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管理人の好きな児童書 

(2003.11.10更新)



シェーラひめのぼうけん 魔神の指輪
村山早紀(作)・佐竹美保(画)/フォア文庫/2000.3初版/小学中学年以上

 怪力のかわいいお姫さまシェーラ、気の弱い魔法使いの少年ファリード、元泥棒の少年ハイル。彼らは悪い魔法使いサウードにより石にされてしまった王国の呪いを解くために、魔法の杖を手に入れようと世界中を旅してまわります。その壮大なスケールの物語のこれは第一作目。
 全十巻あって、巻を追うごとにどんどん面白くなっていき、目が離せません。字が大きく、ふりがなも打ってあるし、表現もやさしく子ども向けの本なのですが、単純な勧善懲悪ものではないところが大人をも夢中にさせてしまう秘密かもしれません。
 本当のやさしさとは? 勇気とは? と一巻ごとにいろんなメッセージを秘めていて、それが胸を打ちます(実は読んでいて大人の私でさえ涙が止まらなかった巻も……(^^;))。
 登場人物も多彩で実に魅力的。実は私は悪の魔法使いサウードが一番好きだったりします(^.^)
 小5の娘がハマってしまい、まさに寝食を忘れて読みふけっているところです。

 シリーズは以下の通り。
1.魔神の指輪 2.うしなわれた秘宝 3.ダイヤモンドの都 4.海賊船シンドバッド 5.空とぶ城 6.海の王冠 7.ガラスの子馬 8.闇色の竜 9.魔法の杖 10.最後の戦い


狼とくらした少女ジュリー
ジーン・クレイグヘッド ジョージ(作) ジョン・ショーエンヘール(絵)・西郷 容子 (翻訳)/徳間書店/1996.11.1初版/小学高学年以上

 エスキモーの少女ジュリーは両親を亡くしたあと、13歳の時に許婚と結婚させられてしまうが、夫への嫌悪感から家を飛び出してしまう。
 ツンドラを横切って港町まで歩こうと決心する彼女だが、食料は底をつき、酷寒の世界の中で死の影が忍び寄る。そんな時、ジュリーは狼の群れに出会い、その仕草を必死で真似て仲間に入れてもらおうとする。
 絶望的な環境の中で知恵と勇気を持って生き延びようとする少女が、自然と共存するエスキモーの誇りに目覚めてゆく姿が描かれている。

1973年アメリカニューベリー賞受賞

小さな山神スズナ姫―――小さなスズナ姫
富安陽子(作)・飯野和好(絵)/偕成社/1996.3.1初版

 数々の山を治める山神のひとり娘スズナ姫は300歳(!) 人間で言えば5、6歳の女の子です。父のもとから独立したいと願っていますが、娘を半人前扱いする父は頑として許してくれません。
 ある日とうとう、スズナ山を一日で紅葉させることが出来れば独立を許すと父から約束をとりつけるのですが……。

 雄大できれいで夢にあふれた物語。困難を乗り越え、物事をやり遂げることの素晴らしさを多くの子どもに味わってほしいと思います。親の立場としては、子どもを信頼して任せることの大切さに気づかされます。
 ほんと、親も気づかないうちにいつの間にか子どもの中にはいろんなものが育っているんですね。
※シリーズものです。

ルドルフとイッパイアッテナ
斉藤 洋(作)・杉浦範茂(絵)/講談社/1987.5.1初版/小学中学年以上

 魚屋のおじさんに追いかけられた黒猫のルドルフは、トラックの荷台に逃げ込むが、そのままトラックが走り出したからさあ大変。着いたところは故郷を遥か遠く離れた東京だった。
 一匹狼(猫だけど;)の強い野良猫イッパイアッテナと知り合ったルドルフの刺激的で楽しい野良猫生活の物語。
 世間知らずの飼い猫だったルドルフにいろんなことを教えてくれるイッパイアッテナ。彼の人生哲学がまた心憎いんですよ。
※シリーズものです。
第27回講談社児童文学新人賞入賞作。

