LD(学習障害児)
(Learning Disabilities:LD)


文部省による定義


 ◆ 学習障害とは、基本的には、全般的な知的発達に遅れはないが、聞く、話す、
   読む、書く、計算する、推論するなどの特定の能力の習得と使用に著しい困難を
   示す、様々な障害をさすものである。

 ◆ 学習障害は、その背景として、中枢神経系に何らかの機能障害があると推定
   されるが、その障害に起因する学習上の特異な困難は、主として学齢期に
   顕在化するが、学齢期を過ぎるまで明らかにならないこともある。

 ◆学習障害は、視覚障害、聴覚障害、精神薄弱、情緒障害などの状態や、家庭、
   学校、地域社会などの環境的な要因が直接の原因となるものではないが、
   そうした状態や要因と共に生じる可能性はある。また、行動の自己調整、対人関係
   などにおける問題が学習障害に伴う形で現れることもある。


学習障害児はどんな子どもたちなのか?


        学習障害は幅広く、いろんな子どもたちがいます。学校では主に、
        次のようにみられている子どもたちです。

          (1) 言語能力の困難
          (2) 読字・書字の困難
          (3) 算数・計算の困難
          (4) 推論の困難
          (5) 社会性の困難
          (6) 運動の困難 
          (7) 注意集中・多動による困難

          ・読み書きが苦手な子
          ・能力はあるのに、勉強やテストができない子
          ・落ち着きのない子
          ・不器用な子
          ・話を聞かない、注意力の低い子
          ・しつけの悪い子
          ・怠けているために、勉強ができない子

   教室の中には、しつけが悪く、怠けていて勉強ができない子どももたしかに
   存在します。しかし、学習障害は、「障害のために」このような、状態になって
   しまうのです。決して親の育て方の問題ではありません。
   しかし、学習障害がまだ、(学校の教員を含めて)一般的に知られていないために、
   しつけの問題と見られてしまうこともあります。
   ここに、学習障害児を持つ親の大きな苦労の一つが現れます。


なぜ、そのような状態になってしまうのか?


  学習障害児はまず感覚−運動の段階で問題を持ちます。学習障害児は
  不器用であったり、バランスが悪かったりします。また、感覚どうしがうまく協応
  できないといった問題を持ちます。これは、「お手本どおりに文字を書く」といった
  ことが困難になることにつながります。

  知覚認知の段階では、学習障害児は視覚認知や聴覚認知などの弱さが見られます。
  正確に文字や音を見分けたり、聞き分けたりすることが困難になります。そのために、
  文字を読むことが困難になったり、話を聞くことが苦手になったりします。また、集中力
  にも問題を持つ子どもは、注意して他人の話しを聞くことなどが難しくなります。

  概念形成の段階では、記憶の問題が大きくからんできます。必要な情報を必要なと
  きに、必要な形で引き出すことが難しいのです。そのために、「これとこれは似ている
  から仲間で、これとは違う」といった、概念形成に必要な情報処理がうまく
  行えなえないのです。

  このような苦手さを持つと、学校で行われる「教科学習」「読み書き算数」が困難で
  あることは、容易に想像できます。私たちが何気なくできることは、彼らにとって、
  非常に難しいこともしばしばあるのです。

  このほかにも、知覚情報処理の問題や集中力の問題を持ち、また、このような苦手な
  部分は子どもにより大きく異なるため、子ども一人一人にあった指導方法、
  個別教育プログラム(IEP)が必要になるのです。


学習障害児はどのくらいいるのか?


  報告によると2〜3%の割合で、多い報告では5%の割合で、この障害を
  持っているとも言われています。海外の報告では10%以上にも上る割合で
  存在していると言われています。日本における認知度は低いために、
  彼らは学校では「へんな子」「落ち着きのない子」「親のしつけの問題」などと、
  言われており、まだ、適切な教育を受けられない現状にあります。海外では
  LD児のための学校や、大学の受験枠がありますが、日本ではまだ、
  そのような状況にはありません。


ADHDとは?


  LDと密接な関係にあるのがADHDです。ADHDは「注意欠陥/多動性障害」
  と訳されます。読んで字の如く、「注意集中することが難しく」
  「多動(じっとしていられない)」という障害です。ADHDの40%はLDを同時にもち、
  LDの70%はADHDを持つとも言われています。
  ADHDだと、学習を行う以前の問題で、学習が可能になるような落ち着きや
  集中力などを身につけたり、そのような状態になれるような環境を整えることが
  重要になります。ADHDにはリタリン等の向精神薬などが有効な場合もあります。
  このような薬を使うことで、落ち着きが出たり、集中力が増したりします。
  これらは根本的に「病気を治す」と言うことではなく、「学習ができたり、
  生活しやすくするためのお手伝い」としてのお薬になります。薬に関しては、
  これらの障害に詳しい小児科や児童精神科で医師と相談し、
  処方してもらうことができます。
  また、教育現場では、子どもの「学習の困難さ」は、LDのためなのか、
  ADHDのためなのか、それとも両方のためなのか、見極める必要があります。
  この点に関しても、詳しい小児科や児童精神科、神経科などを利用したり、
  情報交換することが重要になります。


学校の先生方へ


  最近、LDがにわかに取り上げられ、日本では新しい障害の概念のために苦労して
  いる現状が容易に想像できます。どうすればいいでしょうか、といった、
  たいへん漠然とした質問も多いのも事実です。「うちの子どもは学習障害なんです」
  と保護者に打ち明けられたとき、決して次のようなことを言わないでください。

  「そんな子どもはたくさんいます」「がんばればできます」
  「気にしなくてもいいんじゃないですか」「普通ですよ」

  多くのお母さん方は、勇気を出して先生に伝えるのです。
  こんな返事を待っているわけではありません。学習障害を理解し、
  できる限り子どもに関する情報を集め、
  時には専門機関と連絡をとって、子どもにとって最適の学習環境を
  望んで欲しいという願いがあるのです。

  「クラスには多くの子どもがいるのに、お宅のお子さんだけが、
  問題を持っているのではありませんよ」などと、言わないでください。
  学校の役割が大きく変わろうとしているいま、ひとりひとりを見つめることが
  重要になっています。学習障害児はそのような「ひとりひとり」の視点が、
  他の子どもより、もっと多く必要なのです。学校の、そして教員の重要な
  仕事の一つです。学校現場の先生方には、このような学習障害児の特徴と、
  保護者の想いを理解して頂きたいと思います。

  彼らは、確かに「やればできる子」ですが、「他の子どもたちと同じやり方でできる」
  子どもたちではありません。「その子どもにあったやりかたでやれば」
  できる子どもたちなのです。これまでの、先生方の常識とは異なるかもしれません
  が、現実に、そのような子どもたちが大勢いるのです。
  ぜひ、学校の先生方に、理解し、接して頂きたいと思います。