<レベルソムーブメント私見>

管理人の独断と偏見に満ちた機械の私見。

Cal.846

代表的な時計:Reverso Lady, Reverso Classic
1975年.18石の手巻き女性用キャリバー、2針。6振動。

私見:
 クォーツショック後の75年に設計された極小キャリバー。樽型の小型キャリバーとしてはごく当たり前の普遍的な輪列を持つ。その祖は69年に設計された840であり、若干のサイズダウンおよびリファイン(1石増、5.5→6振動)がなされたもの。さらにそのオリジンはおそらく40年代の40*系に遡ると思われ、非常に歴史のある古い系統である。
 70年代後半から80年代のJLCは本当に体力が無かったようで、この暗黒時代(スイス機械時計産業全体の、とも言える)に、各社はもはや新型キャリバーの設計などという場合ではなかったと想像されるが、JLCはこの小型ムーブメントを完成させた。本来は女性用ムーブメント(いわゆる南京虫)である。そしてJLCは80年代初頭にレベルソクラシックを復活させ、91年のBig(ソワサンティエム発表)以降の勢いは周知の通り。レベルソクラシック復活、それが出来たのはこのムーブメントのお陰であろう。2003年のラティチュードクラシックおよび2004年のHarmonised Reverso(スモセコ三針)は861に置き換わったが、とにかく20年間以上も基本的には何も変わらず生産され続けている。
 846は非常に小さく薄いので、2針であればおよそどんな時計にも載せることが出来る。2004年秋に発表されたイデアルにも採用されていることを考えるとJLCはまだまだ使い続ける気で、非常に信頼性が高いことをうかがわせる。ところで一時期JLCは846以外の機械をあまり作っていなかったのではないか?と思われるほどこの機械は多用されていた。たとえば、2針の薄型メンズ時計にすら入っている。JLCとしてはもっとふさわしい機械があるのに、である(818とか839とか)。とにかくこの846は非常に多用されたわけで、苦しい時期のJLCを支えた屋台骨と言えるであろう。
 そう考えると、75年に完成したということに非常に大きな意味が見えてくるし、今のJLCひいては機械式時計復活の呼び水ともなった機械ともいえるのではないだろうか?この機械は、歴史の生き証人である。なお、この機械の入った現行時計のベストバイは、機械とケースのバランスという点でレベルソレディだと思うが、歴史を考えてみると846入りのクラシックは味わいのある時計であろう。

20.Mar.2005


<Cal.822>

代表的な時計: Big Reverso
1992年、21石の手巻き角型メンズ用キャリバー。モセコ三針、6振動。

私見:
 非常に古典的な外見を持つ、比較的新しい設計のキャリバー。角型スモセコ輪列の王道をいく設計。PP9-90やIWC87などと輪列配置は基本的にほぼ同一、というかもはやいじりようのない配置であろう。
 この年代で設計されたものとしては奇跡的とも思える、チラネジつきテンプ。ブリッジの分割形状や大きな2番の見え方など、個人的には大変に好きなキャリバー。手巻き感も最高に好み。コハゼの構造が比較的簡略なものとなっており、その味を感じる巻き心地となっている。5姿勢調整が標準で、精度の面でも申し分ない。スピロフィンつきで緩急調整はこれによるファインアジャストができる。さらにガンギ車の受けにも伏石(Capped Escape Wheel)と耐震装置が標準、香箱真も石入りと言うド級のスペック。素晴らしい!
 この機械もJLCの他の機械の例に漏れず、コンプリモジュールを追加することを前提に設計されたため実は2.3mmとかなり薄い機械であり、この点でもJLCらしいといえる。なおVCやIWCにも出している(VCの正方形の時計にこの機械はいささか合わないと思うのだが)。ランゲの角型機械との関係が注目されるが、JLCは無関係と言う。

20.Mar.2005


<Cal.823>

代表的な時計: Reverso SunMoon, Reserve De Marche(823A)、Moon,WEMPELtd(823D)
1999年、23石の手巻き角型メンズ用キャリバー、三針+PR+Moon+D/N。823Aは三針+PR、823Dは三針+Moon+D/N。

私見:
 822ベースの派生キャリバー。823はRDM以外は基本的にシースルーバックとして使われることを考えて作られた機械である。
822系は全てスペーサーを介してBigケースに収められるが、このスペーサーの形状がシースルーバックとソリッドバックでは異なっている。さらに822では通常のネジが823では青ネジに変わっていたりと、見られることを主眼に置いた細かい変更がなされている。
 これはまさに見られるムーブメントであり、十分に鑑賞に堪える機械であることは間違いない。審美的な角型機械をいつでも見ることができる823系の時計は、稀代の時計といって良いだろう。


<Cal.824>

代表的な時計: Reverso '60eme
1991年、23石の手巻き角型メンズ用キャリバー。地板、ブリッジはGold製。三針+PR+Date。

私見:
 JLC新世代への架け橋となったキャリバー。Big size Reverso発表とともにJLCは完全復活したと言えるが、その契機となった機械である。基本的な設計は次年に出る822へと引き継がれ6振動となるが、91年にこの機械がこのようなスペックで新規に設計されたことの意味は大きい。
 あくまで古典をベースに複雑機構を追加していくというJLCの姿勢は、クォーツがこの世に無かった時代となんら変わることが無いということを強烈に知らしめてくれ、新生JLCを象徴するムーブメントだと感じる。なお500個限定である。