ハリー・ポッターとアズカバンの囚人
J.K.ローリング(作)・松岡佑子(訳)/静山社/2001.7.18初版/小学高学年以上

 すっかりおなじみになった世界的なベストセラー、ハリー・ポッターシリーズ第3巻。
 今回は要塞監獄アズカバンから脱獄した囚人、シリウス・ブラックがハリーの命を狙うという物語。ロンやハーマイオニーといった仲間たちとの絆も更に深まり、空飛ぶ箒に乗ったクィディッチの試合も楽しめる。ハリーたちの会得する魔法も更に高度になってゆき、ハリーの父親の学生時代も明かされることになる。
 いつもながらサービス満点の展開。そして、最後にはあっと驚くような大どんでん返しが待っている。1巻から張られていた伏線がここで明らかになる場面もあり、7巻で終わるこの壮大な物語はこのあと一体どういう展開を見せるのだろうと期待に胸が膨らむ。

 個人的には、全世界で1億部のベストセラーと言われると、ちょっと首を傾げてしまう。1〜3巻どれもクライマックスからラストまでの息詰まる展開に比べ、そこへ至るまでの過程が少しゆっくり気味に思えるし、ダーズリー一家やマルフォイ親子の描き方も憎まれ役のステレオタイプであるように感じられる。
 でも、それらを差し引いてもこのシリーズが傑作であることに変わりはない。1巻よりも2巻、2巻よりも3巻と巻を追うごとに面白さが増してゆくのはさすが。

十一月の扉
高楼方子たかどのほうこ/リブリオ出版/99.9.30初版/小学高学年以上

 中学2年生の爽子は、ある日偶然見つけた「十一月荘」という下宿屋に強く惹かれる。父の転勤により引越しが決まった時、彼女は二学期が終わるまでの2ヶ月間、「十一月荘」にひとりで下宿することにする。
 「十一月荘」の住人たちとの心温まる交流や耿介こうすけという気になる少年の存在が、自分や周囲の人々を見つめながら真摯に生きて行こうとする少女の目を通して描かれる。「十一月荘」に滞在する間、愛すべき周囲の人たちをモデルに爽子は『ドードー森の物語』をノートにしたためていくのだった。
 ちょっと古臭い感覚のところも垣間見えるけれど、読後感が温かくて爽やか。爽子の書く『ドードー森の物語』も劇中劇のように挿入されていて楽しめる。

虚空の旅人
上橋菜穂子(作)佐竹美保(絵)/偕成社/2001.8初版/小学高学年以上

 女用心棒バルサのシリーズ外伝。(1巻目「精霊の守り人」の紹介はこちら
 主人公は「精霊の守り人」でバルサに命を救われた新ヨゴ皇国の皇太子チャグム。14歳の利発な少年に成長したチャグムは星読み博士の青年シュガと共に、ヤルターシ海のサンガル王国の国王即位の儀に招かれる。
 ところが、祝いの席で新王は呪いによって意識を奪われた弟王子によって傷つけられ、チャグムは国と国を巻き込む大いなる陰謀に巻き込まれてゆく。

 国のためなら人の命も道具のように扱うサンガル王国の王女カリーナ。武器を取り、殺し合いのための戦争に意気揚々と旅立つ王子タルサン。そのどちらの生き方も自分にはできない。たとえ幼い夢と言われようと、自分は自分のやり方で国を作ってゆこう――そうチャグムは決心する。
 感動が胸いっぱいに広がり、いつまでも余韻の残るラストだった。
 このシリーズは対象を小学高学年としてみたが、大人が読んでも時間を忘れて没頭してしまうほど面白い。ぜひ読んでみてほしい。


夢の守り人
上橋菜穂子(作)ニ木真希子(絵)/偕成社/2000.6初版/小学高学年以上

 女用心棒バルサのシリーズ3巻目。(1巻目「精霊の守り人」の紹介はこちら
 人の世界とは別の世界で花をつけ実を結ぶその<花>は、人の夢を必要としていた。 一方、この世をはかなんでいる者は、花の世界で永遠に夢を見続けることを望んだ。
 花の夢に囚われてしまった姪を助けようとして、魂を奪われ人鬼と化す幼なじみのタンダをバルサは救えるか――。

