
ソ連崩壊後、公、官用の時計を中心に時計を製造していたPOLJOT/ポレオットが、戦時中のスペックの時計を民間向けに生産販売しはじめます。これをPOLJOT/ポレオット社がチュチマと名乗ったという情報がありますが、その真相は未確認。
私がTutimaとPOLJOTの関係に興味を持ったのは実は下の写真の時計がきっかけです。『この時計は果たしてTutimaと言えるのか?』という疑問を解きあかしたいと思いました。
 |
 |
|
日本の某オークションサイトから/ ※写真転用の許可は取ってあります |
 |
 |
|
海外の某ネットオークションから。今はない※「Glashutte
Tutima」の名前を語っています。商標として同名がどのような状況にあるかは「?」です。
6時位置にデイ表示があるのがPOLJOT製の特徴。
※話が少し複雑になりますが、現在のチュチマ社が「Glashutte」という名前のオートマチッククロノグラフをリリースしていますが、この話とは全く無関係です。
|
 |
 |
|
これも海外の某ネットオークションから これもPOLJOT製との説明はありました
ここまでくると「Tutima Uhrenfabrik GmbH 」のものと素人では見分けがつきません。
|
POLJOT製
|
Tutima Uhrenfabrik GmbH製
|
 |
 |
|
これはポレオット社がオフィシャルに作っているもの。これがベースになっているようです。 |
以上は、最近、ネットオークションなどでよく見られるPOLJOT/ポレオットの機械を積み、Fliegercronograph
Luftwaffe/フリーガークロノグラフルフトバッフェを名乗る時計。「Glashutte
Tutima」という名前を必ずどこかに入れています。
現在の「Tutima Uhrenfabrik GmbH 」が販売する、Fliegercronograph
Luftwaffe/フリーガークロノグラフルフトバッフェは以下の写真の時計。もちろん、「Glashutte Tutima」という名称は使いません。ちなみにバルジュー7760の改良機械(ETA)が搭載されています。
 |
Cal. Valjoux 7760 (modified)
|
左右ともTutima Uhrenfabrik GmbHのページから参照写真
|
Poljotの機械の正体
ここで、確認しなければならないことがあります。POLJOT/ポレオット製の機械を積みながら「Glashutte Tutima」を名乗る時計の、この機械は一体、どのようなものなのかということ。
実はこのPoljotの機械はPOLJOT.3133という名で、その実はValjoux7733のデッドコピーなのです。
このPOLJOT.3133とValjoux7733の機械の比較は、この件の情報提供者であるDADAさんのHP「時計猿の小部屋」クロノグラフムーブメント列記/バルジュー、の一番下に画像と詳細な解説があります。敬意を表して紹介します。
ここでは簡単な画像比較を行います。
Valjoux7733(in GALLET)
|
POLJOT.3133
|
Valjoux7733は1960年代の終わりに誕生した機械です。この機械をデッドコピーしたものであるということは、POLJOT.3133は、冷戦中に接収した戦前のGlashutte
社のラインとは全く無関係ということになります。言い換えますと、第二次大戦直後に、Valjoux7733はないので、大戦後に接収されたGlashutte
社のラインから、Valjoux7733のデッドコピーであるPOLJOT.3133は造られようはありません。
ここで、「POLJOTの機械を積んだTutima(記名)の時計は、Tutimaと言えるのか?」という疑問点とは別に「POLJOT社はValjoux7733を不正にコピーした」という事実が明らかになりました。
ただし、この不正コピーの問題については、ここでは必要以上に触れません。ここでの論点は「POLJOTの機械を積んだTutima(記名)の時計は、Tutimaと言えるのか?」ということにしぼります。
ドイツのチュチマ社に直撃取材
|
そこで直接、ドイツのチュチマ社「Tutima
Uhrenfabrik GmbH 」にPoljotの機械を積む時計の素性を、写真を添付したメールにて問い合わせました。後日、同社のH.