20.Mar.2005


<Cal.859>

代表的な時計: Reverso Gran'Sport Chronographe Retrograde
1999年、38石の手巻き角型メンズ用クロノグラフキャリバー。A面:センセコ三針+Date +ChronoRun表示、B面:Chronograph (30Min.Retrograde)

私見:
 JLC初の角型クロノである1998年のReverso Chronographe用Cal.829をModifyし、グランスポール用としたもの。
 ピラーホイール式、スライディングギヤ採用と超本格的な設計。しかもこれと829はBig/GS系で唯一スペーサーを使わずにケースに収められるものであり、角型両面の全てのスペースを使い切った設計といえる。
 操作感は格別で、VintageのVal.23やVenus175などに近いものがあり、El Primeroなどはナタフショック後の機械ですら正直に言って比較にならない。機械は8振動のセンセコと現代的で、もちろんスピロフィン付き。デイト表示が余計な気もするが普段使いを考慮に入れてのことだろう。ちなみに修理は全てル・サンティエ送りとなる。

20.Mar.2005


<Cal.861>

代表的な時計: Reverso Classic ('04-),Reverso Latitude('03)
2003年、18石の手巻き角型キャリバー。6振動でスピロフィン付き。スムーステンプ。

私見:
 862,864,865など両面系が出た後に遅れてきた基本形のスモセコ三針。'04 Harmonisedで初めてレギュラーラインのクラシックに載るが、これまでの846クラシックは竜頭が小さかったこと、同キャリバーはやはり女性用の機械であり、クラシックサイズにはいささか小さいと思えること、この2点を解決したものである。
 今回861が載ったことによりそれに見合った直径の竜頭を装備できることで、時計としてのバランスも向上しており、実際には1ミリ大きくなっている。
(余談であるがPP3796の竜頭が96よりもかなり小さいのは、215PSが小さい機械であることが主たる原因で、昔のように12リーニュくらいの機械であれば一般的にもう少し竜頭の径を大きく出来る・・・見た目のバランスも向上し、手巻き感も良くなったように感じ易いと思われる。)
 話が逸れたが、そんなわけでケースの大きさにあった機械を入れることは良いことが多い。結果'04クラシックはさらに進化し、非常にバランスの取れた1本となった。
(注;最近確認したら846のHarmonisedも竜頭が大きくなってました。これは大丈夫なんだろうか?)


<Cal.862>

代表的な時計: Reverso Memory
1999年、23石の手巻き角型キャリバー。A面:スモセコ三針、B面:60Minites Counter

私見:
 レベルソクラシックサイズ用のキャリバーで86*系の初モノ。JLCはなぜかシンプルな機械ではなく、なんらかの複雑機構をつけた新キャリバーをリリースしてから後に単純なモデルが出る。これもその典型。6振動のスピロフィン付き。スムーステンプ。
 輪列はいわゆるスモセコ輪列であるが機械としてみたときには822ほどの審美性は無い。B面は60分フライバックカウンターで、これは常に回転しておりワンプッシュで帰零するというもの。これに12時間計が付いていればレギュレーターとしても使えたのに、と思うところもあり。手巻き感もなかなか良い。
 新しい設計だけにそつなくまとめられており、性能的にも極めて安定している。

20.Mar.2005


<Cal.879>

代表的な時計: Reverso Grand Date
2003年、8日巻き角型キャリバー。スモセコ三針+PR+BigDate。8振動でスピロフィン付き。スムーステンプ。

私見:
 '02年の'70emeの875からスワンネック及びDay/Night表示を取り去ったもの。ツインバレル(DUO SPRING BARELLS)による8日巻き、安定したトルクを出せるように非常な開発期間を経て世に出たものであり、当初はBigサイズで実現する予定だったものがサイズ的にコンプリ化は厳しいとの事からXGTサイズとして開発された。開発当初は6振動だったようであるが精度実現の面から8振動となったようだ。
 ツインバレルということでデザインされた一目でそれとわかる特徴的な外見を持つ。上部ブリッジは香箱二つを押さえることから機械のこの部分は厚みがあり、下部の脱進器周辺の薄さと少しアンバランスな感じがする。さらに875では存在したスワンネックが無いことで、テンプ受けの見た目が寂しい印象が有るがもちろんスピロフィンなので実用上は何の問題も無いはずである。
 手巻き感はまずまずであるが、巻き止まりが無いため手巻き時計としては若干違和感がある。しかし実用面ではパワリザ表示があるため問題は全く無い。
 この機械は、あくまで私見であるが正直に言って上ブリッジと下ブリッジの段差があることなどから面のツライチ感に乏しく、面白い機械であるが822ほどの審美性を感じない。コートドジュネーブはエンドミルで仕上げました的な印象があり(今やどんな機械も実際にそうなんですが)、機械が大きい分見た目的には正直厳しい。
 またJLCは2004年に新時代の自動巻き97*系を世に出すが、その先進性と見比べるとどうも中途半端な気がしてならない。古典なら822のように古典的なものを、先進ならフリースプラングで両持テンプだ!として欲しい。889が899になったよりも遅く出ているのだから、ここはちょっと疑問が残るところである。いきなり辛口でスマソ。

20.Mar.2005