 更にファンタジー色の濃くなった3作目。「精霊の守り人」に出てきたチャグムが再び登場するのもファンにはうれしい。

日本図書館協会選定図書 全国学校図書館協議会選定図書 路傍の石文学賞


闇の守り人
上橋菜穂子(作)ニ木真希子(絵)/偕成社/99.2初版/小学高学年以上

 女用心棒バルサのシリーズ2巻目。(1巻目「精霊の守り人」の紹介はこちら
 バルサは生まれ故郷のカンバル王国に戻ってくる。かつて父は国王に殺され、その親友ジグロは幼いバルサを連れて逃げるが、そのために裏切り者の汚名を着ることになってしまった。
 今は亡きジグロの汚名を晴らすため、バルサはうごめく陰謀に立ち向かおうとする。

 大切な親友の娘を助けるために自らの人生を狂わせ、命を狙われ、友と殺しあうことになったジグロ。彼は心の底にバルサへの愛情とは裏腹に彼女への憎悪と恨みの念をも抱えていた。
 互いへの怒りと恨みをぶつけ合い、受け止めあうことで、ジグロの魂を弔うバルサの闘いのシーンが圧巻。

日本図書館協会選定図書 中央児童福祉審議会・特別推薦文化財 日本児童文学者協会・協会賞 路傍の石文学賞


ハリー・ポッターと秘密の部屋
J.K.ローリング(作)・松岡佑子(訳)/静山社/初版2000.9.19

 ホグワーツ魔法学校に出没する姿なき声に、次々に襲われる生徒たち。闇の魔法使いスリザリンの継承者とは一体誰なのか? 仲間だと思っていた人物がハリーの足元をすくい、「名前を呼んではいけないあの人」ヴォルデモートが再び彼の前に立ちはだかる。ハリーとロンは襲われたハーマイオニーを救うことができるのか!?

……と、アオリ文句はここまでにして(笑) 第1作よりも更に深く魔法学校での生活を楽しむことが出来るだろう。本筋とは関係なく随所に出て来る魔法の小道具が心憎く、作者のあふれんばかりの豊かな想像力と無限の才能に感服してしまう。

 このローリングという作者は、子どもの喜ぶツボを押さえる天才でもある。人間の外側と内側をひっくり返してしまう魔法だの、骨折の治療に失敗して骨を抜かれて肌色のゴム手袋のようになった腕だの、魔法をかけ損ねて洗面器いっぱい以上のナメクジをゲーゲー吐き続けるだの、子どもがワクワクするようなグロテスクな話がわんさと出て来る。想像すると気持ち悪いようだが、ユーモラスに描かれているので決して不快感を感じさせない。

 魔法の車で空を飛んだり、巨大な怪物に襲われたり、変身が解けかけて正体がバレそうになったり、悪の化身と命がけの対決をしたりと、全編スリルとサスペンスに満ちている。子どもはもちろん、大人も楽しめる物語である。


教室 ――6年1組がこわれた日――
斉藤栄美(作)・武田美穂(絵)/ポプラ社/初版99.12

 明るく子どもらしい素直さに満ちた親友、はるひと違い、美月は自分の気持ちを素直に表すことができない。いつも“いい子”で大人たちの受けがいいはるひに対して、美月の心の中にはいつしかやり場のない反発が募ってゆく。

 ある日、担任教諭のふとした言動がきっかけでクラスの女子の間ではるひに対するいじめが起こり、美月もとうとうそれに加担してしまう。
 学級会で不満を爆発させるクラスメイトたち。美月は「ひいきをする先生が嫌い」と、思い切って自分の気持ちをぶつける。はるひもまた、周りから“いい子”として見られることに居心地の悪さを感じていたことを告白する。

