
ボランティアーMEALS ON WHEELS
日本にいるときは、忙しくてボランティアをするひまがなかったので、オーストラリアではぜひ何かをやりたいと思っていた。昨年9月のオリンピック休暇の間に、以前から地域のフリーペーパーで見つけていた、「MEALS ON WHEELS」というボランティアグループの事務所に電話をしてみると、とにかく1度事務所に寄ってみてと言われて出かけていった。幸い家から車で5分くらいのところで、すぐに見つかった。
「まだこのあたりの道路がよくわかっていないんですけど・・・」
「ドライバーとしてじゃなくて、ヘルプで一緒に乗ってくれればいいわよ。慣れればひとりでもできるから。」
ということで、早速その翌週に最初のボランティアの予定が入り、ウーロンゴンを去る直前までそのボランティアを続けることになった。
Meals on Wheelsの仕事は、病気やお年寄り、障害を持った人たちや介護をしている人たちに、食事を配ることだ。平日の5日間、希望によって届けられる。ほとんどは温めた状態で持っていくが、希望者には冷凍のまま届けることもできる。1回の食事には、メインとデザートがあり、オレンジジュースは無料のサービスでついていた。私は集金の日に当たらなかったので、金額ははっきり覚えていないが実費程度だったと思う。団体はCommonwealth and State Governmentsから援助を受けているとあり、ボランティアたちは、1台の車につき6ドル分のガソリンクーポンが渡されていた。約2時間近くかかる労働なので、決して6ドルのガソリン代では見合わないが、やっている人たちも年配の人が多く、何か自分のできることをという気持ちが溢れている人ばかりだった。
ボランティアを始めるときに、契約書のようなものにサインし、簡単な説明のパンフレットをもらった。ひとつは、「ボランティアの権利と責任」で、もうひとつは「依頼人に対応するときの役立つヒント」とあった。感心したのはヒントの方で、少し訳してみると・・・
1.ボランティアを通じて伝言するのではなく、直接事務所に電話をするよう依頼人にすすめる。
2.名前を呼んで挨拶し、個人として尊敬する。
3.自己紹介と、何をしに来たのかを説明する。
4.積極的に明るく振舞う。依頼人にとって、その日、唯一の訪問者かもしれないから。
5.もし家にカギがかかっておらず返事がなければ、なるべく二人以上で家の中に入り、依頼人の様子を確かめる。
Don’t
1.大人を子どものように扱ってはならない。
2.依頼人に申し訳ないと感じさせてはならない。
3.医療的なアドバイスをしてはならない。
4.依頼人の問題を、もちかえってはならない。
5.倒れた依頼人を、抱きおこそうとしてはならない。依頼人だけでなく、自分自身もけがをするかもしれない。
もし依頼人が自分で起き上がれないようなら、毛布をかけて、家族や医者に連絡をするか、救急車を呼ぶ。
6.サービスコーディネーター以外と、依頼人の問題について話してはならない。
7.質問をすることを躊躇してはいけない。そのためにサービスコーディネーターがいるのだから。
8.依頼人の特別な要求をできると判断してはならない。まずサービスコーディネーターに相談すること。
9.依頼人から感謝されることを期待してはならないし、それがなかったからといって、怒ってはならない。
このサービスは、依頼人がお金を払っているものであり、慈善ではない。
特に、この「してはならないこと」のところは、日本との違いを感じさせられた。日本だと、これほど細かく書面で確認されないのではないだろうか。特に、5番は驚いた。以前、何かで読んだ記憶があるのだが、道で倒れている老人を、そばにいるオーストラリア人はだれも手出しをせずに眺めているだけで、旅行者の日本人が介抱したら、「何か具合が悪くなったときの責任問題になるから、手を出さない方がいい。」と後で言われたというのだ。アメリカほどでないにしても、何かがあれば訴訟問題になる国では、個人の行動にかなりの責任が必要だ。ちょっとした好意からやったことでも、悪い結果を産み出した場合、やはりその責任を問われるのも仕方がない。
この「してはならないこと」の項目は、私自身も無意識にやってしまうようなことばかりで、この仕事に対しての自覚と責任を強く感じさせられた。でもこうして文章で見れるからこそ、考える時間を与えてもらえる。実際、食事を届けに行った相手は、高齢であまり元気そうに見えない人たちばかりだった。松葉杖や車椅子を使っている人もいたが、ほとんどが一人暮らしだったように思える。年老いた親と住む習慣のないこの国では、お年よりの一人暮らしの数はかなり多い。でもこんなボランティアや、Centerlink(保健所のような仕事をするところです)から派遣された保健婦ヤ医師が、週に1回以上は訪れているようで、私も何度か鉢合わせた。
最低月1回、約2時間のボランティアであれば、やろうと思えば誰でもできると思う。日本には、まだこんなボランティアは普及していないのだろうか。
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![]() 左が温かい食事、右は冷たいデザートとジュース |
私が属していたWollongong Meals On Wheelsは、Wollongongからシドニー方面へ向かって4つ目の駅のCorrimalというあたりまでをカバーしていた。でもこのイラワラ地域にはあと3ヶ所Meals On Wheelsがあり、ほとんどの範囲をカバーしている。私がここを見つけた「THE ADVERTISER」というフリーペーパーには、毎週担当者の名前が載るので、私の名前も毎月出ていた。Wollongongが1番大きい事務所で、そのルートは7つもあり、いつも人手不足だった。私も最初の2回は、アシスタントとして慣れた人と一緒に回ったが、3回目からは一人で行ってくれと言われて、地図を見ながら車を運転することになった。でも4回目からはルートが固定したため、道も覚えられたし、月1度でも同じところに行くと覚えていてくれるのだ。
12月の最後の金曜日、記憶の中ではウーロンゴンで1番暑かった日、小学校も休みに入ったので亜希と万里を連れて行った。ボランティアをすること自体は嫌がらなかったが、日中40度近い炎天下の中、2時間も走り回ると3人ともくたくたになり、終わるとすぐに近くのマクドナルドに飛び込んだ。そのまま1時間以上はそこにいて、エアコンのない我が家に帰るのが嫌になった。
二人は、暑さにずっと文句の言いどおしだったが、行くところすべてで暖かく迎えられ、ちょうどクリスマスのシーズンで、あるおじいさんからはチョコレートをもらった。その家は夫婦で申し込んでおられたが、時々奥さんは病院に行って留守だった。でもおじいさんは行く度にいろいろな話をしたり、暑い日はコーラを入れてくれたりもした。
最後に行った6月のある日、今日で最後だと言うととても淋しそうに、「またいつかウーロンゴンに来ることがあったら、ぜひ家に寄ってくれ。」と言ってくれた。あらためて、あのプリントにあった「あなたは、依頼人にとってその日唯一の訪問者かもしれない」という言葉を思い出し、私でも、このおじいさんにとって楽しみな訪問者でありえたのだと、胸が熱くなった。
![]() 最後に行った日、優しかったおじいさん 疲れきったふたり |
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