病院へ行って来た。
俺は1人で行くつもりだったが
嫁が俺を心配して
俺の両親を付き添いとして呼んでくれていた。

八事日赤は大きい病院だから、かなりの時間待たされた。
待っている間、オヤジもお袋も俺が弱音を吐くと

  「そんなことあるか」

と、俺を励ましてくれた。
ただ、二人とも不安なんだろう。表情が固い。

診察室へ呼ばれた。レントゲンをもう一度撮る。
採血をし、、他には・・・あまり覚えていない。

俺が一通りの検査を終えて診察室へ入ると、
お袋の姿がなかった。オヤジ1人が座っていた。

医者の説明が始まった。

「沢村さん、肺ガンです。大細胞癌というもので、ステージはかなり進んでいます。」

こいつ、、何を平然と話してるんだ?

オヤジの方を振り向くと視線が下を向いていた。
右の肺にガン細胞がある。どうも、左の肺にも転移していそうだと言う。 ただ、詳しく検査をしてみないとわからないそうだ。

検査入院の日にちを聞いて愕然とした。
5月20日・・・あと何日あるっていうんだ…
耳を疑った。オヤジが詰め寄っているが俺にはそんな気力もなく検査を受けることすら嫌になった。
助かる患者でも、これだけの日にちを待たされるのだろうか?
俺だけが病気でない事はわかっているが
そんな人の事をいたわる気持ちなんて
こんな時持てるわけがない。

結局、検査入院は20日に決まる。
掴みかかる勢いでオヤジが医者に絡んでいった。
俺はそれを止めた。
血の気の多いオヤジだから。
頼むから、こんな時まで俺に世話をかけさすなよ、、

診察室から出るとやっぱりそこにお袋の姿はなかった。
  「オヤジぃ、、お袋、どこ行ったんだ?」
用事が出来たので、先に帰らせたと言う。
オヤジの運転で家に戻る。
俺は疲れた。すぐにベッドルームへ入る。疲れてただけじゃなく1人になりたかった。1人になって何かを考えた。

でも何を考えてたのか覚えていない。
こんな話、ドラマでしかないと思っていた。
俺の身近にしかも俺自身がなるとは。

家には、嫁が帰って来ていた。
後で聞いてわかった事だが、、お袋は俺が検査をしている間に医者からオヤジと一緒に俺の病名、進行具合を聞いたようだ。
お袋は女だ。泣き腫らして目が真っ赤になっていたので俺が何か感づくと思いオヤジがお袋を先に帰らせたようだ。

オヤジも帰り、嫁が部屋に入ってきた。自然と泣けてきた。こいつの前で涙を見せるのはこれで2回目だな。前は、、俺に優しさをくれた時だった。そんな昔の事を、こんな時思い出すのか。

  「結果、聞いただろ。」
  「やだ・・・」

後はただ泣くだけだった。そんな泣いてる嫁に俺は優しくは出来なかった。

  「泣きたいのは俺の方だっ!」

声を荒げた・・・
ピタ・・と嫁が泣くのをやめた。

 「私がソーちゃんを治すから」

出来るはずないことを口走る。

  「医者もお手上げだぞ?出来るかっ。」
  「何か有るはずじゃないっ」
  「俺の立場になってみろ!」
  「私が変われるなら変わりたいよ。。」
  「俺だって、変わって欲しいねっ!」

泣きながら、随分酷い事を言ってしまった。
でもな、、
側にいてくれて良かったよ。
お前にしか、無茶言えないし。