Kordesさんからその返事が来ました。内容は下記の通り。
Dear Mr. (私の本名),
The Tutima brand is internationally registered. The watch
you mentioned
and sent pictures of is a fake watch. Purchase and sale of fakes
or
imitations are illegal. We would very much like to find out name
and
address of the dealer who offers this watch.
For further information, please contact our agent in Japan:(以下、PXの住所)
PX Incorporated
Kind regards
Tutima Uhrenfabrik GmbH
H. Kordes
翻訳しますと、
Tutimaブランドは国際的な商標登録がされています。. あなたが写真と共に言及している腕時計は偽物です。また偽物の時計の販売と購入は違法行為です。私達はあなたが、その時計を見つけた時計ディーラーの名前と住所を非常に知りたく思っています。その情報をチュチマの日本代理店であるPX
Incorporatedに連絡して下さい。(以下、PXの住所)
敬具
Tutima Uhrenfabrik GmbH
H. Kordes
|
上記のTutima Uhrenfabrik GmbHからのメールで、要点は2つあります。1点はTutimaブランドが国際的な商標であるということ。もう一点は、添付した写真に写るPOLJOTの機械を積んだTutimaを偽物であると断言したことです。
こういう情報があります「PoljotをGlashutte
Tutimaとと書き換えるだけで、値段が3倍以上も高価になるので、偽造団がGlashutte Tutimaとリダンしたポレオットの時計を大量に流通させている」。
結論
POLJOTの機械を積んだTutima(記名)の時計は、「Tutima」ではありません。
TutimaブランドがTutima Uhrenfabrik GmbHによって国際的な商標登録されている以上、結論はこのようになります。一方で、TutimaというブランドとPoljotという会社が歴史の中で、交わっていることだけは事実です。
これは、現時点での私の考え方ですが、Poljotの機械を積んだTutima名の時計(結論として偽物)を作っているのはPOLJOT社ではなく、第三者組織でしょう。POLJOT社は現在、時計メーカーとムーブメーカーの両方の顔を持ち、機械のみの販売も多く行っているようです。その機械を仕入れ、チュチマの名前を付けた時計を作っている者がいるのでしょう。彼等がTutimaとPOLJOT社の歴史的な関係を知り、POLJOT社の機械を使っているのかどうかは分かりません。この時計はネットオークションで多数見かけます。このレポートをネットで公開しながら展開している間も、POLJOT社の機械を積んだTutima名の時計を出品しているのを見かけました。
2000.11.25追記 POLJOT社が、Tutima
Uhrenfabrik GmbH製のフリーガー クロノグラフ ルフトバッフェのデザインを模倣した疑いが濃厚。それは“Tutima”ブランドは付かないものの、POLJOTブランドで同社がケースしたと思われる時計をネット上で発見したからです。その時計にTutimaブランドを記名したかのが同社かどうかはいまだ不明。
雑感
現在、Tutima Uhrenfabrik GmbHが製造しているフリーガー
クロノグラフ ルフトバッフェは、もともと戦前のグラスヒュッテ社が製造していた「Tutima」銘のクロノグラフを復刻したものです。“筋”から言えば正統な後継者は、そのブランド銘、ドイツで時計機械作りを続けているという点からも「グラスヒュッテ・オリジナル」なのかもしれません。また、POLJOT社に模造品を作られたという立場で結論づけたこの時計も、もともとは戦前の軍用時計の復刻品で、搭載されている機械について言えば、全く別物(ETA社の機械でスイス製)です。求め過ぎてはいけませんが、ドイツ時計を復刻するという志しを持つのであれば、「グラスヒュッテ・オリジナル」や「ランゲ&ゾーネ」のようにドイツ国内で機械を自社製造する徹底さを期待したいところです。
オリジナルの機械である caliber59
|
復刻品はETA社のValjoux 7760
|
最後に
このレポートを作成するにあたっては、「機械式時計ファンの掲示板」(機械式時計ファンのページ中)にて情報の提供を呼び掛けました。未完成のレポートを公開しながらの作成という新しい試みです。管理者の亀吉さんと、同サイトを見て、ご意見、情報を頂いた時計ファンの方々にお礼を申し上げます。
「時計猿の小部屋」の管理者であられますDADAさんには何よりも貴重な情報をご提供頂きいたことを大変、感謝いたします。
Tutima Uhrenfabrik GmbHから、販売している時計ディーラーの名前と住所を是非、知りたいとメールをもらいました。私の知っている販売経路はネットオークションです。このページが、その摘発を目的としておりませんので、そのオークションサイトや個別の出品者をTutima
Uhrenfabrik GmbHに連絡することはありません。
訪問者からのメール紹介
|
ご訪問頂いた内田さんからの貴重な情報です。
はじめまして!
