草模様

おいしい本を召し上がれ




読んでいるうちに、明日の朝は早起きをしておいしい朝食を作ろうと思ったり、
丁寧に紅茶を淹れてみたくなったり、
友だちを呼んでパーティーを開いてみたくなったり、
庭にミントを植えてみようと思いついたり・・・・。
ページの間からチョコレートが溶け出してきたり、
オムレツの匂いが立ち上ったり、バターの匂いが漂ってきたり。
空腹時には決して読まないで! って思いたくなるほどおいしそうな料理本の数々。
食卓を巡る幸福物語、なんて本があったかどうかはわからないけれど、
テーブルのまわりにはいつも幸福な会話のかけらがちらばっていたし、
テーブルの上には幸せがいっぱい乗っていたような気がします。
デパートにまつわる幸せな思い出も、実は食べ物と大きくかかわっています。
子どもの頃のお子様ランチやチョコレートパフェ、泡のはじけるソーダ水ーーー。
大人になってからは、ショッピングの途中のデザート付きのティータイムやランチ、
食料品売り場の独特の活気とさまざまな匂い。
食べ物にまつわる本を読んでいると、そんな懐かしくおいしい感情も湧きあがってきて、
しばし夢時間。本がまるで幸福の道案内をしてくれるかのようです。



エミリ・ディキンスンのお料理手帖


天才詩人・エミリ・ディキンスンの詩とレシピが収録されたとても洒落た本。ジンジャーブレッド、コーン・ケーキ、スープ・プティング、ワインゼリーなど、16種類のパンやデザートの数々、そして、美しい写真と詩の組み合わせは、まるで映画を観ているようにすてきです。
エミリー・ディキンスンというと、詩人という認識しかありませんでしたが、この本によると、彼女は詩人としてよりも、ライ麦入りのインディアン・ブレッドとジンジャーブレッドを作るのが上手だということで知られていたそうです。エミリー・ディインスンは、台所ではおいしいパンやケーキを作り、机の上では精神的な食べ物とでも言うべき詩や手紙を生み出していたのです。
(松尾晋平監修 武田雅子・鵜野ひろ子共訳 山口書店刊)

カモイクッキング
「さあ、しっかり生きなくちゃー。人生いまからよ。おいしいものを食べてーね」

下着デザイナーにしてエッセイスト、そして画家でもある鴨居羊子のお料理エッセイ。内容を手っ取り早く知っていただくために、まずは裏表紙のコピーをご紹介しましょう。
「食通なんておよびでない。いつもしろうと、平凡な舌と健康な胃袋をもち、好奇心いっぱいに食事を楽しむのがカモイ流。大連帰りのマダムに教わったロシア料理、思い出のジブ煮、フラメンコダンサーのきびしくも豊かなメニューETC.読むだけで生ツバのわく、なんとも幸福なエッセイ」
本当にそう。おいしいものを作りたくなったり、食べたくなったり、ああ、人生は何て楽しいのだろう、とわけもなく思ったり・・・この本を読むと、文句なしにハッピーな気分になってくるのです。
私の友人はこの本に紹介されている「豆サラダ」を早速自分のレパートリーに取り入れたし、私は私で、「さつまいもとリンゴとレーズンとサワークリームのデザート」をお気に入りに追加して毎日のように味わっているのです。
「暮らしと料理が10倍楽しくなる」ことうけあいの一冊です。(鴨居羊子著・ちくま文庫)





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