 思春期の入口に立つ少女たち。悩み、もがきながら成長してゆく彼女たちに、「ありのままの自分でいいんだよ」というメッセージをこめた作品。


でりばりいAge
梨屋アリエ/講談社/初版99.5.20

 夏期講習を受ける学校の窓からは、民家の庭に干された風にはためく白いシーツが見える。あれは船の帆……。
 中学生の真名子は夏期講習の途中で息苦しさを感じ、近所の民家に駆け込んでしまう。そこには風変わりな大学生の青年がいた。祖父の寝巻きとシーツを毎日毎日洗濯しつづける青年。その意図は……?
 彼と心を通い合わせながら真名子は成長してゆく。
 友達との関係や親との関係に悩む思春期の少女の心情が、ヒリヒリするほど痛く心に迫ってくる。


サンタの友だち バージニア 「サンタはいるの?」と新聞社へ投書した少女
村上ゆみ子(著)東 逸子(絵)/偕成社/初版94.12

 今から約100年前のアメリカで、バージニアという8歳の少女がサン新聞社に手紙を送った。
「サンタクロースってほんとにいるんでしょうか?」
 それに対してサン新聞社では社説を使ってこう答えた。
「そう、バージニア。サンタクロースはいるのです。この世の中に愛や人への思いやりや真心があるのと同じように、サンタクロースも確かにいるのです。わたしたちの周りにある愛や思いやりは、あなたの生活を美しく楽しいものにしているでしょう? サンタクロースを見た人は誰もいません。でも、だからといって、サンタクロースがいない、と言えるでしょうか。この世の中には、目に見えないものや、見ることが出来ないものがたくさんあります。目に見えない世界を覆うカーテンを開けることが出来るのは、信じる心、想像力、詩、愛、夢見る気持ちだけなのです……」

 サン新聞社では毎年クリスマスが来るたびにこの社説を載せ、他の新聞社でも取り上げるようになった。そのうちに、「そう、バージニア」と言えば、誰もがにっこり笑って「サンタクロースはいるのです」と続けられるほど、アメリカ人にとってなじみ深いものとなった。
 社説の「お手本」として、日本の新聞社でも取り上げたことがあるので、一度は目にしたという方も多いだろう。1897年に書かれたこの文章は、古さを感じさせるどころか、いつまでも美しい輝きを失うことなく、読み返すたびに胸にせまるものがある。

 この本では、質問の手紙を送ったバージニアという少女が、どんなきっかけで手紙を書いたか、社説を書いたのは誰か、そしてバージニアがその後どんな人生を送ったかを、バージニアの孫娘のパットが幼い息子たちに語って聞かせるという形をとって紹介している。
 巻末にサン新聞社の社説の原文を掲載。
 姉妹書として、バージニアの手紙と社説を載せた「サンタクロースっているんでしょうか」中村妙子(訳)/東 逸子(絵)がある。


スウィート・メモリーズ
ナタリー・キンシー=ワーノック(作)金原瑞人(訳)ささめやゆき(画)/金の星社/99.11初版/小学高学年以上

「まわりから注目されることなんて、絶対にいや」
 そう思う引っ込み思案のシェルビーは、みんなに勧められても絵のコンテストへの出品をかたくなに拒否する。
 楽しみにしていた誕生パーティーの前の日、ママと一緒におばあちゃんの看病に泊りがけで行くはめになったシェルビーは、ついおばあちゃんにつらく当たってしまう。しかし、滞在するうちに、だんだんとおばあちゃんとわかりあえるようになっていくのだった。
 今度はシェルビーの家に滞在することになったおばあちゃん。だが、留守の間に家が火事で全焼してしまう。おばあちゃんの思い出が詰まった大切な古いアルバムも燃えてしまい、ショックを受けて沈み込むおばあちゃんにシェルビーは・・・・・・・