HP興味深く拝見させていただきました。私は以前から時計に関心を持つ者で、その一環といってはなんですが、ロシア時計にも興味がありよく、ネットサーフィンしたり、実際にオンラインで購入したりもしております。先日、驚くべきシロモノをロシアのオンラインストアで発見しましたので、メール差し上げる次第であります。
ロシア・サンクトぺテルブルグのサイトhttp://russian-watch.comにpoljot new modelsの1つとして何とチュチマ・グラスヒュッテと堂々と謳ったモデルが紹介され、販売されていたのです。しかも140ドルという廉価で・・つまりこれは、ポーレット製の類似品を第三者が改造してチュチマ製として流通させたという可能性もありますが、ポーレット自ら確信犯的にパチモノを作っているという可能性が高いということではないでしょうか。ポーレット、実はfortisからもコピー品製造を抗議されているようです。生き残るためになりふり構っていられない状態なのかもしれません。他にもブライトリングやオメガのシーマスター(日常生活防水というのが笑えます)やダイナミック(これは商品名まで同じ)などのコピー品が堂々と売られています。
取り急ぎ報告まで。
ポーレットがFortisに抗議されている件ですが、この情報を私が知ったのは、ポーレットのメーカー直系と思われる、スイスのオンラインストア、www.poljot.org/です。このページの"INFO"というコーナーに記載があります。一個売る度に、罰金を払え!と抗議されたようで、この罰金の額では商売になりませんから、もう手に入らなくなるでしょう。この商品は”Aviator”という商品で、実は私はコピーと知らずアメリカのストアに注文して、届くのを首を長くして待っています(笑)。初めてこの時計を見たとき、「ロシア製とは思えないほど垢抜けたデザインのクロノが190ドルとは!!」と狂喜乱舞し、即、注文しました。また、改めてこのページを精読したところ、「TUTIMAという商品をカタログに一旦は載せたが販売できなくなった。」という内容の記載もあります。このオンラインストアで、なかなか面白い商品を見つけました。旧ドイツ軍用レプリカでドイツとの共同制作モデルとありますがいかがでしょう。この商品は他のサイトでは確認していません。ところで、ポレのロシアのオフィシアルサイトを遂に見つけ出しました。アドレスを適当に推測して打ち込んでみたら一発で見つかりました。www.poljot.ru/です。昔の商品ギャラリーや、工場の写真などもあり、充実した内容でした。英語もあります。ざっと見て気がついたのですが、このページの商品カタログには「これはヤバいだろう!」という商品は載っていませんでした。唯一、シーマスターもどきのクロノが載っていたのみでした。(もちろん、時計に詳しい人が見れば模倣品が他にもあるのかもしれませんが。 何故でしょう??)公式にはパチモノ、類似品は作っていないというスタンスなのでしょうか????オンラインストアで売られている、他のメーカーの製品に酷似した製品にもちゃんとポレのロゴが刻まれてますし、保証書も付いています。スケルトンのモデルもあります。パチモノを作っていることを恥じているのか、それとも第三者が勝手にポーレットを名乗っていることにして本社に訴追の手が及ぶのを避けたいのか?謎です。
|
|