 シェルビーがおばあちゃんに渡すプレゼントがとってもステキだった。心が暖かくなる本。第46回青少年読書感想文全国コンクール課題図書。


精霊の守<も>り人
上橋菜穂子(作)ニ木真希子(絵)/偕成社/96.7初版/小学高学年以上

 女用心棒バルサシリーズの1冊目。
 「短槍<たんそう>使いのバルサ」と呼ばれる女用心棒バルサは、旅の途中で新ヨゴ皇国の第二皇子チャグムの命を救い、それがきっかけで彼の用心棒をすることになる。皇子は雲の精霊の卵を体内に宿す、精霊の守り人だった。
 100年に一度だけ、人の体に宿って新しく誕生する精霊。無事に生まれることが出来れば、その先100年は人の世に大きな災害や飢饉が起きないという。
 皇国からの追手や卵を狙う怪物と戦うバルサは、はたして皇子を守りきり、無事に精霊の卵を孵すことができるのか。

 この物語には、いやおうなしに運命によって選ばれ、翻弄されてゆく人物がふたりでてくる。
 ひとりは、「精霊の守り人」として選ばれる皇子チャグム。もうひとりは、戦いに満ちた生活から、普通の生活に戻ることができないバルサ。
 ある日突然、自分の周りの全てを変えてしまう運命の大きな手。その手の中で、もがきながら苦しみながら、生き抜いていくしかない・・・。全てが終わったあとで、バルサはそう思う。

 このシリーズを読むと日本のファンタジーにもこんなに質の高いものがあるんだと誇らしい気持ちになる。私はハリー・ポッターよりも感動した。
 挿絵はスタジオジブリで原画を担当しているアニメーターが描いている。これ、アニメ化されると面白そう。宮崎 駿さん、やってくれないかな(笑)
日本図書館協会選定図書 全国学校図書館協議会選定図書 野間児童文芸新人賞 産経児童出版文化賞 路傍の石文学賞


ハッピーバースデー 命かがやく瞬間(とき)
青木和雄(作)加藤美紀(画)/金の星社/97.12初版

 母親に存在を否定する言葉を投げつけられるたびに、自分ののどを指でつまむ行為を繰り返していた11歳の少女あすかは、誕生日に「生まれてこなければよかった」と言われたことで声を失ってしまう。
 祖父母の愛と自然の力で自分を取り戻した彼女は、やがて級友のためにいじめに立ち向かい、自分らしく生きる自信を高めてゆく。
 一方、親の期待通りのいい子として生きてきた兄・直人は、そんな人生に疑問を抱き、自分の足で選んだ道を歩き出そうとする。

 親と子のカウンセラーとして長年、指導に当たってきた作者が、実際に受け持った子どもたちを登場人物に重ね合わせながら書いた物語だけにリアルである。いじめを克服した少女が、今度は反対にいじめた側をいじめ返すようになるところなど、きれいごとではなく、現実の社会ではそんな展開になるだろうなあと納得する。
 あすかは祖父母の愛によって救われるわけだが、娘を精神的に虐待する母親もまた、病弱な姉のために両親から顧みられず、心に傷を負ったまま成長したアダルトチルドレンだった。母をそんなふうにしてしまったのが、あすかを救ってくれた祖父母だということに運命の皮肉を感じた。

20万部突破のベストセラーで、アニメ映画化された作品。第44回青少年読書感想文全国コンクール課題図書。


ぜったいに飼ってはいけないアライグマ
さとうまきこ(文)杉田比呂美(絵)/理論社/99.10初版

 アライグマといえばラスカル、ラスカルといえばアライグマ。というわけで、アライグマ=かわいいという印象を持っている人は多いはずだ。児童文学者である作者も、TVの液体石鹸のCMに出て来るアライグマのあまりの愛らしさに、あとさきも顧みずに衝動買いしてしまう。ペー太と名前をつけ、かわいがろうとするのだが・・・。

 「ネコちゃんみたいなものですよ。エサはお菓子をあげてください」などと言う無責任なペット店の言葉は大間違いだったことを作者は痛いほど思い知る。
 アライグマは決して人に慣れることはない。6ヶ月たてば野性化してしまうのだ。それに鋭い牙と爪を持ち、子牛さえかみ殺してしまうほどの猛獣だったのである。
 ペー太を散歩させたり、風呂に入れるたびに繰り返される流血騒ぎ。器用に爪で引っ掛けてはすべての引出しを開けてしまい、荒らしまくられる部屋。作者はとうとうペー太をなつかせることを断念し、檻に入れて飼うことになる。

 タイトルの「ぜったいに飼ってはいけないアライグマ」という言葉は、最初は「安易に飼うとひどい目に遭うんだから。私たちがどんな苦労をしたか、まあ見てちょうだい」という呼びかけに聞こえる。
 しかし、檻に入れてエサだけを与えられ、飼い殺しにされている近所のアライグマが、マスターベーションを繰り返しながら静かに狂ってゆく話や、安易に飼われ、安易に棄てられる猛獣たちの数が東京都だけを見ても年々増えていっている現状といった話を読んでいるうち、これはアライグマたち野生動物の立場に立った、「ぜったいに飼ってはいけない」という訴えなんだということがわかってくる。

 最後にペー太は死線をさまようような重病になり、奇跡的に回復したとたん、飼い主である作者になつくようになる。「ここまでくるのに8年かかった」と作者は書いているが、私は素直に喜べなかった。人間の献身的な看護が野生動物の心をほぐしたというよりも、ストレスにさらされる生活に加えて、体がボロボロになるような病気のせいで、ペー太の野生としての本能が狂わされてしまったような気がしたのだ。
 本来野生動物はペットには成り得ない。それは誰が考えても明白なことだ。安易に飼われ、安易に棄てられる動物がこれ以上増えないことを望むばかりである。


ハリー・ポッターと賢者の石
J・K・ローリング(作)松岡佑子(訳)/静山社/99.12初版

 ニュースでも取り上げられたので、ご存知の方も多いだろう。イギリスではこの本を読むために子ども達が書店や図書館に列を作って並ぶという騒ぎにまでなっている。あまりの人気に「邪教徒である魔法使いを英雄扱いしている」として、購入禁止にする学校もあるとか。

 作者のローリングは34歳のシングルマザー。生活保護を受け、コーヒーショップの片隅でたった一杯のコーヒーを頼んで、子どもが寝ている間に書いた物語が世界中で大ヒットし、今や億万長者である。
 彼女が最初に書いたのはシリーズ全7巻の最終章だという。それは2003年に物語が完結するときまで、金庫に大事に保管されているそうだ。

 物語は主人公のハリーが親戚のダーズリー一家にもらわれてくるところから始まる。彼の両親は魔法使いで、闇の魔法使いに殺されてしまうのだが、赤ん坊だったハリーは額に稲妻型の傷を負っただけでなぜか助かるのだ。
 ダーズリー家の人々は凡庸なマグル(普通の人間)であり、摩訶不思議な現象や魔法などといったものを理解しようとせず、ハリーをやっかい者扱いする。
 ある日、11歳になったハリーの元に魔法学校からの入学案内が届き、そこで初めて彼は両親が魔法使いだったこと。自分もまたそのひとりであることを知る。

 ハリーがホグワーツ魔法学校に入学したあたりから、物語は俄然おもしろくなってくる。杖の選び方、魔法薬の調合の仕方といった授業や、合言葉を言わないと開かないドア、徘徊するゴースト、ドラゴンの赤ちゃん、魔法の箒にまたがって行うスピード感あふれるスポーツなどなど、作者の豊かなイマジネーションの世界で思う存分遊ぶことができる。

 ラストに用意されている、闇の魔法使いとの宿命の対決も、まるでインディ・ジョーンズかロールプレイングゲームのような展開でハラハラどきどきする。実に映画的なストーリーだと思っていたら、ワーナーブラザースが2001年に映画化するらしい。ううむ。なるほど。
 お話としては一巻で完結しているのだが、続きが待たれる作品である。


ジーク −月のしずく 日のしずく−
斉藤 洋(作)・小澤 摩純(絵)/偕成社/小学中級以上/92.4初版

 ジルバニア国のオオカミ猟師の少年ジークは、片目でありながら剣と弓の名手。彼は自分が実はジルバニアの王女と敵対するゴルドニアの王子との間に出来た子どもであることを知る。
 剣の腕を見込まれ、4人の勇者と姫と共に大魔アーギスの島へ向かうジーク。果たしてアーギスとは実在する魔物なのか、ただの迷信なのか・・・。アーギスを倒すには「月のしずく、日のしずく、まじりけなきまざりもの」が必要だという。古い言い伝えの意味するものは・・・?

 ロールプレイングゲームを彷彿とさせる登場人物や筋立て。小5の息子は夢中になって読みふけっていた。
 でも、ただの冒険物語ではなく、剣の試合で人を殺してしまうことへの葛藤や、万能であるはずの王が迷信に縛られ惑わされて、国民を不幸にすることの愚かさなどを問いかけていて、なかなかに深い。


かっぱうたろう  おかしなお客の四つのお話
おの りえん(作)・かじやま としお(絵)/福音館書店/小学初級から/94.10.10初版

 次の四つのお話からなっている。
かっぱうたろう  河童のうたろうが住む沼は黒雲が湧き起こって干上がってしまい、うたろうは優しいじいさまとばあさまに助けられる。
 ある時、また沼の上に黒雲が湧き起こり、村の衆は河童が悪さをするものと思って、手に手に鎌を持ってうたろうを襲いに来るのだが・・・。
かんの虫  一人暮らしのおじいさんのところへ、ある晩、猫の親子がやってくる。
 子猫の耳の中に住み着いて、性格を凶暴にしてしまう「かんの虫」を追い出して欲しいと言うのだ。
 おじいさんは「かんの虫」をおびき出すために、「かんの虫」の出世話を始める。
ひきがえる不動産  不動産屋を始めたひきがえる。最初のお客は黒い子猫。
子猫の希望する家を探すが、何軒回っても誰も子猫を拾ってくれない。
 雨の中をさまよううち、子猫はだんだんと弱って死にそうになってしまう。
どしゃぶりの夜のお客さま  深い森の奥に住むロキのところへやってきた小鬼は、えらそうでヘソ曲がり。おにぎりを一杯食べて帰ってゆく。
 1年後にまた現れた小鬼は見違えるような大男になっていた。「大きくなるために何でも食った。人間だって食った」と言う大男。
 ロキが嘘を見抜くとだんだんとしぼんでしまうのだが・・・。
 ストーリーテリングの見本のような物語。次はどうなるのか、ハラハラどきどきして、ページをめくらずにはいられない。大人が読んでも楽しめること請け合い。


こねこムーのおくりもの     *シリーズものです。
江崎雪子(作)・武田美穂(絵)/ポプラ社/小学初級向き/86.12初版

 こねこムー シリーズの第一作目。
友達の木馬を探しながら旅をするこねこムーの物語。小学1〜2年向きだけど、あなどっちゃいけない。文章のひとつひとつが深くて心に染み入るような味わい。


それいけズッコケ三人組  *シリーズものです。
那須正幹(作)・前川かずお(絵)/ポプラ社/小学中級以上/78年初版

 うちの息子が小学生のころ、ハマってました。小学生をお持ちの親御さんなら、今さら紹介するまでもないかも。98年夏には映画化され、NHK教育テレビでドラマにもなった、全国に約4万人のファンクラブ会員を持つ超ベストセラー。2004年12月発売の第50巻『ズッコケ三人組の卒業式』をもって完結。
 いたずら好きでおっちょこちょいのハチベエ、勉強家でとぼけたハカセ、のんびり屋で万事スローモーなモーちゃんの3人が巻き起こす、ゆかいな事件の数々。
 登場人物がとにかく生き生きしていておもしろい。子どもたちが熱狂的に支持するのもうなずける。

「それいけ! ズッコケ三人組」ホームページはこちら


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